観光船運航会社に家宅捜索 “ずさんさ”周辺から証言次々・・・(2022年5月2日)

観光船運航会社に家宅捜索 “ずさんさ”周辺から証言次々・・・(2022年5月2日)

観光船運航会社に家宅捜索 “ずさんさ”周辺から証言次々・・・(2022年5月2日)

 北海道・知床沖の観光船遭難事故で、運航会社「知床遊覧船」に海上保安庁が家宅捜索に入りました。会社の安全管理体制が問われるなか、この船でプロポーズを予定していた鈴木智也さんの告別式が行われ、遺族が、その手紙を公開しました。

 “事故”は、“事件”へと動き出すのでしょうか。

 知床半島沖で、観光船が沈没した事故。2日午前、第一管区海上保安本部が運航会社の事務所の家宅捜索に入りました。

 容疑は、業務上過失致死です。事件としての捜査も、本格着手の段階に入りました。

 現場を、冷たい風が吹き抜けています。

 依然、行方不明のままの、乗客・乗員12人の捜索。これまでに死亡が確認された14人。全員の死因が溺死(できし)ということも分かりました。

 22歳の誕生日を笑顔で祝う2人。旅行、そしてドライブも・・・。これから増え続けたであろう、思い出の数々。その未来は、一瞬にして奪われました。

 亡くなった鈴木智也さん22歳。告別式が執り行われました。ダウンジャケットもひつぎに納められました。

 鈴木智也さんの父:「冷たい水につかっていたので、とにかく暖かい服を着させてあげたいと思って用意しました」

 交際していた女性にプロポーズする予定だったという鈴木さん。ネックレスと共に、あるものを準備していました。

 鈴木智也さんの父:「最後に(智也さんの)車の回収をする時に本人の(彼女宛ての)手紙が出てきたんです。つらくて読めなかったです。一緒に旅行されていた彼女なんですけど、プロポーズということでサプライズを兼ねて用意したものです」

 誕生日だった彼女に宛てた手紙。遺族は、告別式で公開しました。その全文です。

 鈴木智也さんが彼女に書いた手紙:「今日で、出会って308日が経ちました。最初は本当に顔が小さくて可愛いな~って、いい子だなって、それが今や彼女なんだよ!!!凄くない?本当に運命感じたし、こんなに気が合う彼女って他に居ないよ。喧嘩だって無いし、本当にハタチか?ってくらい大人だよ。ととをこれまで支えてくれて、好きで居てくれてありがとう。そして、ずっとずっと大好きです。周りにどう思われたって2人で乗り越えていくって決めたし、環境が変っても俺が守るって俺が大切にするって誓ったから、これからも一生一緒についてきてください。産まれてきてありがとう。愛しています。嫁になってくれますか?7月7日に返事待ってます。byとと 2022.4.23」

 事故当日の日付が記された、この手紙。行方不明となった彼女はまだ見つかっていません。

 将来ある、若い命を奪った事故。新たな事故原因の可能性も浮かび上がってきました。

 「KAZU3」の元船長:「船舶検査証書にバラストは1.5トン積みなさい。それを順法していない、守っていないことからJCI(日本小型船舶検査機構)の検査員に指摘されていました」

 去年9月まで、知床遊覧船で「KAZU3」の船長を務めていた男性。船のバランスを保つ「バラスト」を積んでいなかったと指摘しています。バラストとは一体どういう役目を担うのでしょうか。

 海上災害防止センター・伊藤裕康理事長:「(バラストは)船の重心を下げる。それで船の安定性を上げるというのが一般的。(バラストを降ろすと)船の重量が軽くなるのでスピードが上がる。スケジュール通りに運航するのであれば、スピードが出た方がいいと思うので、そういった面ではメリット」

 「KAZU1」の船体は、船首が重く、後ろに重りの役目を担うバラストを積むよう指示されたといいます。去年、KAZU1では、そのバラストを降ろしたと話します。

 「KAZU3」の元船長:「改善すると、これまでにバラスト積んでいない状態で航行している。だからそっちの感覚で操縦するので、バラストを1.5トンも積んでいると、すごく操縦しづらくなる。そんなことから勝手な解釈で検査終わった後に訳の知らない従業員をつかまえて『バラスト全部降ろすぞ』と言って降ろしていた」「(Q.当日(バラストを)載せていたんですかね?)載せていないと思いますよ。僕のもともとの甲板員だった人が証言しています。(社長に)『絶対に大事故になりますよ』と言っていたのが当たっていたなって。法律を守ろうなんて思っていないです。ばれなきゃOKというのはすごく多い」

 日を追うごとに、そのずさんな体質が明らかになってきています。

 桂田社長の20年来の知人:「何も知らないで、ただもうかるからやるかって、やっていた」

 桂田社長をよく知る人物は、そのコスト重視の体質を間近で見ていました。

 桂田社長の20年来の知人:「(遊覧船業者)4社あるけど、3社出なくても1社だけで出て行っちゃう。したら客が船酔いしてそういうことはしばしばあった。利益を求めすぎればそういう結果になる。1人8000円で、20人乗せたら16万円でしょ。それを求める」

 その場しのぎの経営を物語る、こんな頼みもありました。

 桂田社長の20年来の知人:「俺も実際頼まれた。『船長見つけてくれ』って『探してくれって』言われたの。事故の3、4日前。その場でなんで『ろくな者いないからだめだ』って断った」

 一方、知り合いからは事故後の社長のこんな言葉も耳にしていました。

 地元の人によりますと、事故後、社長は従業員らに「1週間もすれば騒ぎも終わるから大丈夫だ」と話していたということです。

 3月中旬まで関連会社で働いていた人物。現在も働いている知り合いの社員の元には、桂田社長から、こんなメッセージが届いたと言います。

 関連会社の元従業員:「言い訳のような感じで『会見ではああいうふうに謝ったけど、基本的には判断はそこまでミスってなかったから、報道を見ないでほしい』という申し受けはあった。『自分は悪くないないのにな』というそぶりを見せながら、社員とかに当たっていると言っていた」

※「KAZU1(ワン)」「KAZU3(スリー)」は正しくはローマ数字
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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