スカイバス儲け度外視全国展開の狙いコロナ禍から復活苦境バス会社の奮闘Jの追跡(2023年7月2日)

スカイバス儲け度外視全国展開の狙いコロナ禍から復活苦境バス会社の奮闘Jの追跡(2023年7月2日)

「スカイバス」儲け度外視 全国展開の狙い…コロナ禍から復活 苦境バス会社の奮闘【Jの追跡】(2023年7月2日)

外国人観光客にも大人気、屋根がないオープンデッキの2階建てバス。今、全国各地に新ルートを拡大しています。

そんな“絶景バス”を、コロナ禍からの巻き返しの起爆剤にしようと奮闘する地方のバス会社。高さ13メートル、圧巻の「雪の回廊」を走るツアー。果たして、その行方は…?

■「スカイバス」全国展開には“ある狙い”

ポルトガル人:「とてもすてきな旅になったわ」「まるで、夢の旅行よ!」

コロナ禍で一躍脚光を浴びた、2階建てオープンデッキの「スカイバス」。東京タワーや、レインボーブリッジを巡る定番ツアーに加え、今続々と新規ルートが登場しているのをご存じでしょうか?

ツアー参加客:「普通は行けない所に行ける」「滑走路内に入れるのが魅力」

成田空港の非公開エリアを巡るバスツアーでは、世界各国の特色溢れる飛行機を間近で見学できるのはもちろんのこと…。

ツアー参加客:「あっ来た来た、ほら!着陸するアレ!」

迫力満点!屋根がないからこそ、目だけでなく五感で楽しめるのが魅力なのです。

ツアー参加客:「うわぁ。スゴイ、スゴイ!」

爆音も、生で感じられるのも醍醐(だいご)味です。

ツアー参加客:「音が直接聞こえる。迫力がありますね」

さらに、星野リゾートのラブコールでスタートしたのが、青森県・奥入瀬渓流を走るバスツアーです。

まるで「緑のトンネル」。国立公園にも指定された、長さ14キロの渓流沿いを往復するツアーは、開始わずか3年で、1万5000人もの利用客が訪れました。

見どころは、20メートルの高さから流れ落ちる滝や、車道脇ギリギリにそそり立つ巨大な岩肌など、絶景の数々です。

星野リゾート奥入瀬渓流ホテル 掛川暢矢総支配人:「高いところから見るからこその視点を楽しむことができるので、私たちにとっても感謝感謝のバス」

実は、この全国展開には“ある狙い”があります。

スカイバス運行会社 日の丸自動車興業 代表取締役 富田哲史副社長:「観光は、一地域が盛り上がっても、よくない。相互に人が行き来して、初めて観光って成立する。地域が盛り上がるというものに対して、何らかの役割を担いたい」

それは、スカイバスによる「地域貢献」です。

全国のバス会社が手軽にツアーを企画できるよう、実は儲けを度外視した価格で貸し出しているといいます。

しかもツアーの収益は、すべて運行を担う地元バス会社の元へ。地方の観光だけでなく、地元バス会社の収益アップも狙いだったのです。

■運行予定7便のうち5便が“出番なし”

その一つが、高さ13メートルの雪の回廊を走る富山県の「立山黒部アルペンルート」です。

世界有数の豪雪地帯として知られるこのエリア。封鎖されている冬の間に積もった雪を除雪した結果生まれたのが巨大な雪の壁、通称「雪の大谷」です。

まるで雪の亀裂。500メートルのルートを往復15分で走行。迫り来る雪の迫力を目と鼻の先で体感できる、5月開催の10日間限定ツアーなのです。

「白の背景に、赤はすごく映える」と語るのが、運行を担当する「富山地方鉄道」のバスガイドさん。3年前にこのツアーがスタートしたものの、コロナ禍で客もガラガラ。

しかし今年は、インバウンド客も回復し、ターミナルも混雑しています。今年こそはと、気合十分です。

バスガイド:「(Q.今年は人が戻ってきた?)戻ってきた感は、あります!全然違います。入り乱れ!」

果たして、お客さんは…なんと、わずか2組3人。その次の便も1組でした。さらに…。

バスガイド:「えっ!午後1時30分(出発便)も!?あらまぁ残念。乗客ゼロだって。ダメだった…もうヘタレになりそうやわ」

これほど観光客がいるのに…さすがに意気消沈でした。

その後、声を上げて必死に呼び込みするも…。

バスガイド:「皆団体ツアーだから。団体客は旗の下に連れられていくしかない。予定が決まっているから」

アルペンルートを訪れる大半は、外国人の団体ツアー客。旅行プランや移動スケジュールがきっちり決まっているため、急なツアーには参加しにくいのです。

バスガイド:「(Q.もう最終便ですね)ねえ、もう本当にねぇ…もうダメやわ」

結局この日、運行予定7便のうち5便が出番なし。乗客は、たったの5人でした。

客が来ない理由の一つが、事前の「PR不足」。呼び込みも、ガイドが兼任。チラシ配りもなく、宣伝は看板1つのみです。

しかし、そこには“切実な理由”がありました。

■“慣れない仕事”の連続に…戸惑いも

地元の富山県で、路線バスや観光バスなどを運行する「富山地方鉄道」。営業所では、“ある問題”に悩まされていました。

富山地方鉄道 営業所 中松清孝所長:「一番大変なのは、コロナ禍で多くの仲間が辞めた。約20人(が退職)」

バス運転手:「原因は、お金が稼げないから、辞める。(給料が)安いもん」「もう、生活がやっていけない」

全国的な課題となっている「ドライバー不足」。このバス会社も、コロナ禍で20人のドライバーが退職。そのあおりを受けているのが、バスガイドさんたちでした。

バスガイド:「ガイドじゃなくて、違う職種で働きなさいということで『運行管理』」

安全にバスを走らせるための指示をドライバーに送る業務「運行管理」。通常、ドライバー経験者が担いますが、人手不足のため、その穴をバスガイドが資格をとって、埋めているのです。

時には、こんなこともあります。運転手のシフト表を貼り替え忘れるミスでした。

慣れない仕事の連続に、戸惑いもあるといいます。

バスガイド:「コロナがなかったら、運行管理をやることもなかったので。ちょっとつらいなと、思ったこともある」

■最後の週末…“応援部隊”も駆け付け

人手不足に悩むなか、起死回生の一手として期待されたバス企画。果たして、どんな結果になるのか?

快晴で迎えた、「雪の大谷ツアー」最後の週末。すると、所長を含めた3人の応援部隊が駆け付けていました。

中松所長:「少しでも知ってもらうために、パンフレットを配ろうかと」

管理職総出で、休日返上のチラシ配り。こうした地道なPR活動すら、人手不足でできなかったのです。

場所も、これまで配ったことのないターミナルの外へ。狙いは、時間的にゆとりのある個人客です。

さらには、一同勢ぞろいでバスのお見送りも。できることは、すべてやります。

バスガイド:「(Q.(応援部隊は)強い味方?)そうですね。もっと、早く来てくれれば良かった」

そして、地道にチラシを配り続けていると…。

富山地方鉄道 営業所 林裕一副所長:「本日、スカイバス運行してます。どうぞ」

客:「さっき、買いました!」

林副所長:「うれしいですね」

果たして、休日返上のチラシ配りは、実を結ぶのか?すると、満員ではないものの多くの利用客がいます。

目前に迫り来る13メートルの雪の壁に、皆さん大興奮。この日は7便すべてが運行。合計55人の乗客が、雪の壁を満喫しました。

ツアー参加客:「(雪の)高さが間近に感じられたので、迫力がありました」

ツアー終了後、スカイバス運行会社のスタッフが、所長の元へ。まだまだ課題は残しつつも、早くも次の戦略を確認し合いました。

中松所長:「アルペンルートに立って分かったのが、(団体ツアーの)添乗員に興味を示してもらって、大きな広告看板を“お金を掛けてでも”作らないとダメ」

スカイバス運行会社 日の丸自動車興業 久田直哉さん:「都内では味わえない環境でのスカイバス運行なので、ご協力頂けるとありがたいです」

中松所長:「本当に感謝ですよ」

コロナ禍からの巻き返しは、始まったばかりです。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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