“プロパガンダとスマホの自撮り”SNS時代の情報戦 (2022年3月26日)

“プロパガンダとスマホの自撮り”SNS時代の情報戦 (2022年3月26日)

“プロパガンダとスマホの自撮り”SNS時代の情報戦 (2022年3月26日)

「ペンは剣よりも強し」。
21世紀の戦争でも、言葉や情報が暴力よりも影響力を持つことは変わりませんが、その主役はスマートフォンとSNSに変わりました。

(ウクライナ・ゼレンスキー大統領のFacebookより)
「首相もここにいます、大統領顧問もここにいます、大統領もいます」

ゼレンスキー大統領は日々SNSでメッセージを伝え・・・

市民は困難に立ち向かう姿をスマートフォンで撮影し、時には惨状を世界に訴えてきました。

サイバー安全保障に詳しい専門家はウクライナの動きをこう見ています。

(慶應義塾大学 土屋大洋教授)
「史上初めてスマホが本格的に戦争に使われたっていうことだと思うんですね」
「ウクライナの人たちが自分たちで情報をどんどん発信をしていき、そしてそれを抵抗運動に使っていくということですね、その結果、思ったよりも長い期間の抵抗運動が続いているということは(ロシアにとって)全く想定外だったと思いますね」

一方で戦争を止めるために声をあげようとするロシア人も・・・

(日本に住むロシア人YouTuber あしやさん)
「こういった悲惨な状況だから黙っていられないという気持ちはとてもあります」

日本に10年以上住むユーチューバーのあしやさん。
これまでは日本文化を体験する動画が中心でしたが、今はロシアの友人などから聞いた情報も発信しています。

(日本に住むロシア人YouTuber あしやさん)
「ちょっと肩身が狭いという感じがします、決して私はもちろん戦争反対なんだけれど、やっぱりロシア人だからそういう気持ちになるんですね」
「自分はもうロシアには行かない覚悟で発信していますので、今のままのロシアに、ロシアの国籍のまま入国すると本当に逮捕される可能性もなくもないので」

SNS時代の情報戦。
ウクライナとロシアの違いは明確です。

(ロシア プーチン大統領)
「人々を苦しみや虐殺から解放することはドンバスとウクライナで開始した軍事作戦の主な目的である」

今回、プーチン大統領はウクライナの「ネオナチ」を排除するための作戦であると繰り返してきました。
こうした主張を本当に信じているロシア国民は少なくありません。

3月3日、ウクライナに住む男性とロシアに住む父親との間でこんなやりとりがありました。

(ミシャさんと父親の電話でのやりとり)
ミシャさん「父さんは本当に、ナチスがウクライナで政権をとって、ロシア語を話す市民を弾圧していると信じているの?」
父「ウクライナでは『ウクライナはロシアではない』『ロシア人は根絶やしにしろ』とか。若い人々はロシアを憎むような教育を受けてきたんだ」
ミシャさん「父さん、聞いてよ・・・」

(ウクライナ在住 ミシャ・カツーリンさん)
「一人で森にすみ、身近な若者がいない父のような人間は、20/29ロシアのプロパガンダの被害者になりやすいのです」

ミシャさんは、この経験をもとに
「パパ・ビリーブ(=父さん信じて)」というサイトを立ち上げました。
ロシアのプロパガンダの影響下にある親族に真実を伝えるための、コミュニケーションをとる方法を共有しようとしています。

(ウクライナ在住 ミシャ・カツーリンさん)
「真実を知れば戦争は終わります。次の戦争は始まることすらありません」

ロシアのプロパガンダに対し、ウクライナからはロシア軍の侵略の映像が世界に発信されています。

(ウクライナ・ボロディアンカの住民撮影)
「誰かがボロディアンカからの写真はフェイクだと言っていました、でも見てください、これが『ロシアの世界』です」45

(ウクライナ・キエフの住民撮影)
「ロシア人がここでやっていることをみんなに知ってほしい」

政府関係者や自治体のトップも「自撮り」で攻撃による被害を訴えます。

(ウクライナ非常事態庁バシレンコ氏)
「爆破された建物のがれきの中には人がいます、がれきの中から、6人の遺体が運び出されました。約20人がけがをしました」

(ウクライナ・ハリコフ州 シネグボウ知事)
「きょう、わが町は、市中心地と住宅地に、GRADシステムと巡航ミサイルの犯罪的な空爆を受けた」

こうした映像が「ウクライナを支援しよう」という国際世論の形成につながりました。

(慶應義塾大学 土屋大洋教授)
「このある意味世論戦にですね、ロシアは負けてしまっているというのが現状だと思います」

ロシアは情報統制を強めることで対抗します。
「虚偽」とみなした情報を報じた記者や個人に最大で15年の刑が科せられる法律を導入しました。

反体制の独立系テレビ局「ドシチ」では・・・

(キャスター)
「我々が直面した事情により放送を一時停止します」

「戦争」や「侵攻」などの表現が問題視され、業務を停止しました。

一方、国営放送ではスタッフが生放送中に反戦を訴え一時拘束されました。

またモスクワの裁判所はアメリカのIT大手メタを過激派組織と認定し、ロシア国内でのフェイスブックとインスタグラムの運営を禁止しました。

しかし今、SNSなどから情報がまったく得られなくなったというわけではないようです。

(日本に住むロシア人YouTuber あしやさん)
「みんなVPN(仮想プライベートネットワーク)を使って普通にインスタグラムは使えます」
「YouTubeはこれから遮断されるという報道がちょくちょく出てきてるけど現時点ではまだらしいです」
「実際に反戦デモに出ている人たちもいまだに、拘束もされながらも一部、勇気を持っている人たちは出ています」

SNSを使ったデモの呼びかけには、こんな工夫があるといいます。

(日本に住むロシア人YouTuber あしやさん)
「直接『反戦デモ』とは言わなくて、例えば『土曜日天気がいいから散歩に行きましょう』そういった伝え方をするんです」

政府によるプロパガンダの影響については・・・

(日本に住むロシア人YouTuber あしやさん)
「世代によって差が激しいとも感じています。年配の方だったら情報源としてテレビばっかり見ていたりとか、でも若い人だったらSNSだけとか」

あしやさんは、3月3日に業務を停止したロシアの独立系テレビ局「ドシチ」の元記者とコンタクトをとりました。
現在は隣国ジョージアに逃れています。

(ロシア独立系テレビ局「ドシチ」 エドゥアルド元記者)
「ロシアの独立系のメディアはすべてブロックされました。連邦レベルのテレビチャンネルは、ウクライナに関するニュース、ロシア軍の行動を、正当化するニュースを流しています、当然のことながら、テレビをつけるほうが楽ですし、平均的なロシア人は大規模なチャンネルで何が起こっているかを見て、情報を得ています」
(あしやさん)
「今あなたはSNSで何をしていますか?その情報はロシア人に届いていますか?」
(ロシア独立系テレビ局「ドシチ」 エドゥアルド元記者)
「例えばロシアの『メドゥーサ』に記事を書きました」
「読者や視聴者が多いか少ないかは重要ではありません。私たちはプロパガンダに立ち向かうためにできる範囲で何かをし続けなければなりません」

国外から発信されるロシア国民に向けてのメッセージは今後どのような影響を与えるのでしょうか?
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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