ウクライナ侵攻に揺れるNYの街『リトル・オデッサ』大越健介が見た米中間選挙(2022年11月8日)

ウクライナ侵攻に揺れるNYの街『リトル・オデッサ』大越健介が見た米中間選挙(2022年11月8日)

ウクライナ侵攻に揺れるNYの街『リトル・オデッサ』大越健介が見た米中間選挙(2022年11月8日)

アメリカでは8日、中間選挙の投票日を迎えました。

ロシアによるウクライナ侵攻は、空前の物価高を招き、アメリカ全体を苦しめています。

新たな争点として“ウクライナ支援”が浮上してきていますが、アメリカ社会にどのような影響を与えているのでしょうか。

ニューヨーク、ブライトンビーチは、住民の3割以上が、ロシアやウクライナ系の人たちという移民の多いアメリカでも珍しい街です。

旧ソ連時代の圧政に苦しむ人や、ソビエト崩壊後の経済の混乱を避けて脱出した人が“自由”を求めて移り住んだのがこの地でした。

ウクライナの港町の名をとって「リトル・オデッサ」と呼ばれるようになりました。

その街は、世界経済の中心地マンハッタンから、電車でわずか40分ほどのところにあります。

駅を出るとすぐに見えてくるのが…。

大越健介キャスター:「いきなり、ロシア料理っぽいというか。これロシア語ですよね。あそこの文字も。ウクライナ語とロシア語の区別着かないけど、明らかに英語じゃない。電光掲示板がロシア語と英語と色々変わる。交じりあってるんですよね」

商品の値札も、今まさに行われている中間選挙の特集記事さえも、この街ではロシア語が当たり前です。

大越健介キャスター:「異国情緒感がすごくて。さっきテキサスから来たばっかりなんで、なんかすごいびっくりしちゃって。なんだか違う国に来たみたい」

長年、ロシア系・ウクライナ系、双方が肩を並べて暮らしてきた街。ロシアのウクライナ侵攻の影響は少なからずありました。

ある食料品店は“ロシア”の文字が入った店の名前を変更しました。

さらに、ウクライナの文化や言葉を教えていいる学校でも表れています。

現在、80人いる生徒の20%が、ロシアによる侵攻開始後に避難してきた、ウクライナの子どもたちです。

タチアナさん(28)は、侵攻開始直後の3月、娘のビタリーナちゃん(5)とともに、ウクライナ西部を脱出し、この街に移り住みました。

タチアナさん:「(Q.NYでの生活はどうですか?)ハードです。私は独りで、子どもが2人。すべて私にかかっています。(Q.仕事は?)今週始めたばかりです。仕事は夜勤2回だけ。子どもがいて、日中は働けません。下の子は保育園に入っていません。高すぎて払えないからです」

タチアナさんの夫は、今もウクライナ軍の兵士として最前線で戦っています。

タチアナさんが望むものは1つ。一刻も早い戦争が終わり、家族そろって暮らすことです。

タチアナさん:「(Q.アメリカ政府に期待することは?)ウクライナと自国を守るために、できる限りのことをしてほしい。ロシアはウクライナだけに止まらないと思います」

避難民を受け入れているのは、ロシア系・ウクライナ系問わず、この街の人たちです。

率直に聞いてみました。

ロシア出身、ウラジミールさん:「(Q.プーチン大統領のウクライナ侵攻をどう思いますか?)どんな時代であっても、侵攻するのは悪いことだよ」「つまり『争いも恐れもなく、世界中が幸せになるべきだ』と」

ベラルーシ出身、スベトラーナさん:「母と叔母はウクライナ人で、家で国籍が混在している。子どももウクライナ人で、複雑なんです。誰も争わず、死なないでほしいだけ」

ロシア出身、グレッグさん:「(Q.ウクライナの状況を心配されていますか?)みんな心配しています。誰も対立や戦争を望んでいません。戦争は一部を豊かにして、他を貧しくするだけ。生活に困る人たちが出てきます」

長年、この街に暮らす住民たちのなかでも“ロシアの侵攻は間違いだ”という思いは共通しています。

ただ一方で、意見が割れていることもあります。

中間選挙の争点となっている“ウクライナへの支援”について、共和党の下院トップが「支援縮小も辞さない」という発言をしました。

共和党が下院を制すれば、現実味を増すことになります。

ロシア出身、グレッグさん:「国内で使うべきお金を、ウクライナ政権への軍事支援に使い、国民の懐も厳しくなっている。アメリカ経済に多くの問題をもたらし、国民は不満を感じている」

ウクライナ出身、ミハイロさん:「民主党・共和党どちらが勝っても、ウクライナへの支援はあるはずです。ウクライナは勝つだろうし、勝たないといけない」

ウクライナ出身、マイケルさん:「戦争で莫大(ばくだい)な税金が無駄になった。困っている人や国のために使えば良かったのに。私の心配はただ一つ。どこかのバカが米経済を破綻させること」

今後のウクライナ支援をめぐっては、住民たちにも複雑な感情が入り混じっているようです。

リトル・オデッサでロシア系ラジオのパーソナリティーを務めている、レビティスさんにも聞いてみました。

レビティスさん:「(Q.ロシア系の住民たちは、バイデン大統領の政策を支持している?)いい質問ですね。この地区のロシア系住民の多くは、保守派で共和党支持です。しかし、ウクライナの支援については、バイデン大統領を支持しています。住民の多くは、戦争の終結を願っています。多くの人が今もウクライナとつながりがあるからです。ロシア語を話す人、ロシア出身の人にも、ウクライナに親族や友人がいます。多くの命が失われることを、より身近に受けとめているのです」

◆ニューヨークにいる大越健介キャスター

(Q.“ウクライナ支援”について、住民の受け止めは複雑なようですね)

この街には、たくさんのウクライナからの避難民が来ていて、街全体がある種のシェルターのようになっています。

ロシア出身者もウクライナ出身者も、プーチン大統領の行動に対する強い不満・批判の声は共通しています。

しかし、アメリカがこれまで通り、ウクライナに対する巨額の支援を続けるべきかというと、「そうすべきだ」という多くの声がある一方で、「いつまでも続けられるものじゃない。大事なのは国民の暮らしを守る経済対策だ」という声も、リトル・オデッサでさえ聞かれます。

今回の中間選挙は、経済問題だけではなく、人工妊娠中絶の是非などの問題も争点になっています。

しかし、多くの争点が物価高への悲鳴にかき消されているような印象を持ちます。

(Q.7日はテキサスから報告でした。アメリカの旺盛なパワーは健在だというリポートでしたが、ニューヨークで印象は変わりましたか)

アメリカのパワーは健在であるという印象は変わりません。

7日夜、中心部マンハッタンを車で通りましたが、街は大にぎわいで、コロナ禍を完全に脱しているのではないかとも思いました。

アメリカはもともと移民の国で、人種をめぐる問題は色々とありますが、多様性をばねにして疾走してきた国です。

ただ、今の記録的な物価高は、アメリカの人々の生活を揺るがしています。

そして、中国の台頭が“アメリカ一強”“パックスアメリカーナ”などと言われた時代が遠い昔のように感じられます。

アメリカ自体が一つの岐路に立っているのだと思います。

今回の中間選挙で民主党が敗北することになれば、バイデン政権は求心力を失い、レイムダック化が始まるとも指摘されています。

この中間選挙は、不安要素を多く抱える世界の行方にとっても、大きな影響を与えそうです。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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