「必要な人に届くのか、性教育も改善してほしい」『緊急避妊薬』試験販売始まる (2023年11月28日)

「必要な人に届くのか、性教育も改善してほしい」『緊急避妊薬』試験販売始まる (2023年11月28日)

「必要な人に届くのか、性教育も改善してほしい」『緊急避妊薬』試験販売始まる (2023年11月28日)

28日から、一部の薬局で、医師の処方なく『緊急避妊薬』が、試験的に販売されるようになりました。

性行為から72時間以内に服用すれば、8割程度、妊娠を防げる緊急避妊薬。購入できるのは、16歳以上で、価格は7000円~9000円。対象は、全国145の薬局に限られます。
『OGP薬局』薬剤師・鈴木怜那さん:「すごく生活に寄り添った薬だと思う。自分が妊娠したくないと思ったときに服用できるのは大切なこと」

薬局では、どんな手順で購入できるのでしょうか。
希望する人は、まず薬局に電話で連絡をします。対応は、研修を受けた薬剤師に限られ、プライバシーに配慮して、個室などで説明や販売を行います。転売などを防ぐため、薬はその場で飲んでもらいます。薬局も、新たな役割を求められることになりそうです。
『OGP薬局』薬剤師・鈴木怜那さん:「必ず店頭(販売)なのか、もっと良い提供方法があるか。薬局も相談窓口の一つに加わったと思っていただければ」

望まない妊娠を防ぐ。世界では、女性の権利として“当たり前のこと”になっています。最も進んでいる国の一つが、フランスです。

緊急避妊薬の薬局での販売が始まったのは、24年前の1999年。さらに、今年からすべての女性に無料で提供されるようになりました。未成年は、保険証を提示しなくても受け取れます。
薬剤師:「学生たちは薬局に来ています。無料に加え、匿名性も高いからです。高校の保健室を匿名で訪れるのは難しいですからね」

性教育の機会にも、つながっているといいます。
薬剤師:「若い女性に避妊の指導をする機会にもなっています。私たちの使命でもあります。緊急避妊薬だけではなく、長期的に“避妊指導”をする使命です」

パリ市民:「若い女性の助けになるので、賛成です。(Q.無料化によって、若い女性の責任意識が薄れる恐れは)ありません。タダだから、“もっと欲しい”とはならないでしょう」

ようやく“試験”販売に乗り出した日本。
政府内で検討が始まったのは、6年前のこと。産婦人科医などから性教育が浸透していないといった慎重意見が相次ぎ、議論が進まない状況が続いてきました。
 
検討の過程で示されたアンケートでは、産婦人科医の8割以上が『懸念がある』と回答。主な理由として『転売の可能性』や、『コンドームの使用率低下による性感染症リスクの拡大』などが挙げられています。

長年、薬局での販売解禁に向けて、取り組んできた染矢さんは、こう話します。
緊急避妊薬を薬局でプロジェクト・染矢明日香共同代表:「(Q.試験販売が始まりますが)正直、微妙な気持ち。試験的販売が始まって、一歩進んだところもあるが、一方で取り扱いが限定的で、さまざまな条件があって、必要な人に届く制度設計になっているのか」

さらに、今後の課題として、対象年齢や親の同伴を挙げます。今回の試験販売では、15歳以下は対象外で、16歳、17歳については親の同伴が必要です。
緊急避妊薬を薬局でプロジェクト・染矢明日香共同代表:「実際に相談の場では、親には絶対言えません、知られたくありませんという事例もかなり多いので、それがハードルになって、入手できないことがおこり得るのでは。(Q.性教育足りてないという意見は)むしろ性教育がちゃんとしていない環境だからこそ、必要になる人が出てくる。緊急避妊薬のアクセス改善の検討と同じくらい、それ以上の熱量で性教育も改善してほしい」

※世界では、現在、約90の国と地域で、医師の処方箋なしに薬局などで購入できるということです。

日本では、今回の試験販売で1錠7000円~9000円ですが、アメリカでは、約4200円~5300円。イギリスでは約900円。ドイツでは約2200円。オーストラリアでは、約1100円~4000円です。アメリカ、イギリス、ドイツでは、病院や学校などで無料提供しています。

海外では、無料で提供されている国もありますが、日本では、なぜ遅れているのでしょうか。

産婦人科医で、緊急避妊薬の市販化に賛同している淀川キリスト教病院の柴田綾子先生に聞きました。
「日本は性教育が遅れていて、避妊法が学習指導要領に入っていないため、正しく学ぶ機会がない。また世界では『リプロダクティブ・ライツ』という女性が避妊や妊娠について自分で決められる権利があるが、日本では、その概念が浸透していない」としていて、避妊などに対する認識の低さを挙げています。

また、柴田先生は、薬を提供するだけの問題ではなく、こうしたことも必要だと話しています。
「“緊急避妊薬が必要になった人”の中には、『男性が避妊してくれなかった』というケースが一定数あるということ。避妊は男性も関係することであり、パートナーを大切にすることや性的同意について、男性も意識を高めることが必要」といいます。

試験販売は、今年度末までの予定ですが、厚生労働省は「今回の調査結果を踏まえ、緊急避妊薬が必要な人に適切な形で届くよう検討を進めたい」としています。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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