【解説】なぜ?トルコが仲介 ロシア・ウクライナ外相会談”停戦”の行方は?
ロシアによるウクライナ侵攻で7日、ウクライナとロシアの3回目の協議が行われましたが、大きな進展は見られませんでした。こうした中、トルコが仲介に乗り出し、ロシアとウクライナの外相会談が10日に行われるということです。停戦への糸口となるのか、詳しく解説します。
■「人道回廊」ロシアへ避難させるルート ウクライナ副首相「ばかげている」
ウクライナ第二の都市ハリコフは7日、ロシア軍によって街が破壊され、廃虚となっていました。
OHCHR (=国連人権高等弁務官事務所) は7日、ウクライナの民間人の死傷者は1207人にのぼると発表しています。また、UNHCR(=国連難民高等弁務官事務所) によると、8日午後3時現在、周辺国に173万人が避難しているということです。
攻撃が続く首都・キエフ近郊では7日、ウクライナ軍の兵士に付き添われる子どもの姿もありました。
こうした中、鍵となるのが民間人を安全に避難させるためのルート「人道回廊」の設置です。
ロシア側は7日に突然、人道回廊の6つのルートを発表しました。4つのルートがロシア行きとなっています。ウクライナ首都・キエフからは、ロシアの同盟国ベラルーシ経由でロシアへ向かうルートです。ハリコフからも、ロシアへ避難させるルートになっています。
一方、ウクライナ国内での避難は2ルートだけです。これには当然、ウクライナ側も「同意できない」としています。
ウクライナ副首相も「ロシアはウクライナの民間人をロシアに行かせようとしているが、ばかげている。容認できない」とコメントし、ウクライナ側は拒否していました。
しかし、一部の住民がロシア側に避難しました。
ロシアへ避難した人(ロシア・ロストフ州)
「(マリウポリでは)何もできない。通信も電気もガスもない」
ロシア軍に包囲されたウクライナ南東部・マリウポリでは、食料や医薬品が不足している状況だということです。
■3回目の協議 双方の溝は依然として深く…「わずかな進展」も
こうした中、ベラルーシ国内で7日、ロシアとウクライナの停戦に向けた3回目の協議も行われました。約3時間の協議でしたが、双方の溝は依然として深く、大きな進展はありませんでした。
ウクライナのゼレンスキー大統領はSNSで、次のように述べました。
ウクライナ ゼレンスキー大統領
「3回目で最後と言いたいところですが、我々は現実主義者です。我々は平和を達成する方法を見つけるまで、交渉をするつもりです」
協議は引き続き行われるということですが、ウクライナ側の代表団によると、人道回廊を巡っては、「避難経路などについて、わずかな進展があった」ということです。
一方、ロシア側も「8日から人道回廊がようやく稼働することを非常に期待している。ウクライナ側がその保証をした」としています。
ロシア国防省は日本時間8日午後4時に、再び人道回廊を提供するとしています。ルートは7日の6ルートにもう1つ、チェルニヒウからベラルーシ経由でロシアに避難するルートが加わるとしています。
■トルコが仲介に…なぜ?「 “もう戦えない”となった時に必要」との指摘も
なかなか停戦への道筋が見えない中、トルコが仲介に乗り出しました。
トルコのチャブシオール外相は7日、ロシアのラブロフ外相とウクライナのクレバ外相が10日にトルコ南部・アンタルヤで会談すると発表しました。トルコの外相も同席し、3者会談の形になるということです。
この会談が実現すれば、先月24日にロシアによる軍事侵攻が始まって以降、両国の外相が初めて顔を合わせることになります。
トルコのチャブシオール外相は「平和と安定に向けた第一歩になることを望む」と話しています。
国際安全保障に詳しい慶応義塾大学・鶴岡路人准教授によると、「仲介役のトルコはNATO(=北大西洋条約機構) の加盟国でありながら、ロシアとウクライナ両国と良好な関係を保っている有力な仲介候補で、地域の大国として無視できない存在」ということです。
このトルコが仲介する3者会談について、鶴岡准教授は「行われること自体は前向きなこと。しかし、どちらかが大幅に譲歩しない限り、交渉は妥結しない」と分析しています。
その理由は、「ロシアは今、戦況が優位で譲歩する局面ではない。むしろ、条件をつり上げて、ウクライナが交渉の席を立てば侵攻を正当化できると考えている」といいます。
また、鶴岡准教授は「ウクライナもまだ抵抗できる段階で、西側諸国が抵抗し続けられるよう支援している状況。ここで譲歩すると“ロシアの言いなり”、事実上、独立国家でも主権国家でもなくなってしまうので、そう簡単に受け入れられないだろう」と話しました。
つまり、現時点での外相会談は、そんなに大きな成果は出ないかもしれないということです。
ただ、鶴岡准教授は「今回の会談が今後に生かされる可能性はある」と指摘し、「どちらかが『もう戦えない』となった時に仲介者が必要になる。その時、ロシアとウクライナが、トルコを介してどういう交渉ができるのか、感触をつかむよい機会になる」と話します。
◇
まだ避難できない民間人が多くいる中、ロシアによる侵攻はどんどん進み、犠牲になる人が増えているのが実情です。とにかく、一人でも多くの人を救う道筋を一刻も早く見つけてほしいと祈るばかりです。
(2022年3月8日放送『news every.』より)
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