「武器提供できるのは北朝鮮のみ」ロシア異例の厚遇“宇宙基地”で首脳会談か(2023年9月12日)
北朝鮮の金正恩総書記が、日本時間12日午前7時半ごろ、ロシアに入りました。
12日午前、ロシア国営メディアが撮影したとみられる映像。ロシア国鉄の列車にけん引されて、緑の車体が現れました。金一族だけが使うことを許される特別列車です。行き先は、プーチン大統領が訪れているウラジオストクではありませんでした。
首脳会談の開催地は、あえて4年前とは異なる場所が選ばれたようです。
12日、北朝鮮メディアが報じた平壌出発の様子から見えてきたことがあります。見送りの声を送られているのは、ロシア訪問の随行者たち。その中に気になる顔ぶれがありました。特殊な経歴や肩書を持った軍の幹部3人。見えてきたのは、『潜水艦』『弾薬取引』『人工衛星』3つのキーワードです。
まず1人目です。先日、進水式が行われた新たな潜水艦。その開発の総責任者が、キム・ミョンシク海軍司令官です。鳴り物入りでお披露目された潜水艦ですが、発射管の大きさから、サイズの大きなSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)は搭載できないとみられています。
開発済みの2種類の大型SLBMに対応した原子力潜水艦の製造。これは金総書記の悲願であり、国防5カ年計画でも明記されたものです。すでに5年間という期日の折り返し地点を過ぎました。目標達成には「原子力潜水艦を保有するロシアの協力」が必要だと、北朝鮮が考えた可能性があり、そのための海軍司令官の同行かもしれません。
同行者3人のうち、もう1人も5カ年計画達成に欠かせない人物です。人工衛星の開発を行う宇宙科学技術委員会の委員長を務めているパク・テソン氏。
金総書記肝入りですすめられてきた軍事偵察衛星の開発ですが、打ち上げはすでに2回失敗し、もう後がありません。ロシアから衛星に関する技術供与を取り付けるためのパク・テソン氏。そう考えると、彼が同行するのもうなずけます。
そして、3人目は、軍需工業部長を務めるチョ・チュンリョン氏。北朝鮮内での弾薬製造を知り尽くす人物で、ロシアが求めているとされる“弾薬供与”の協議には必要不可欠です。
前回のロシア訪問時の随行者を見てみると、経済面に重点を置いた布陣で、軍事部門の幹部はごく少数でした。
韓国国防省:「軍部の人員が多数同行したことを考慮し、露朝間の武器取引、技術移転に関連した交渉が行われるか注視しています」
金総書記の特別列車は、ロシア沿海地方を北上しているとみられます。先にあるのは、潜水艦などの造船所や航空機工場があるハバロフスク州。さらに行くと、ロシアが国家の威信をかけて建設を進める『ボストーチヌイ宇宙基地』があるアムール州があります。
※手厚く迎える側のロシアには、どんな思惑があるのでしょうか。防衛省防衛研究所の兵頭慎治さんに聞きました。
その理由について「ウクライナ侵攻で、武器が不足しているロシアにとって、すぐに使える旧ソ連製の武器を大量に提供できるのは、北朝鮮のみ。そのため、宇宙基地での会談となれば、北朝鮮が求める“衛星技術”の開示に応える可能性がある」といいます。
兵頭さんは、プーチン大統領が、わざわざ金総書記のために移動し、国の重要な“衛星技術”を見せるとしたら、極めて異例だと分析しています。
ロシアが北朝鮮にすり寄るような動きについて、気になるのは中国ですが、中国はどのように見ているのでしょうか。
兵頭さんは「北朝鮮が、プーチン大統領に会うことを直前に中国に通達していた可能性が高い」としています。「ただ、ロシアからの“技術供与”が北朝鮮の核ミサイル開発に結び付く可能性がある以上、中国は、北朝鮮とロシアの接近の動きを好ましいとは思っていないだろう。反対はしていないが“静観”している段階」と話します。
一方で「中国は、これ以上、ロシアと北朝鮮との親密な“3カ国関係”は望んでいない」としています。
韓国メディアによりますと、ロシアのショイグ国防相が7月に北朝鮮を訪問した際、“中ロ朝合同演習”を提案したとされていますが、兵頭さんは、大規模な演習なら中国の参加の可能性は低いと分析しています。
ポイントは『アメリカとの距離感』。
ロシア・北朝鮮は、アメリカとの敵対関係にあります。中国は、アメリカとの関係を完全に断っていません。だから、中国はロシアに対する表立った支援はしてきませんでした。
兵頭さんは「中国の本音は、アメリカとの関係を完全に断ってまで、ロシア・北朝鮮と3カ国で協力したくはないだろう」としています。 (C) CABLE NEWS NETWORK 2023
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