【企業トップに聞いてみた】DeNA・南場智子会長(2023年1月5日)

【企業トップに聞いてみた】DeNA・南場智子会長(2023年1月5日)

【企業トップに聞いてみた】DeNA・南場智子会長(2023年1月5日)

■2023年は「元気を取り戻す1年に」
 (Q.2023年、どんな1年にしていきたい?)
 今年はね、色んな意味で、『元気を取り戻す1年』にしたいですね!

 (Q.ご自身にとって?日本経済にとって?DeNAにとって?)
 全部ですね。DeNAはずっと一貫してポートフォリオ(事業の構成)の組み換えをやってきてますし。ただやっぱり、スポーツ事業ね、コロナ時代に応援がやりにくい環境でしたので、それを今年は完全に取り戻したいなと思います。去年からスタジアムには来られる状態なんですけど、大きな声を出したりできなかったわけですよね。応援歌を歌うこともできなかった。そういったことは取り戻す1年にしたいですし、日本経済もおそらく、インバウンドも強烈に復活すると思いますし、色んな意味で爆発的に経済のダイナミズムを取り戻す1年になると思います。

 (Q.となると、今年、日本が変わっていく1つのポイントはインバウンドに注目している?)
 インバウンドは注目ですし、あと、人が集まるスポーツ観戦ですとか、あるいはライブですとか、そういったものが本当に勢いを取り戻すと思いますね。

■リスク要因は「海外経済」 乗り越える鍵は「国内」に
 (Q.元気を取り戻すうえでリスクになりそうな要因はどう見ている?)
 リスクは海外経済じゃないかと思いますね。欧米のソフトランディングが皆さんがおっしゃっているように、ソフトランディングできるのかとか、今の円安が少し是正に向かっていますけれども、本当に金利ギャップによる円安ですので、それが本当に金利ギャップが縮小していくのかどうかっていうところとか、うーん、あとは中国経済も不透明感がありますから、不安材料があるんですよね。ですから、そういう海外の経済がどうなるのかっていうところが不安、リスクとしてありますね。ただ、珍しく国内の需要によって活気を取り戻す1年ということですね。

 (Q.今までだと海外経済に引っ張られて、日本の経済もアメリカや中国の影響を大きく受けていたが)
 今年は内需だと思いますね。

■“一律の賃上げ”ではなく実績を出した人に報いる賃上げを
 (Q.内需を取り戻すうえでも重要になるのが賃上げ。賃上げについての考えは?)
 賃上げはうちの業界は、IT業界はずーっとしてきているんですよね。今、政府が『賃上げして下さい』とか、団体が『賃上げだ』って言ってるんですけれども、それを聞いて『だから賃上げ』っていうのではなくて、やっぱり人材って動けば絶対に賃上げするんですよ。ですから、政府としては『賃上げして下さい』とお願いするよりも、人材が流動化するような仕組みを徹底的に作るべきだと思いますし、大企業のほうはやっぱり終身雇用でずっとやってきている、人材があまり動かないというところを大胆に変えて、それで中途採用の人もどんどん幹部で登用して、そうすると『途中から入ってもいいんだな』っていうふうになれば、最初ちょっとスタートアップで経験をするとか、違う会社に行ってみて友達の事業手伝うとか、自分で起業してみるとか、世界一周してみるとか、色んなことやったあとで大企業も行けるんだというふうに、そういう社会になっていけば、人がどんどん動けば必ず賃金は上がります。私たちの業界、IT業界もスタートアップ業界も、人が年間10%から15%動いてまして、だからずーっと毎年4%から5%上がってきているんじゃないでしょうかねぇ。そのIT、メガベンチャーとスタートアップの中で人材は回ってるんですけども、大企業との間に川が流れていてですね、人材のシャッフルが進んでないんですよね。その川に橋をかけなければいけないと思いますね。

 (Q.政府としても労働移動の円滑化は戦略として唱えているが、一番のネックになっているのは大企業の人材制度?)
 終身雇用制度じゃないですかね。新卒一括採用だったり、終身雇用制度っていうところで、かなり硬直的になっているっていうところだと思います。あと、賃上げと言っても、やっぱり一律の賃上げではなくて、エンゲージメントを高めるような賃上げっていうのが必要で、やっぱり成果を出した人、一生懸命頑張って事業のうえで成果を出した人に大胆に報いるっていうことで、そうではない人との差は広げても、実績を出した人、実力のある人に大胆に報いていくという形の賃上げをしていかないと、エンゲージメントが高まりませんよね。

■「わっしょいわっしょい」 スタートップ躍進の1年へ
 (Q.もう一つのポイントがスタートアップ。政府も5カ年計画をまとめたり、経団連も提言まとめたりしているが、2023年、スタートアップをもっと活力あるものにするために何が必要と感じている?)
 政府も『(スタートアップ育成)5カ年計画』って発表して、例えばスタートアップ先進国のアメリカやイスラエルなどと比べて、起業しにくかったり、スタートアップに人材を集めにくかったり、あるいは投資をしにくかったりというまだ制度的なギャップが残っているんですよね。それをどんどんどんどん解消していくということと、それから日本が一番起業しやすく、投資しやすい国になるとですね、海外からまた人材が集まってくると思うんですよね。それを起こさないと、非常にドメスティックマインドの国内市場だけ見た小ぶりなスタートアップが多くなってしまいますので、ほんとに日本という場所を世界中の起業家や世界中のキャピタリストが集まる場所にして、そこで切磋琢磨して、この国から世界を制覇するスタートアップを出していく、そういうことが必要になると思いますね。

 (Q.他の国に後れをとっている日本に一番足りなところは?)
 『一番』って言ってしまうのが一番危なくて…。

 (Q.(経団連の提言に)書いてありましたね)
 そうなんですよ。エコシステム(生態系)って、放っておくと30年40年かかるものを5年でやってやろうってことですので、できることを全部一斉にやるってことが必要なんですね。規制改革、それから制度面のギャップ、それからたとえばインセンティブ、ストックオプション(自社株の購入権)の付与のしやすさであるとか、あるいは外国人が日本に来て起業のトライアルをしやすいとか、あるいは大学の特許がスタートアップに使われやすいとか、そういう多方面のことを全部やっていかないと、エコシステムですので、それを私は強調したいですね。『これ一つ』っていうことのリスクのほうが非常に大きいと思います。

 (Q.2023年はスタートアップの今後の飛躍においてどんな位置付けの一年に?)
 (スタートアップ育成)5カ年計画のスタートダッシュだと思うんですよね。世界ではやっぱりIPO(新規上場株式)市場も冷えているし、『スタートアップ冬の時代』などと呼ばれていますし、日本でも一定それはあるんですけれども、リーマンショックの後に生まれたスタートアップってすごく良い銘柄、良い起業が多いんですよね。こういう時こそチャンスであるし、かつ世界的に今『スタートアップ冬の時代』となっているときに、日本はどうも違うみたいだなということが世界にメッセージとして伝わっていますので、チャンスではあるんですよね。ですから、全然マクロ的な動向にとらわれずに、とにかく『わっしょいわっしょい』と盛り上げていくっていうことが重要だと思いますね。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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