“症状気付きづらい”“検査機関少ない”実用化の課題…アルツハイマー病治療薬承認へ(2023年9月21日)

“症状気付きづらい”“検査機関少ない”実用化の課題…アルツハイマー病治療薬承認へ(2023年9月21日)

“症状気付きづらい”“検査機関少ない”実用化の課題…アルツハイマー病治療薬承認へ(2023年9月21日)

今月21日は『世界アルツハイマー・デー』。東京都庁など各地で、シンボルカラーのオレンジ色にライトアップが行われました。高齢者の7人に1人が患っているというデータもある、認知症。その大半を占める、アルツハイマー病の治療薬が、来週にも国内で正式承認される見通しです。新薬を待つ日本の現在地を取材しました。

八王子市にあるデイサービス施設『DAYS BLG!はちおうじ』の中は、駄菓子屋さんになっています。駄菓子の仕入れと販売を行うのは、認知症で施設に通う人たちです。社会とのつながりを保てるように。こちらの団体では他にも、洗車や庭掃除など、あらゆる仕事を認知症などの人に依頼。謝礼金を支払っています。

鈴木英夫さん(64):「私は、ここに来る前は3カ月病院にいたんで。それで全部ね、記憶がみんな消えちゃってるんです。過去の記憶が分からないんです」

水野秀司さん(62):「60歳になった時にボケてきた。自信がなくなってきて、家にいるだけでは。こちらに来るようになって、仕事ができるのはうれしい。頑張ってやっていきたい」

世界で5500万人以上が患う認知症。そのうち、6~7割をアルツハイマーが占めるとされています。こうしたなか、注目されているのが『レカネマブ』という新薬です。アルツハイマーの原因となる物質を取り除き、病気の進行を2~3年、遅らせる効果が期待されています。7月にはアメリカで、世界で初めて正式に承認されました。日本でも期待が高まっています。

『アルツクリニック東京』新井平伊院長:「新しい薬も視野に入れていますか」

患者の妻(76):「もちろん」

患者(77):「認知症の方に効くのであれば、積極的に(新薬を)受けたい」

新薬の対象は、軽度のアルツハイマー患者と、その前の段階(MCI)の人に限られます。これから認知症になる恐れがある場合、対象となる可能性が高くなります。

患者(77):「治る病気ではないにしても(症状を)遅らせるのは、期待を持てて良い」

承認を前に、すでに問い合わせが増えつつあるといいます。

新井平伊院長:「きょう拝見したのは23人でしたけど、約半数がレカネマブの対象になる方。初診の方もレカネマブを受けたいと、他のクリニックから紹介いただいた。一日に2~3件、問い合わせはある。ドイツの精神科医アルツハイマー博士が報告して120年弱。この時期に初めて、根本的なアルツハイマーの治療薬が誕生する。これはもう画期的なこと」

2週間に1回、点滴での投与が必要なレカネマブ。アメリカでの販売価格は、年間で2万6500ドル。日本円にして、約390万円となっています。実際に投与を行っている医師は…。

『UCLAメモリーセンター』マリアム・ベイギ医師:「これまで、どの治療薬を試しても治療効果が見られませんでしたが、希望を捨てずに研究を続け、新薬を試したことが大事だったと思う」

日本では、来週にも正式に承認される見通しですが、患者のもとに届くのは、いつ頃になるのでしょうか-。

◆実用化に向けた“道のり”は

(Q.レカネマブは、どういう人が投与の対象になりますか)

レカネマブを開発した『エーザイ』は、すべての患者が対象ではないとしています。効果が見られるのは、物忘れなどの症状がある『軽度認知障害(MCI)』、買い物に支障があったり、日にちが分からなくなるなどする『軽度認知症』の人だということです。

(Q.レカネマブはいつ頃、実用化しそうですか)

来週にも厚生労働大臣が正式に承認する見通しです。そして、保険局が、薬の値段や保険適用するかどうかなどを決定します。決定までには平均で60~90日かかります。そのため、年内にも流通・実用化の見込みです。

(Q.何か課題はありますか)

アルツハイマー病研究の第一人者、東京大学大学院・岩坪威教授は「副作用に注意する」ほか、「認知症“初期”は気付きづらい」「原因を検査できる医療機関が少ない」といったことを課題として挙げています。

「認知症“初期”は気付きづらい」については、物忘れを『年のせいだろう』と考えてしまい、対象者の多くが医療現場に来ていないと指摘します。

「原因を検査できる医療機関が少ない」については、アルツハイマー病の原因を調べる『アミロイドPET検査』ができる医療機関は全国で数十カ所しかなく、これまでは費用も30万円以上と非常に高額です。

岩坪教授:「今後は地方にも『PET検査』ができる医療機関を増やし、保険を適用する必要もある。現状の検査体制などを踏まえると、レカネマブが適用されるのは、日本国内に300万人以上いるとされるアルツハイマー病患者のうち、1万~数万人程度。検査などの体制が整えば、今後は適用される患者も増えるのでは」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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