トリチウム排出基準下回るも…“処理水放出”1日で影響拡大 中国が水産物輸入停止(2023年8月25日)

トリチウム排出基準下回るも…“処理水放出”1日で影響拡大 中国が水産物輸入停止(2023年8月25日)

トリチウム排出基準下回るも…“処理水放出”1日で影響拡大 中国が水産物輸入停止(2023年8月25日)

福島第一原発では24日に処理水の海洋放出が始まりました。放射性物質のトリチウムを含みますが、国の安全基準以下に薄めて、海へ放出します。初回は、17日間かけて約7800トンを流す予定です。

東京電力は25日、放出後に採取した海水のモニタリング結果を初めて公表しました。

東京電力:「分析を行って、しっかり1500Bq/Lを下回っていると確認しています」

排出基準となっている1リットルあたり1500ベクレルという数字を、大きく下回ったことが確認されました。水産庁や環境省も、原発周辺の海水や魚のモニタリングを行います。

ただ、中国は聞く耳を持ちません。

中国外務省 汪文斌副報道局長:「(Q.処理水のトリチウムの濃度は、今のところ問題がありません。どう受け止めていますか)日本政府は国際社会の強い反対を無視し、公然と核の汚染リスクを全世界に転嫁しました。これは極めて身勝手で、極めて無責任な行為です。自分の考えに固執せず、責任ある方法で核汚染水を処分するよう、日本側に促したいと思います」

中国政府は24日、日本の水産物の輸入を全面的に停止すると発表。さらに25日、追い打ちをかけるように、日本の水産物を使った加工食品の製造や調理も禁止することを打ち出しました。

海洋放出からたった1日。影響は、思わぬ所にまで及んでいます。中国では、処理水を放出する前の海水から作られた「塩」の買い占めが起きています。この動きは、中国各地に広がっているようで、SNSに投稿された動画には、子どもも参戦して、塩を取り合う様子が映っています。さらに、道端で売りさばく人の姿までみられました。

お客さん:「(Q.なぜ塩を買うの)汚染の話があるじゃない。どうせ使うし安いし捨ててもいい」「(Q.なぜきょう塩を買った)家で塩がなくなりそうだから。皆が買い占めしてるのは知らなかったわ。(Q.日本の処理水は心配)分かりません」

禁輸措置による影響は、今後さらにエスカレートする可能性もあります。上海市内の寿司店には早速「日本産不使用」という看板が掲げられていました。日本人が経営する店には、嫌がらせの電話までかかってきているといいます。

日本料理店『HORITA堀田』堀田智オーナーシェフ:「営業中に嫌がらせの電話があるのが続いていて『それを食べたら死んじゃうんじゃないか』とか『食べた瞬間に倒れてしまうんじゃないか』とか。今朝も早い時間から電話が多くて、キャンセルとかも続いています。僕らはもう対応のしようがないので、ずっと耐えて待つというか、その流れに合わせる感じ」

東京・江東区で開かれた『ジャパンインターナショナルシーフードショー』には、国内外から集まった水産関連約600社が出展。全国各地で水揚げされた魚が並んでいます。ただ、中国の全面禁輸措置による影響がすでに出ているところもあります。

愛媛県・水産商社『イヨスイ』荻原達也社長:「まさか全国の水産物。大変大きな問題になってびっくり。すでに今月29日には船積みの予定が入っていた。当然キャンセル料も発生するわけで」

鹿児島から出展している漁協には、中国の取引先からキャンセルの連絡が入りました。

鹿児島県『東町漁協』岩下久明さん:「6月くらいから新規で(取引を)始めたところもあったんですけど。どうにかして届けたいという最中でのこれだったので。できれば早いうちに、証明書をつけてOKなら出荷というのが、もし急な措置でしてもらえれば、対応して出荷できたら」

波紋を広げる、中国の禁輸措置。水産物を所管する農水大臣は「想定していなかった」といいます。

野村農水大臣:「全面的に日本の水産物の輸入を禁止するというのは驚き。一番分かるのは、10都県は対象になるだろうというぐらいのもので。どのぐらい拡大していくのか、すべてなのかどうかということも、全く想定しておりませんでした」

西村経産大臣:「中国政府による決定は、我が国として断じて受け入れられるものではない。科学的根拠に基づいて、即時撤廃を求めているところ」

風評被害を受けた事業者を、どう支援するのか。政府は800億円の基金を使って風評対策を、東京電力が賠償を担いますが、その範囲はどこまで及ぶのでしょうか。

■水産業者の支援どうなる?

日本から中国への水産物の輸出総額は(加工品を含め)871億円、10都県産の輸入を停止した香港には755億円と、日本の水産品の輸出先は中国・香港は非常に大きな割合を占めます。中国への輸出品目のなかで最も多いのは『ホタテ』で約467億となっています。

(Q.政府の対策はどうなっていますか)

政府は全国を対象として、2つの基金を用意しています。

風評被害対策としての基金は300億円。「企業の食堂等への水産物の提供」や「水産物のネット販売等の販路拡大」、「水産物の保管などの資金」を支援していくということです。

漁業継続支援としての基金は500億円。「新たな漁場や魚種の開拓経費」や「燃料コスト削減に向けた取り組み」を支援していくとしています。

(Q.風評被害で売り上げが減った場合の補償はどうなりますか)

実際に売り上げが減った場合は、東京電力が補償することになっています。漁業関係者などから東電に賠償請求し、東電は統計データなどを用いて被害を確認し、被害ありと判断すれば賠償支払いをすることになっています。この補償は、中国による日本の水産物全面禁輸による損害も対象としています。

ただ、損害は販売不能や価格下落など様々なため、個々の損害の実態を確認のうえ、金額を算出していくとしています。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

ANNnewsCHカテゴリの最新記事