“商店街まるごとホテル”心の交流 奇跡の出会いも…若者中心に月300人以上が訪問【Jの追跡】(2023年7月22日)

“商店街まるごとホテル”心の交流 奇跡の出会いも…若者中心に月300人以上が訪問【Jの追跡】(2023年7月22日)

“商店街まるごとホテル”心の交流 奇跡の出会いも…若者中心に月300人以上が訪問【Jの追跡】(2023年7月22日)

大阪の布施商店街は、なんと“泊まれる商店街”。空き店舗をフロントや客室に改装し、銭湯が“大浴場”、居酒屋が“食堂”など、商店街をまるごとホテルに見立てた試みなのです。

誕生のきっかけは、全国的な問題になっているシャッター街。商店街に、にぎわいを取り戻す、地元一丸の取り組みを追跡しました。

■商店街が“ホテル”に…街全体にお金落ちる仕組み

舞台は、東大阪最大の商店街「布施商店街」。長さ1.8キロにわたり、下町情緒あふれる店が軒を連ねる昔ながらの商店街です。

その一角で、何やらスーツケースを持った人たちがゾロゾロ。向かう先は、今でも看板は婦人服店のままの場所です。

セカイホテル フセ 久米佑宜支配人(26):「商店街の空きテナントや空き家をリノベーションして客室に見立てた“街ごとホテル”となっております」

実はここ、空き店舗を改築した「商店街まるごとホテル」なのです。

元々、婦人服店だった店舗をまるごと使った“フロント”。そして、“客室”はフロントを出て歩くこと2分、同じ商店街の一角です。この客室は、元々お菓子屋さんでした。

宿泊客:「わぁ、すごい。格好いい。何人泊まれるんだろう!」

外観からは想像もつかない、洗練された雰囲気。1泊およそ3万5000円、最大6人まで宿泊OK。コンセプトは“大人の修学旅行”なのだとか。

この部屋最大の特徴が、オーシャンビューならぬ“商店街ビュー”です。

どこをとっても、おしゃれな客室は全部で6軒。商店街に点在しています。

宿泊客:「エッ、すごい。めっちゃイイやん」

この客室は、かつての呉服店。段差も少なく、スペースも広々としているため、家族連れに人気の客室へと生まれ変わりました。

宿泊客:「これだけ走り回れるホテルはなかなかないから、ありがたいです」

そして旅先の楽しみといえば、なんといっても「グルメ」。商店街のグルメと言えばもちろん、多い日には一日3000個も売れる老舗肉屋の「コロッケ」です。

さらに、大阪グルメの定番熱々トロトロの「たこ焼き」。そして、夕食にオススメなのが、地元で愛されるお寿司屋さん。

この商店街で72年前から3代続く本格寿司が、10貫に赤だしがついて2200円(時期によって内容は変動)。店主の“軽妙なトーク”も名物です。

店主:「どちらから来られたんですか」
宿泊客:「岡山から」
店主:「何しにこんな所まで?」
宿泊客:「職場から家が遠くて、バスで1時間くらい」
店主:「それは遠いわ。会社辞めたほうがええん違う」
宿泊客:「来月から大阪に住むんですけど」
店主:「大阪、どこ住むんですか?」
宿泊客:「(繁華街の)天満です」
店主:「あっアカンわ。こりゃあアカンわ」

すると、隣に座った常連客から「じゃあ、みんなビール出したってや」と、ビールをご馳走。人情の町ならではの体験です。

広島からの宿泊客:「楽しかったです」
岡山からの宿泊客:「最高の旅の思い出になりました」

そして、ホテルの“大浴場”は地元の銭湯。創業から60年以上もの歴史をもつ「えびす湯」です。

薪で沸かしたお湯で旅の疲れを癒やしながら、昭和情緒あふれる銭湯体験を満喫。宿泊客の客室や食事できる場所が、商店街に点在することで、街全体にお金が落ちる仕組みになっているのです。

■「昭和レトロ」体感…若者中心に月300人以上が訪問

2018年にオープンした「セカイホテル フセ」。大阪の新進気鋭のリノベーション会社が手掛けました。そのこだわりをホテル支配人・久米さんに聞きました。

久米さん:「大阪の下町文化が残っていたり、景観としても昔ながらの原風景が残っていて。“ザ・大阪”を感じていただくには、布施という立地がすごくいい」

その一方、老舗和菓子店によると、この商店街にはある課題があるといいます。

和菓子店店主:「街が死んでいる。もう、布施でやってもアカンかなと…」

戦後、鋳物や金属加工など“モノづくりの街”として栄えたこの地域。布施商店街では、最盛期には780もの店舗でにぎわうものの、高齢化や大型商業施設の進出などで、営業する店舗はおよそ400に激減しました。

商店街住人:「昔から住んでいる年配の人たちは、“もうこの辺、寂しいなったな、悲しいな”」

そこで久米さんは「商店街は、住民が気付いていない魅力にあふれている」と考え、商店街の「昭和レトロな部分」をあえて強調。店舗の「看板」は、意図的に残したのです。

久米さん:「“日常”にこそ、長年培ってきた街に息づく魅力が隠れている」

すると「昭和レトロ」を体感できると、今では若者を中心に月に300人以上が訪問。新しい風が吹きはじめました。

滋賀からの宿泊客:「昔のままが残ってる感じが、すごくいい」

宿泊客:「昭和にタイムスリップした感じ、本当に」

東京からの宿泊客:「すてきな下町情緒あふれる所で、また来たい」

ある日、こんな奇跡があったそうです

久米さん:「お花を持った女性の方が(ホテルに)いらっしゃって。『こんにちは』みたいな感じでお話ししていたら、『実は、私の母が“キヨシマ(婦人服店)”を経営していて。もう母は亡くなったんですけれども、母が看板を残してもらえていることを天国で喜んでいると思うので、お礼を言いに来た』。わざわざ出向いていただいて、“ありがとう”と言っていただけたことが“思いを紡ぐ”ホテルをやっていてよかった」

■“家族同然”だからこそ…宿泊客にお得サービス

商店街には、なんともカワイイ“看板娘”がいます。練りもの屋さんの一人娘・あやめちゃん(8)。週末になると、待ち遠しい“イベント”がやってきます。

あやめちゃん:「9時になったら行くから、待ってんねん。いっつも。行ってきます!」

まっしぐらにあやめちゃんが向かった先は、開店直後のセカイホテルです。

あやめちゃん:「おはよう、久米先生!」

あやめちゃん、週末はホテルに遊びに行き、お仕事体験をさせてもらっているのです。

あやめちゃん:「久米先生、電球また替えや」

一人っ子のあやめちゃんにとって、ホテルの女性スタッフは、まるでお姉ちゃんのような存在。

あやめちゃん:「(Q.ホテルの皆優しい?)優しい」「(Q.皆好き?)うん」

実は、店の営業で忙しいご両親の負担を少しでも減らすため、あやめちゃんの子守も兼ねていたのです。

時には、勉強を教えてあげることもあります。

あやめちゃん:「あっ間違えた」

ホテルスタッフ:「これとこれとこれは、同じ解き方です」

ホテルの計らいに、お母さんは次のように話します。

あやめちゃんの母・井上美鈴さん(40):「すごく、うれしい限りです。親としてはありがたいし、助けてもらってる」

この日、久米さんがあやめちゃんのご両親のお店に、新たな「食べ歩き」プランの価格についての相談でした。

久米さん:「玉ねぎ天って1個で買うなら、今なんぼで?」
店主:「今1個70円」
久米さん:「50円で1個ならキツイですよね?」
店主:「いいよ」

30%近い値引きを即答。油の高騰など、物価高が厳しい今、なぜそんなことができるのでしょうか?

あやめちゃんの父・井上守さん(40):「一言で言えば“家族の一員”。忙しいなか、子どもの面倒を見てくれるし、特によくしてもらっているから。それは、お互い様じゃないですかね」

家族同然の付き合いだからこそ、宿泊客にお得なサービスを提供できるのです。

■“商店街の母”常連客とのやり取りが「生きがい」

久米さんが“商店街の母”と慕うのが、鉄板焼き屋の女将・山下安子さん(85)です。

山下さん:「久米くん、このころオバハン嫌や言うて逃げてる」
久米さん:「いやいや、そんなんありませんやん」
山下さん:「可愛らしいこの人」

山下さんは、熱狂的な阪神ファンです。

客:「阪神なんて、どうでもええねん」
山下さん:「ほっといてくれ!なんでやねん」
客:「もんじゃ焼きは、分からんわ」
山下さん:「もんじゃ焼き知らんのか、もう情けないな」
客:「母親、お母さんみたいな」
山下さん:「うるさいオバハンやけどな」

山下さんと同世代の商店が次々廃業するなか、常連客とのやり取りが、山下さんの生きがいになっています。

山下さん:「お客さんとアホみたいにしゃべってたら、それでええねん。朝は皆、きょうから1日働かな思うたらイヤやな思いはるやろ?おばちゃんそんなん思ったことない。好きやもん、この仕事」

久米さん:「“すてきなおせっかい”があふれる街だと思うので。布施の街らしさを発信していきたい」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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