「“縦”重視する風潮は一時代前」“パワハラない”遺族側が反論…宝塚歌劇団が会見 (2023年11月14日)

「“縦”重視する風潮は一時代前」“パワハラない”遺族側が反論…宝塚歌劇団が会見 (2023年11月14日)

「“縦”重視する風潮は一時代前」“パワハラない”遺族側が反論…宝塚歌劇団が会見 (2023年11月14日)

宝塚歌劇団に所属する25歳の女性が急死した問題で、外部弁護士による調査報告書を受け、劇団が会見を行いました。

宝塚歌劇団・木場健之理事長:「当団として、調査報告書の内容を真摯に受け止めており、対処すべき課題としてご指摘いただいている内容を含め、今後、全力で改善に取り組んでいく。この度の宙組生の急逝について、謹んで哀悼の意を表すとともに、ご遺族のみなさまには、大切なご家族を守れなかったこと、心より深くお詫び申し上げます」

遺族側は、上級生による暴言や、ヘアアイロンを額にあてられたとして、パワハラがあったと訴えていました。
宝塚歌劇団・木場健之理事長:「“故人へのいじめやハラスメントは確認できなかった”とされており、『うそつき野郎』『やる気がない』の発言の有無は、すべて伝聞情報。実際にそのような発言があったことは確認されていない」

劇団の会見が続いているなか、遺族側も会見を行いました。不信感をあらわにしたのが、そのパワハラについてです。
遺族側の代理人・川人博弁護士:「報告書の事実認定の評価は失当。劇団と上級生の責任を否定する方向に誘導している。結局、上級生が、被災者(25歳の劇団員)に対し、ヘアアイロンをあて、やけどをさせたという事実を認定していない。事実関係を再度、検証し直すべき。これだけの悲劇的な事態を招いたにもかかわらず、縦の関係を過度に重視する風潮を、そのまま容認し、上級生のパワハラ行為を認定しないのは、一時代前、二時代前と言ってもいい」

そのまま、劇団側にあててみました。
宝塚歌劇団・村上浩爾専務理事:「(Q.事実関係の再検証については)現在、遺族側が会見をされているということであれば、途中でコメントをすることを差し控えたい。ただ、ヘアアイロンの件については、そのようにおっしゃっているのであれば、その証拠となるものをお見せいただくようお願いしたい」

亡くなった女性は、成績が優秀で、宝塚でいう“長の期”として、下級生を指導する立場の責任者でした。
宝塚歌劇団・木場健之理事長:「劇団としては、特に稽古終盤の過密なスケジュールをこなしながら、新人公演の稽古も予定されているなかで、“長の期”としての役割及び活動に、娘役2人のみで当たったことが、故人にとって大きな負荷になっていたものと判断」

遺族側によりますと、1日の睡眠時間は3時間ほど。ひと月半、実質的な休日なしの連続勤務だったといいます。亡くなる1カ月前の業務時間は400時間以上で、いわゆる残業も200時間を超えていたそうです。遺族側は、長時間労働の背景に、宝塚特有の労働契約があったと指摘しています。

宝塚の舞台に立つには『宝塚音楽学校』に2年間、通って、卒業しなければなりません。『宝塚歌劇団』に入団後は、研究科生と呼ばれ、社員として固定給が支払われます。扱いが大きく変わるのは“研6”、つまり入団6年目から。全員が社員から、1年ごとの業務委託契約へと切り替えられます。タレントとして、出演契約を結ぶ形です。

かつて劇団に所属していた元タカラジェンヌは、こう話します。
元タカラジェンヌ:「親と離れて生活できる人はいないのではないかというくらい給料は少なかった。個人契約になっても、年収はそれほど増えません。ボーナスがなくなるから」

亡くなった25歳の女性も、入団6年目の昨年度から個人事業主となりました。ただ、遺族側の代理人によりますと、「劇団の業務に専念すること」との誓約書が交わされていて、実質的には労働契約だったとしています。

この点については、調査報告書も指摘しています。
宝塚歌劇団・木場健之理事長:「個人との契約はタレント契約、業務委託契約ではありますが、当団の作品に出演し、当団の施設内で作品のために稽古をする以上は、健康面に関する管理や配慮をもっとすべきであったという点で、安全配慮義務を十分に果たせていなかったと。深く反省しています」

劇団が検討している再発防止策は、過密なスケジュールを解消するため、年間の興行数を9から8へと減らして、1週間あたりの公演数を見直すことや、自主稽古のあり方も改善するなどとしています。

これまでについて、元タカラジェンヌは、こう話します。
元タカラジェンヌ:「制作側、演出家や振り付けの先生も自主稽古ありきで進めます。任意というより強制。『あとは、そろえておいて。上級生が見ておいてね』と先生方も劇団員に投げるんです」

今後は、劇団員の意見や思いを救いあげる体制も構築していくそうです。
元タカラジェンヌ:「これまで労使交渉の窓口として、女子会という組織があった。在団中に『化粧品の手当を上げてほしい』『カツラ代を自費負担にしないでほしい』と、おかしいと思うことを何度か訴えたが、当時は取り合ってもらえなかった」

調査報告書は、宝塚が積み上げてきた伝統にも手を入れるべきと指摘しています。
宝塚歌劇団・井塲睦之理事・制作部長:「上級生から下級生への指導方法について、過去からの伝承や継承が積み重なった結果、非効率・不適切となったものがあれば改善し、芸の伝承が適切に行われるようサポートしていきたい」

宝塚歌劇団の木場理事長は、来月1日で辞任する意向を明らかにしました。

一方、遺族側は、劇団と運営する阪急側との面談交渉を今月末までに行う予定としています。
遺族側の代理人・川人博弁護士:「“上級生は絶対”そういう関係、文化、組織風土、それを改革していかなければ、どんどん辞めていく。現在も退団者は増えているし、文化団体として、今後やっていくうえで、このままではいけない」

いつか宝塚の舞台に立つことを夢見て、受験のためにスクールに通う高校生(16)です。
宝塚を目指す高校生:「厳しい世界というのは知っていたので、耐えられるかどうかわからないが、それでも舞台に立ちたい。(Q.宝塚は変わるか)結構(上下関係などの)歴史が、代々、厳しく続いているので、変わるとはいえないけど、変わってほしいとは思います」

◆いじめ・パワハラで“食い違い”

25歳の劇団員の女性が今年9月に死亡した問題をめぐり、劇団側は過重労働について非を認めましたが、パワハラやいじめについては食い違いが見えます。

報告書では、いくつか上級生の発言に関する証言があるものの“伝聞では判断できない”“客観的な証拠もない”として「いじめ、パワハラがあったとは言えない」としました。

例えば、上級生のAさんが、亡くなった女性にヘアアイロンを当てて、やけどを負わせた問題。報告書では、劇団の看護師の証言として「ヘアアイロンでの火傷は日常的にあることで、記録は残していない」「目撃した他の劇団員もいなかった」としています。

遺族側は「ヘアアイロンを他人に操作されることはまれ。自分ではなく、他人である上級生が行ったものという特殊性を考慮していない」と指摘しました。

さらに、このヘアアイロンの件も含め、週刊誌で報じられた内容について、女性が所属する宙組の劇団員で話し合いがもたれました。その前に、宙組幹部が女性を個別に呼び出しをしています。遺族側によると、個別に呼び出した場で、幹部は女性に対して「火傷はわざとではなかった」と言わせようと執拗(しつよう)に問い詰めた。女性は「この事には触れないでほしい」と言ったが、全体の話し合いでこの話題に触れられ、女性は過呼吸となってしまった。この一連の対応はハラスメントに該当すると主張しています。

一方、報告書では、幹部は事前に、女性から話し合いをすることの「了承を得た」。その幹部らの説明は「矛盾がなく具体的」と食い違っています。

遺族側は、この報告書について「上級生が下級生を叱責する慣習を無批判で受け入れ」「一時代前の価値観による思考と言わざるを得ない」と批判。劇団側は「今後の対応策として、公演スケジュールの見直しや、非効率な指導法の改善などを行う」としています。

厚生労働省は、悩みを抱えている人には、1人で悩みなどを抱えずに「こころの健康相談統一ダイヤル」や「いのちの電話」などの相談窓口を利用するよう、呼び掛けています。

▼「こころの健康相談統一ダイヤル」0570-064-556
▼「#いのちSOS」0120-061-338
▼「よりそいホットライン」0120-279-338
▼「いのちの電話」0570-783-556
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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