“マッチョ介護士”介護とフィットネスの二刀流 人手不足に秘策「イメージ変えたい」【Jの追跡】(2023年9月9日)

“マッチョ介護士”介護とフィットネスの二刀流 人手不足に秘策「イメージ変えたい」【Jの追跡】(2023年9月9日)

“マッチョ介護士”介護とフィットネスの二刀流 人手不足に秘策「イメージ変えたい」【Jの追跡】(2023年9月9日)

ステージ上の、筋骨隆々の男たち。この日、行われたのは、筋肉の美しさなどを競うフィットネスの大会です。筋肉ムキムキの彼らには、意外なもう一つの顔がありました。それは介護施設で働く、その名も「マッチョ介護士」です。介護とフィットネスの二刀流で奮闘する介護士たちを追跡しました。

■利用者「筋肉あると安心」 希望者には筋トレ指導も

愛知県一宮市にある障がい者介護施設「atto」。利用者は「知的障害」や身体に障害を持つ人たちです。

3人の子どもの父、大胸筋が自慢の小森高幸さん(39)と入社1年目、さわやかな笑顔と三角筋が自慢の薄井拓也さん(23)。こちらの2人が“マッチョ介護士”です。

その自慢の筋肉で、楽々と利用者を持ち上げます。

薄井さん:「トレーニングで普段重いものを扱っているので、力の入れ方とか重心の取り方とかは分かっているので、利用者からも『筋肉あると安心できる』と」

施設では絵や工作など、日常的にアートに触れることで、利用者の自立を促しています。

食事の時は…。

薄井さん:「麺類とか献立にもよるんですけど、基本は義樹さん一人で(食べてもらう)」

あえて、何もせずに見守るのも介護士としての重要な仕事だといいます。

そして、希望者には筋トレの指導もします。

薄井さん:「3、2、1、オーケー!」
施設の利用者:「あ~キツイ。薄井さんは優しそうな声してますけど、めっちゃ厳しいです」

■「介護業界のイメージを変えたい」周囲に刺激も

マッチョ介護士を積極的に雇用しているのは、愛知県を中心に、障がい者向けの介護施設など20の事業所を運営する会社「ビジョナリー」です。社長は丹羽悠介さん(38)です。

マッチョに目を付けたきっかけは、介護業界が抱える深刻な人手不足だといいます。

丹羽社長:「(介護士を)カッコいい仕事にしたいので、だったら、もうすでにカッコいい人が仕事をしてくれれば『(介護士は)カッコいい』になるよなっていうふうに思って」

「介護業界のイメージを変え、多くの人材を集めたい」。そこで考えたのが「介護施設」と「フィットネスの実業団クラブ」の融合でした。

丹羽社長:「大会を目指して努力している人が近くにいると刺激的で、ポジティブなオーラとか空気が会社にすごく広がったなと」

■「筋トレは勤務」プロテイン代等も支給

この日、1カ月半後に行われる大会に向け、介護の仕事を終えた薄井さんと小森さんはトレーニングジムにいました。

3人の子を持つ小森さんは3年前、サービス業の会社から転職。学校にも通い資格を取って介護の仕事に就きました。

転職に不安を感じていたという妻も現在は…。

小森さん:「色んな手当とか待遇が受けられるので、それからは理解してもらえるようになりました。子どもは『頑張ってね』と言ってくれます」

実は、実業団チーム「7SEAS」に所属する介護士たちは、8時間の勤務時間のうち、2時間を筋トレにあてることができ、プロテイン代月2万円や大会の出場費用なども支給されます。

こうしたサポートもあり、介護スタッフ120人のうちマッチョ介護士はおよそ20人になりました。

■“マッチョ介護士”小森さん 訪問介護も行う

転職して3年、施設でいきいきと働く小森さんですが、利用者からも慕われる存在です。「筋トレを教えて」と言われることも多いそうです。

小森さん:「夏バキバキやね、これ。隆河くんも(大会に)出ようか、一緒に」
施設の利用者 隆河さん:「カッコいい人だなと、(トレーニングは)キツいけど。面白い方なので、僕は好きです」

また、小森さんは訪問介護も行っています。

小森さん:「まっすぐですね、もう1個ポールあります」

この日は、視覚障がい者の散歩の付き添い。男性は小森さんの太い腕をしっかりとつかみます。

訪問介護の利用者:「マッチョだけに安心できる。ちょっと(腕が)太いから、つかみにくいけど」

多い時は一日10件の訪問介護をこなすといいます。

小森さん:「全く同じ支援は1個もなくて、お昼だったら買い物とか調理とか、夕方はお風呂とか」

■会社の中心的存在・28歳リーダー 働いているのは…?

マッチョ介護士のリーダー・丹羽凌也さん(28)。体脂肪率3%、自慢は全身の造形美です。

丹羽さん:「今は4食同じメニューを食べていて」

食事は一日4食。ミキサーにかけた鶏むね肉に、シメジとネギを加え、塩コショウだけで味付けし、ご飯にのせた「特製鶏肉丼」。大会数カ月前からは、毎食がこの食事だといいます。

丹羽さん:「砂糖とかとると欲しちゃうんですよね、体が。そういうのを入れないように」

実業団制度にひかれ、5年前に建設業から転職、介護福祉士の国家資格もとり、今では会社の中心的存在になっています。

丹羽さん:「人事とか広報としての活動もやらせてもらっているので、学ぶことはいっぱいです」

そんな丹羽さんが働いているのは?

丹羽さん:「ここは精神障がいの方が、普段生活している場所」

7人が入居する障がい者専用住宅。重度の症状の人が多いため、24時間体制で、食事や入浴など生活のほぼすべてのサポートをしています。

丹羽さん:「やりがいの方が多いのかなと感じますね。ここは1日中、生活のことすべてに関われるので、そういった面では(利用者の)成長を感じられる」

■“神”助っ人登場 施設からは声援

大会のおよそ1カ月前、マッチョ介護士たちに強力な助っ人が登場します。

丹羽さんをコーチしている男性、実は数々の大会で優勝しフィットネス界のスーパースターといわれるエドワード加藤氏です。

ジムの一般利用者:「神様みたいな人」

この日は、筋肉をキレイに見せるポージングの指導をします。

エドワード加藤氏:「ここで力んじゃって、ひじがどんどん後ろにいっちゃう…それに気を付けて」

小森さん:「最高の状態でステージに立てるように、しっかりと準備していきたい」

大会前日、マッチョ介護士たちを見送ろうと、施設の利用者が集まりました。熱い声援に小森さんは…。

小森さん:「いやぁ、うれしいですね、スゴい」

■大会に400人が集結!筋肉美で勝負…結果は?

そして、いよいよ大会当日です。

司会:「選手たちに大きな拍手をお送りください!」

今回は会社が冠スポンサーを務める大会。全国から筋肉自慢の男女400人が参加します。個人戦やチーム力が試される企業対抗戦が行われます。

戦いを前に小森さんも真剣な表情です。

小森さん:「自分だけじゃなくて、会社のためにっていうのもあるので緊張はありますね」

今回、小森さんと新人の薄井さんが出場するのは、主に上半身の均整の取れた筋肉美を競う「フィジーク」部門です。

まずは、新人の薄井さん。

丹羽社長:「良いね良いね、拓也、今良いよ、その広がり方良いよ」

続いては、小森さん。渾身のポージングで審査員にアピールします。

果たして、結果は?

司会:「第2位…薄井拓也!」

薄井さんは見事、第2位ですが、小森さんは19人中7位でした。

薄井さん:「いやあ~悔しくて泣きそうです、正直。リベンジしたい」

小森さん:「結果は出なかったんですけど、次に向け取り組んでいきたい」

そして、リーダーの丹羽さんは、筋肉美に加えて全身の造形美、立ち居振る舞いが重視される「スポーツモデル」部門に出場します。

本人は残念そうですが、堂々の第2位でした。

そして、いよいよチーム力が重要な企業対抗戦です。

司会:「第1位に輝きましたのは…セブンシーズ、株式会社ビジョナリーさま」

マッチョ介護士チームの3人、見事1位に輝きました!

丹羽さん:「これを糧に、また頑張りたい」

小森さん:「あしたから普通に朝から支援がある。そういうものもあって、競技をやらせてもらっている。しっかり気持ちを切り替えて仕事をやっていきたい」

マッチョ介護士の二刀流の挑戦は続きます。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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