“市民殺害”現場を視察 ウクライナ大統領「新たな犯罪」
ウクライナ首都キーウ近郊のブチャ。4日、ゼレンスキー大統領が訪れました。
激しく破壊された戦車などは今もそのまま。ここブチャでは、路上に市民の遺体が放置されていました。
市民
「ここから200メートルくらいの通りに12人の遺体がありました。若い市民でした」
現地の人たちから直接、話を聞いたゼレンスキー大統領。
「解放された街に行くたびに、新たな犯罪の証拠が明らかになっていき、話し合いが難しくなっていく」とロシア側を非難しました。
“ブチャだけでも300人が殺害されていると聞いている”と話すゼレンスキー氏は、ほかの街にも多くの死傷者がいるとして、こう強調しました。
ウクライナ ゼレンスキー大統領
「ロシア軍が犯したすべての犯罪を裁判にかけるために必要な、法的な枠組みの整備を進めている」
国際社会も対応に動いています。アメリカ・バイデン政権は週内にロシアへの追加の経済制裁を発表する方針でヨーロッパの主要国などと協議。また、EU=ヨーロッパ連合は戦争犯罪や人道に反する罪を調査するため、ウクライナとの合同捜査チームを立ち上げています。
一方で、ロシアのラブロフ外相はウクライナ側の主張を“フェイクニュース”と否定。国連安保理の緊急会合の開催を求めましたが、開かれませんでした。
ウクライナ首都キーウ近郊で見つかった多数の市民の遺体。
ロシアによる軍事侵攻後日本メディアとして初めて、JNNのインタビューに応じたウクライナのキスリツァ国連大使は、この事態について。
ウクライナ キスリツァ国連大使
「ロシアに責任を取らせる」
国連人権理事会でのロシアの資格を停止させるため、加盟国に働きかけていく考えを明らかにしました。国連総会で投票国の3分の2が合意すれば、ロシアの資格停止が可能となります。
また、ロシアとの間の停戦交渉をめぐっては。
ウクライナ キスリツァ国連大使
「ウクライナ政府はクリミアを含め、いかなるウクライナの領土についても、新しい地位を認める合意には、署名することはありません」
ロシアに一方的に併合されたクリミアと、親ロシア派武装勢力が支配する東部地域の主権について、一切妥協しない姿勢です。
一方、ロシア軍の猛攻撃は南東部マリウポリで続いています。ロシア国防省はマリウポリのウクライナ軍などについて、現地5日朝から武器を捨てて撤退するよう呼びかけました。
武器を捨てれば生命を保証するとしていますが、先月の同様の要求にもウクライナ側は「いかなる降伏もあり得ない」と拒否していました。
JNNは、そのマリウポリから逃れてきた人たちが集まるザポリージャを取材しました。
ザポリージャ市 ヴァシュク副市長
「これまでに避難民6万4000人を受け入れましたが、そのうち1万7000人が子どもでした」
親
「何か食べたいの?」
ヴラッドさんとアリョーナさんは、生後11か月の赤ちゃんを含む3人の子どもとともに、12時間近くかけて避難してきました。マリウポリの状況をアリョーナさんはこう話します。
マリウポリから避難してきたアリョーナさん
「亡くなった人をあちこちに埋葬しています。家の前、学校、保育園のそば、あらゆる場所に墓ができています」
ホームセンターの駐車場には窓ガラスが吹き飛んだ車がありました。
マリウポリから避難してきたタチアナさん
「走行中、子どもたちの目を覆わなければなりませんでした。酷い光景だったからです。人間の体の部分が道路に散乱していたのです」
生まれも育ちもマリウポリだというタチアナさん。避難所として利用されロシア軍の爆撃を受けたとされる劇場には、よく通っていたといいます。
マリウポリから避難してきたタチアナさん
「劇場はマリウポリの中心でした。なにもかにも破壊され、まさに焦土です。もはやマリウポリは存在しません」
アメリカ国防総省高官は、マリウポリへの空爆は続くと分析していますが、まだ十数万人が取り残されていると見られ、今後の市民の被害の拡大も懸念されます。
(05日17:43)
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