報ステ解説40年越しアルツハイマー薬米で承認その意義と課題は(2023年7月7日)

報ステ解説40年越しアルツハイマー薬米で承認その意義と課題は(2023年7月7日)

【報ステ解説】「40年越し」アルツハイマー“薬”米で承認…その意義と課題は(2023年7月7日)

日本の製薬大手『エーザイ』などが開発したアルツハイマー病の治療薬『レカネマブ』が、アメリカで正式に承認されました。
エーザイ・内藤晴夫CEO:「1日でも早く、1人でも多くの当事者様にお届けすべく全力を尽くす」

40年越しの承認となりました。

レカネマブは、アルツハイマー病の原因の一つ“アミロイドβ”というたんぱく質を取り除く薬です。

金沢大学の小野教授らが撮影した動画です。人工的に作ったアミロイドβが、繊維状に変化。これが認知症の発症につながります。今回の薬は、原因物質を取り除くことができる世界で初めて正式に承認された薬です。繊維状になる前に作用することで、病気の進行を3年ほど遅らせる効果が期待されています。

世界で5500万人を超える人が患う認知症。アルツハイマー病は、その6~7割を占めるとされています。日本では、2025年に認知症の患者数が700万人に達するとの推計もあります。効果的な薬の開発は、待ち望まれてきました。ただ、今回は、あくまで進行を防ぐもの。軽度の患者か、その前の段階の人が対象となります。

実際に利用するためには、ステップを踏む必要があるといいます。

記憶力を問う検査です。問診を経て、神経や記憶の検査。ここまでは“認知症かどうか”をみるものです。薬を利用するためには、「脳内にアミロイドβがどのくらい貯まっているか」をみる精密な検査が追加で必要となります。こうした検査は、保険が適用されないため、費用が高いのが現状です。
順天堂医院脳神経内科・波田野琢医師:「PET検査自体は非常に高い、薬剤も高い、機器も非常に高い。自費で合計30万を超える。これを保険診療でどこまで認めるかが、普及率に関わる検査は鍵になる」

とはいえ、一筋の希望になっていることに変わりはありません。薬の開発から携わり、国内で臨床試験を行っている池内教授は、こう話します。
新潟大学脳研究所・池内健教授:「今まで早期の方には必ずしも治療薬を届けられなかった。今回の薬によって、早期の段階で診断して、治療を行う重要性が増してくる。新しい作用を持った、最初の薬。これを契機に、こういう薬を使うときの医療体制を整備していく必要がある。今回の新薬の開発を通して、新しいタイプの、脳の原因にアプローチするような治療薬の開発が加速するだろう。今回はあくまで第一歩で、これをきっかけに、より多くの人に薬が届けられるような体制づくりが大事」

アルツハイマー病研究の第一人者、東京大学大学院・岩坪威教授も「非常に大きな意味を持つ」と話します。

アルツハイマー病は、脳の神経細胞が失われ、認知機能が徐々に低下していく病気ですが、その原因となるのが、2つのタンパク質です。神経細胞の外にたまる“アミロイドβ”。これが先にたまって症状を起こす引き金となります。そして、神経細胞の中にたまる“タウ”。アミロイドβに誘発されて遅れて出てきて、細胞を中から死なせます。

今回、アメリカで承認された『レカネマブ』は、アミロイドβをターゲットにしたものです。アミロイドβは、元々は脳内でつくられ排出されますが、年を取るほどたまりやすくなり、神経細胞に影響を及ぼします。レカネマブは、その塊に抗体としてくっついて除去。これにより病気の進行を遅らせることができるとのことです。一方で副作用も報告されていて、脳のむくみが約13%、脳内出血による重篤な症状が約0.7%とのことです。

レカネマブは、“軽度認知障害”から“認知症初期”で効果が認められました。ただ、アミロイドβ自体は、もっと前からたまっているそうです。症状が顕著になる時期からさかのぼると、20年ほど前から、アミロイドβはたまり始めています。岩坪教授によりますと、60代で1割、70代で3割、80代は半数の人にアミロイドβが蓄積しているといいます。

「PET検査」で、アミロイドβがどのくらいたまっているのかわかるといいます。順天堂医院の場合、アミロイドβのPET検査は保険適用外のため、30万円ほど費用がかかるとのことです。

エーザイは7日の会見で、日本でも“9月までには承認を得たい”との考えを示しています。

気になる費用ですが、アメリカで1月に“迅速承認”された際は、日本円で約350万円でした。今回、正式承認後の費用はまだわかりませんが、アメリカでは、高齢者向け公的保険の適用が見込まれています。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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