「殺すぞ、お前!」“カスハラ”悪質実態…コロナ禍以降注目「歪んだ正義感」の加害者【Jの追跡】(2023年7月29日)
客などからの理不尽な要求やクレーム、暴言・暴行などにより、就業環境が害される「カスタマーハラスメント」は、今や深刻な社会問題になっています。その悪質な実態と現場を追跡しました。
■「殺すぞ、お前!」と暴言…会社では対策強化
コンビニ店員:「(男性客に)『列に並んでください』と、こっちから声を掛けた時に『自分が優先だろ』と。引かない感じだったので、その時は他のお客様に謝って、先に(男性客の)会計をした」
メーカー勤務:「発端は、こちらの製品のクレームなんでしょうけど、『殺すぞ』くらいの勢いの電話はもちろん、怒り心頭は分かるんですけど」
会計ソフトなどのサービスを提供する会社でも去年の夏、サポートデスクに、利用者から悪質なクレームがあったといいます。
会計ソフト会社「freee」:カスタマーハラスメント対策推進リーダー・久保友紀恵さん:「お客さまのほうで、操作に一部ミスがあったんですけど、思っていた結果にならなかったため」
担当者の説明に納得できないのか、相手は徐々に怒鳴り声になり、そして…。
利用者:「ふざけた回答してんじゃねえぞオラ!殺すぞ、お前!録画(録音)してるんだったらな、警察に行ってな、脅迫罪でも何でもいいから言えや!なめてんのか!」
対応時間は、43分にも及んだといいます。
サポートデスクでの暴言は、他にもあるといいます。
久保さん:「殺すぞであったりとか、家に火をつけるぞというような発言は、まれに聞くことがある」
会社では対策を強化。スタッフのケアとともに、カスハラの定義を明確化し、場合によりサービスの提供を断ることもあるといいます。
■「カスハラ」がトラウマになった従業員も…
一方、東京・江東区亀戸にある「激安なのにボリューム満点」と地元で人気の24時間営業の弁当店では、特に深夜の「カスハラ被害」に悩まされています。去年2月には…。
「キッチンDIVE」伊藤慶店主:「深夜3時ごろに、若者5~6人が酔っぱらってお店に入ってきてしまって」
その時の映像です。
突然、「万引きしちゃうぞー!」と大声を上げながら入って来た若者たちに、厨房にいた2人の男性店員はぼうぜんと見ることしかできなかったといいます。
すると、その中の一人が商品のおにぎりを弁当にぶつけ、弁当の上に倒れこんだのです。
伊藤店主:「売り物にならないので、上の段の弁当を全部廃棄。被害額は5000円前後だったと」
若者:「マジで、どれにする?」「いや俺コンビニ行く。あんまり良いものないわ」
弁当をダメにした若者は、19歳でした。
実はこのお店では、2年前にも、酔った客が店員に現金を投げ付ける悪質な出来事が起こりました。
こうした「カスハラ」がトラウマになった従業員もいるといいます。
伊藤慶店主:「『ちょっと夜勤をやりたくない』とスタッフから言われたことはある。ただ、できるかぎりケアをして、今も働いてもらっている」
■“カスハラ”増加・深刻化…理由は?
現代社会に蔓延(まんえん)する「カスハラ」の実態ついて、専門家は次のように話します。
日本カスタマーハラスメント対応協会・酒井由香理事:「増えてもいるし、悪質化していると、事例としてよく耳にしている」
ある調査によると、カスハラ被害に遭った人などのうち、およそ4割が「カスハラは過去5年で増えている、深刻化している」と回答。
その理由として最も多く挙げられたのは「格差、コロナ禍など社会の閉塞感によるストレス」でした。
酒井理事:「イライラがつのってか、不寛容になっているという状況」
実は「カスハラ」につながる迷惑行為を行っているのは、50歳代、60歳代の男性が多いというデータもあります。
酒井理事:「働き盛りの人が、家庭・会社での不平不満・ストレスをうっぷん晴らしみたいに、カスハラのような行為をして発散させている」
専門家の酒井さんによると、「カスハラ」の加害者には、ストレス発散タイプや思い込みタイプなど、5つのタイプがあり、弁当店の事例は、「攻撃的タイプ」にあたるといいます。
■たこ焼き店にDM「汗かかず、涼しげな顔で働くべき」
そして、特にコロナ禍以降注目されているのが「歪んだ正義感タイプ」です。
酒井理事:「企業を退職された高齢男性が結構多くて。アドバイスというふうに称して長時間拘束する」
「歪んだ正義感タイプ」は、「自分の考え方が正しいと思い、相手が納得するまで伝えないと気がすまない」タイプだといいます。
大阪にあるたこ焼き店。今月11日、こんなダイレクトメールが届きました。
客からのダイレクトメール:「貴方のためを思って言わせていただきます。昨日の夕方に買いに行かせていただきましたが、滝のような汗をかいていました」
その日の気温は32℃。鉄板の前は40℃を超えていたそうですが…。
客からのダイレクトメール:「プロならどれだけ暑くても、汗ひとつかかず涼しげな顔で働くべきです。それが出来ないなら、プロ失格です。お辞め下さい」
猛暑のなか、汗をかかずにたこ焼きを焼くのは、不可能だといいます。
たこ焼たこば 島田良太店主:「『お店のため、あんたのため』と言っているのも分かるんですが、今のご時世からすると、ちょっと古いですね。そこまで言われないといけないですかと。『辞めたほうがいい』とか」
■タクシー運転手の5割以上が「被害経験ある」
コンビニなど小売り店と並びカスハラが多いのが、自治体などの公共機関や交通機関だといいます。
特に、密室で接客するタクシー運転手の場合、5割以上が「被害経験がある」という調査データもあります。
タクシー運転手:「『急いでくれ』と言われて、急に信号で『そこ右!』と言われる。お客さんに『前もって言ってくださいね』と言うと、その一言で怒り出す。『口答えするな』と」
タクシー運転手:「シートを蹴られたことがある」「(Q.何があった?)その人、酔っぱらっていて訳わかんない。怖くなっちゃって、『お金はいらないから、降りてください』と」
「カスハラ被害に何度も遭った」という話すのが、タクシー運転手の村瀬沙織さんです。
村瀬さん:「暴言だったり、自分の意見を通そう通そうと、あの手この手を使ってくる」
村瀬さんが去年、体験したのは、30代の男性客によるカスハラです。
村瀬さん:「降りる時に、いきなりカシャって(乗務員証を)撮るから、『何だろう』と思ったら、また車を降りてからも、車体とナンバーが写るように写真を撮って、どこかに行ったと思ったら、その後に苦情が入って『わざとメーターが上がるように走った』と」
クレームを受け、会社の担当者がドライブレコーダーを確認。「問題はなかった」と男性客に報告しましたが、村瀬さんがその後も不安だったのが、SNSです。
村瀬さん:「SNSで、さらされていないかエゴサ(検索)しましたけど、さらされていなくてホッとしました」
近年、増えるSNSによるカスハラ。特に写真や氏名が掲示されているタクシー運転手は、悪質な書き込みがされていないか、恐怖だといいます。
村瀬さん:「カメラを向けられると、銃口を向けられているような感覚と一緒なので。すごく怖いですよね」
■カスハラ対策の「AIアプリ」開発企業も
厚生労働省も、対策に乗り出しています。
動画で警鐘を鳴らすとともに、企業に対して「相談体制の整備」や「対応マニュアルの作成、研修」などを推奨しています。
そんななか、カスハラ対策のAIアプリを開発した企業もあります。
カスハラ対策アプリを開発「ティ・アイ・エル」藤浪彗社長:「スマートフォンで音声を録音して、例えばごめんなさいとかすいませんとか何か現場であった言葉で、特定のキーワードにアラート(警告)を立てる仕組み」
ある企業では、現場のアプリから「謝れ」や「土下座」など、カスハラにつながる言葉のアラートがあった場合、本部がその音声を直ちに確認、上司が担当者に代わって対応するといいます。
すでに、水道業者や保険会社などが導入。相手に録音の許可をとってから、使用することで…。
藤浪社長:「実は録音をするだけで抑止効果につながっている。『録音をするだけで、実際のクレームが減っている』と伺っています」
日々、発生している「カスタマーハラスメント」。厚労省は「脅迫罪や威力業務妨害罪など、犯罪行為にあたる可能性もある」と注意を呼び掛けています。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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