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陸前高田 被災家族12年の軌跡…年の差12歳 兄妹の絆(2023年6月11日)
東日本大震災の津波で家族を失った父親と息子の12年間です。当時1歳だった息子は中学生になり、新しい家族もできました。私たちが見つめてきた12年間の軌跡です。
■陸前高田で生きる 残された父子
東日本大震災の被災地・岩手県陸前高田市。即位後、初めて被災地を訪れた天皇皇后両陛下が津波に流されずに残った「奇跡の一本松」などを視察されました。
震災から12年。あの日の悲しみから立ち上がろうと、懸命に今を生きる家族がいます。
天皇皇后両陛下を迎える人々の列。そこに加わるのは小鎚潤一さん(39)。抱っこしているのは娘の陽心ちゃんです。今月で2歳になる陽心ちゃんはやんちゃ盛り。父・潤一さんにとって震災後に生まれた大切な家族です。妹の面倒を見る兄・悠陽さんは中学2年生。私たちは小鎚さん家族の12年間の軌跡を見つめてきました。
■妻とまだ見ぬ娘 一瞬で奪った津波
2011年、東日本大震災で陸前高田市ではおよそ1800人が犠牲となりました。
当時、妻・有花さんのおなかには2カ月後に生まれるはずの命が宿っていました。津波は一瞬にして愛する妻と生まれてくる娘の命を奪い去りました。残された希望は、当時1歳だった悠陽さんでした。潤一さんはシングルファザーとして子育てに奮闘します。ただ、母親がいない寂しさも見せます。
■残された父子に新たな家族
そして、月日は流れ、新たな家族が。兄妹がいなかった悠陽さんに可愛い妹が誕生。12歳離れた陽心ちゃんです。
小鎚潤一さん(当時37):「“あたたかい心”で『陽心』なので、悠陽と同じ優しい子に育ってほしい」
4年前、父が同い年の希望さんと再婚し、お母さんと妹ができたのです。この日、被災地を訪問中の天皇皇后両陛下を家族4人で迎えます。すると、すぐ目の前を両陛下の乗った車が…。
小鎚潤一さん(39):「本当にちょこっとですけど、いつもテレビで見ているのとちょっと違いますよね。雰囲気が」
兄・悠陽さん(13):「初めて見て、テレビでもあまり見たことがないからこんな人なんだと思いました」「(Q.なかなかない経験)多分、ない」
はにかみながら答える兄の悠陽さん。妹・陽心ちゃんとはどのように接しているのでしょうか?
帰り道、お父さんの肩車で遊ぶ陽心ちゃん。すると、眼鏡を取ってしまいますが、兄がすかさずフォロー。仲睦まじい姿が。
ただ、これまでの道のりは決して平坦ではありませんでした。
■息子は中学生に 戸惑いつつ成長
1年前、地元の中学校に入学した悠陽さん。津波で亡くなった母親に新たな門出を報告していました。
兄・悠陽さん(当時12):「(Q.なんて伝えた?)『行ってきます』って。友達とかも知らない人もいるけど、ちゃんと仲良くして勉強とか運動も頑張るって」
思春期を迎えた悠陽さんは妹ができて、うれしい反面、戸惑いも感じていました。
兄・悠陽さん(当時12):「少し複雑な気持ち。あんまり言葉で表せないけど…どうなんだろう。少し驚いているとか、分からなくなったとか(妹に)どう接したりすれば良いのか」
新たに増えた家族とともに悠陽さんは戸惑いながらも兄として少しずつ前へ進んでいきます。
一方、妹の陽心ちゃんはすくすくと育っていき、雪の上でも1人で歩けるように。お母さんの心配をよそに好奇心旺盛です。
亡くなった家族が見守るなか、12歳離れた兄と妹、兄妹2人の絆も日に日に深まっています。とはいえ…まだまだ妹をあやすのはひと苦労。お母さんの子育てを間近で見て学んでいます。
「妹に、どう接してよいか分からない」と言っていた悠陽さん。お母さんに代わって妹の面倒を見る時間も増えてきました。泣きながら部屋を動き回る陽心ちゃんの後を追って見守っています。
■葛藤した父 何げない日常に感謝
津波で家族を失い、ずっと葛藤し続けてきた、父・潤一さん。今は何げない日常があることに感謝しているといいます。
小鎚潤一さん(39):「やっぱり妻がいて、子育ては本当にしやすい。悠陽の時と比べたら本当に心に余裕がある生活ができている。悠陽のお母さん(有花さん)は心に引っ掛かっているけど、僕らは生きているので、亡くなった家族の分まで一生懸命、生きなくてはいけないと思っている。いつまでも悲しい思いをしていて、ずっと何もしないわけにはいかない。そういう気持ちの変化はあったと思う」
■息子は中学2年に テニスを通じて成長
4月から中学2年生になった兄・悠陽さん。テニス部の一員としてダブルスの公式戦に挑みます。父・潤一さんも応援するなか、内気だった少年はテニスを通じて感情を表に出すように。お父さんもうれしそうです。残念ながら、試合には負けてしまいましたが、本人は自分自身の成長を感じていました。
自宅に帰ると、すぐに食事のお手伝い。2歳になる陽心ちゃんの誕生日祝いです。悠陽さんは兄としての自覚が芽生えてきたようです。
兄・悠陽さん(13):「親だけにやらせるのではなくて、自分もちょっとずつ陽心の妹の世話をもっとやっていきたい。お兄ちゃんとしてはもっとできることを増やしたい。これからもっと好かれるようになりたい」
■「健康でいて」家族失った父の願い
そして、親が願うのは子どもたちが健やかに育つこと。
母・希望さん(38):「悠陽は今、部活を頑張ってやっていて、そのまま一生懸命やってもらって、進学すれば、その次、大学とか専門学校とか行くと思うのでそれまでに色々と頑張って何かできる人になってほしい。陽心はいっぱい食べていっぱい遊んで大きくなってほしい」
小鎚潤一さん(39):「健康でいてほしいのが一番。どうしても陽心の成長に伴って悠陽は親元から離れてしまうので、悠陽の成長は悠陽の成長。陽心の成長は陽心の成長。親として対応していけたら良い」
この先、兄妹がどんな成長を遂げるのか目が離せません。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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