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【報ステ解説】「実質的な地上侵攻」歩兵やブルドーザーも…ガザ戦闘“第2段階”意味(2023年10月30日)
イスラエル軍が、ガザ地区への地上攻撃を拡大しています。こうしたなか、ガザ地区から2キロの地点にあるイスラエルの集落に、取材班が入りました。
醍醐穫記者:「今、ガザ地区の近くの集落に向けて、メディアツアーが組まれ、そのバスが出発しました。多くの海外メディアに加えて、武装したイスラエル軍の兵士が同乗しています」「煙が上がっているのが見えます。煙の筋がいくつも見えます。煙が上がっているあたり、ちょうどガザ地区の一番北側になるとみられます」
途中には、検問所も…。
醍醐記者:「チェックポイントは、ロケット弾から身を隠すシェルターも設置されています。鉄条網や車止めが何重にも配置されています」
イスラエル南部にあるニル・オズ。ガザの境界から、わずか2キロほどしか離れていません。7日、イスラム組織『ハマス』に襲撃され、住民が殺害や拉致されるなどしました。
醍醐記者:「メディアツアーには、完全装備のイスラエル軍兵士が同行しています。ガザから2キロの距離だということで、非常に緊張した状況です」「先ほどから何度も、戦闘機とみられる航空機が低空飛行している音が聞こえます。時折、ドンドンという爆発音も聞こえます」
ガザ地区の奥深くまで侵入しているイスラエル軍は、ハマスのインフラや軍事施設を破壊したとしています。29日に公開された映像では、戦車とともに前進する歩兵の姿が…。そして、海沿いではブルドーザーが整地する様子も確認できます。まさに、本格的な侵攻への地ならしです。空爆とともに地上作戦を展開するイスラエル軍。地上侵攻の開始を宣言しないまま、なし崩し的に攻撃を拡大させています。
防衛省防衛研究所 小橋史行主任研究官:「確実に少しずつ戦力を軽減させていく、そういう攻防かなと。ある時期をもって大規模になるかもしれませんが、軍人の損耗も出したくないという、イスラエルの状況からすれば、もう少し(このような地上戦が)続くかもしれないと思っています」
週末にかけての攻撃は、これまでにない苛烈なものでした。しかも、イスラエルはガザ全域のインターネットや電話網を完全に遮断。情報が手に入らないなか、人々は暗闇のなかで不安な夜を過ごすしかありませんでした。
ガザ地区北部にあるアル・クッズ病院。粉塵が舞い、騒然となっています。窓ガラスは跡形もなく、外を見ても真っ白です。攻撃の前に、イスラエル当局から直ちに退避するよう連絡があったといいます。
イスラエル当局から通告:「退避しなければ、病院内の犠牲の責任は赤新月社にある」
アル・クッズ病院の院長:「彼らから、この地域が軍事区域になること、衝突が起こること、地域が危険であること、速やかに退避しなければならないことを告げられました」
病院には、患者だけでなく、1万人を超える人々が避難していました。居場所はなく、建物の外で過ごすしかない人も…。そんな病院から50メートルほどの場所に攻撃があったのです。
パレスチナ赤新月社 広報担当:「退避する手段はありません。患者は400人以上いて、多くは集中治療室です。見殺しになります。退避命令には従いません」
イスラエル側が退避先としているガザ南部。こちらでも、病院に多くの人々が身を寄せ合っている状態です。廊下や待合室で、ただやり過ごすしかありません。
女性:「子どもたちはゆっくりと死んでいっているのと同じで、刑務所の方がましです」「子どもたちに何の罪が?人権がないとでも?」
人道状況は悪化の一途をたどっています。箱や袋を手にして運ぶ人たち。国連が支援物資を保管している倉庫から持ち出しているのです。国連機関は、住民の秩序が崩壊し始めた兆候だとみています。
国連パレスチナ難民救済事業機関 広報担当:「ガザ市民が限界に達していることを示しています。絶望感といらだち、恐怖と不安に駆られています。本当に厳しい包囲のなかを、もう3週間も耐えていて、爆撃もやまず、市民は多くを失い、悲しみに暮れています」
エジプトとの境界、ラファ検問所を訪れた国際刑事裁判所のトップは、こう話しました。
国際刑事裁判所 カーン主任検察官:「けさ目撃したのは、必要とされていない場所にいた、支援物資のトラックです。遅延なく、ガザ市民に届けるべきです。ハマスとの戦争で、イスラエルには明確な義務が生じます。道徳的な義務だけでなく、武力紛争法を遵守する法的義務があります」
拡大する地上作戦に、ハマスの後ろ盾、イランのライシ大統領は…。
イラン ライシ大統領:「シオニスト政権の犯罪は、越えてはならない一線を越えた。アメリカは我々に何もしないよう求めるが、イスラエルには幅広い支援を与えている」
そのアメリカ。バイデン大統領は、ネタニヤフ首相との電話会談で、民間人の保護を訴えました。
アメリカ サリバン大統領補佐官:「我々の考えでは、この軍事作戦において、イスラエル軍・政府はいつ何時も、あらゆる手段を講じて、正当な軍事目標であるハマスと、そうでない民間人を区別すべきです」
とはいうものの、市民を巻き込む攻撃をイスラエルにやめさせることはできていません。死者はすでに、8000人を超えているといいます。
◆ガザ戦闘“第2段階”の意味とは
中東情勢や難民問題が専門の、慶應義塾大学・錦田愛子教授に聞きます。
(Q.ネタニヤフ首相は「戦争の第2段階に入った」と述べています。これは本格な地上侵攻に入ったことを意味しますか)
錦田教授:「開戦当初に予定されていた地上侵攻とは少し違うと思います。ただ、ガザの中で侵攻の度合いを深まっているのは事実だと思います。ネタニヤフ首相が言っている戦争の段階というのは、このような3つの段階が想定できます」
(1)ハマスの軍事施設を攻撃後、すぐに“撤退”
(2)施設攻撃後、部隊を“駐留”
(3)大規模な“一斉侵攻”
(Q.攻撃のフェーズを一段上げたということは、イスラエル側は人質の救出について、何らかの糸口を見つけたということですか)
錦田教授:「必ずしもそうは言いきれません。ただ、救出作戦はどの道必要になってくるので、足掛かりを作るための侵攻と考えられます。確定的な人質の居場所の情報があるならば、すでに奪還作戦に入っていると思います。それがまだ始まっていないということは、まずは人質の情報を集める。そして、今後の部隊展開のための駐留エリアを拡大する段階にあると思います」
(Q.第3段階の“大規模な一斉侵攻”は、はっきりと転換点が分かるものですか。それとも、ずるずると拡大していきますか)
錦田教授:「どちらの可能性もあります。同時並行で進んでいる人質交渉で、一定数の釈放・交換ができた段階であれば、分かりやすい形で大規模侵攻が始まる可能性が高いです。ただ、それができない場合は、今のような形で、ずるずると拡大していく可能性があります。その場合、制圧地域を少しずつ拡大し、領域内での人質奪還を少しずつ進めていく形になると思います。今回、ネタニヤフ首相は作戦について、詳細を明らかにしないと明言しています。宣戦布告をして一斉攻撃という形が望ましかったのかもしれませんが、そういう形を取らない可能性も出ています」
ハマスが攻撃をしかけた直後は、イスラエル側が発表している犠牲者の数は700人(9日)、ガザ保健省が発表している犠牲者は436人(8日)でした。最新の状況では、イスラエル側は1400人以上(21日)に対し、ガザは8306人と急増していて、7割以上が子ども・女性・高齢者などの民間人とされています。
(Q.イスラエルは、民間人を配慮せず攻撃しているのでしょうか)
錦田教授:「民間人に対する攻撃で犠牲者が出たことが国際的に報じられると、イスラエルにとって外交的な孤立につながってくると思います。そういう意味で国際世論を気にせざるを得ません。ただし、イスラエルにとって、自国民の人質の奪還や、ハマスのせん滅が優先されるので、パレスチナ側の民間人の犠牲をそこまで意識していないかもしれません」
ハマスをいち早く支持したイラン。ライシ大統領は「レッドラインを超えた。行動を起こさざるを得ない状況になっている」と発言しました。
(Q.先週、インタビューしたハマス幹部は「イランが国として軍事力で直接参入するとは思えない」と話していました。今回のライシ大統領の発言をどうみますか)
錦田教授:「イランはスローガンとして、ガザを支持する立場を示していると思います。ただ、実際に軍事的な関与をするかについては、イラン・イスラエル双方が核兵器を持っていると疑われていますし、イランは国内世論もあれている状態なので、実質的に戦闘に加わるとは考えられません」
(Q.今後、どのような展開が予想されますか)
錦田教授:「ガザに対する攻撃はますます強くなっていくと思われます。また、大規模な地上侵攻がどういう形で始まるか分かりませんが、一定のところでヒズボラが攻撃を強化することになれば、それがこの地域における大規模侵攻、そして、今後の第3段階への転換を示唆することになると思います」 (C) CABLE NEWS NETWORK 2023
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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