【報ステ解説】事件を主導したのは…「私ははめられた」ロシアで軍事ブロガー爆殺(2023年4月4日)
サンクトペテルブルクのカフェで起きた爆発事件をめぐり、ロシア当局は、トレポワ容疑者(26)が連行されていく様子を公開しました。
ダリヤ・トレポワ容疑者(26):「(Q.なぜ拘束されているか分かる)分かっています。(Q.なぜだ)タタルスキー氏の殺害現場にいたから。(Q.何をしたんだ)爆発した胸像を持っていきました」
今回の爆発で、軍事ブロガーのタタルスキーさん(40)が即死、重軽傷は40人に上ったと発表されています。トレポワ容疑者がなぜこのような事件に関わることになったのか、詳しいことは分っていません。
トレポワ容疑者は事件の翌日、友人の家にいるところを拘束されました。捜査機関は即座に、その様子を公開しています。ただ、拘束された時「はめられた。私は利用されたんだ」と話していたといいます。
ロシア大統領府、ペスコフ報道官:「ウクライナの特殊機関が、このテロ行為を企てた可能性があるとの情報がある」
一方のウクライナは…。
ポドリャク大統領府顧問:「ロシアで始まった。クモは瓶の中で、互いを捕食し合う習性がある」
トレポワ容疑者は、ロシアの反体制派指導者の支持者で、デモに参加したことによる逮捕歴があります。一方の殺害されたタタルスキーさんは、著名な軍事ブロガーで、軍事会社のワグネルと非常に近い人物でした。事件の起きたカフェもワグネル関連のお店です。
タタルスキーさんは最近、軍上層部を批判していたといいます。
英イブニングスタンダード紙:「事あるごとに、軍部の戦争の進め方を批判していた。それが暗に、政権批判として受け止められた可能性がある」
事件は一体、誰が何のために仕掛けたのか。ワグネルの創設者は事件をこのように見ています。
軍事会社『ワグネル』創設者、プリゴジン氏:「ウクライナ政府を非難するつもりはない。政府と無関係な過激派のグループがいるのだろう」
【犯行は誰が主導?】
逮捕されたトレポワ容疑者は“反プーチン派”だったという話も出ています。誰による犯行だったのか。防衛省防衛研究所の兵頭慎治さんに聞きます。
兵頭さんによりますと、事件を主導したのは『反プーチン派』『“クレムリン”』この2つの可能性が考えられるといいます。
大きく分けて、ロシア国内には『親プーチン(戦争推進)派』『反プーチン派』があります。
親プーチン派のなかには、ウクライナ侵攻や核の使用を強硬に推し進める『強硬派』もいて、そのなかには、ワグネルの代表プリゴジン氏や、今回の爆発事件で亡くなったタタルスキー氏も入ります。タタルスキー氏はプリゴジン氏に近い人物で、ウクライナ侵攻に対して、強硬派の立場から批判をすることもあったといいます。
プーチン氏そのものに反対する反プーチン派には、反体制派の指導者ナワリヌイ氏や、今回の事件で身柄を拘束されたトレポワ容疑者もここに含まれるとみられます。
(Q.複雑な状況ですが、反プーチン派の犯行とはどういうことですか)
兵頭慎治さん:「事件の真相が明らかでないので、断言はできませんが、トレポワ容疑者も反プーチン派とみられているので、反プーチン派が主導した可能性が濃厚ではないかと思います。強硬派のなかでも、戦況が好転しない現状に対する不満が強まっていて、意見対立が先鋭化しているという見方があります。ウクライナ政府は、こうした内紛が事件を呼び起こしたと主張しています。こうした内紛に乗じて、反プーチン派が犯行を行う余地が出てきました。深読みをすると、内紛に見せかけて反プーチン派が犯行を行った可能性があるという指摘もあります。そもそも、親プーチン派、強硬派が一枚岩で団結していれば、国家統制の強化を行っているロシアで、こういう事件は起こりにくいはずです。プーチン大統領が国内のコントロールをできていないとすれば、プーチン政権のほころびが強くなってきたという見方もできます。ロシア政府は、反プーチン派がやったが、その背後にはウクライナ政府が関与していると指摘しています」
(Q.プーチン政権が国内のコントロールをできなくなっているということですが、“クレムリン”が主導した説は、どういうことですか)
兵頭慎治さん:「アメリカの一部メディアなどが、この見方を伝えています。プリゴジン氏やタタルスキー氏は、戦争がうまくいかないなか、ロシア軍のみならず、プーチン政権に対する批判を強める動きを進めています。今回事件が起きたのは、プーチン大統領の出身地であるサンクトペテルブルクで、プリゴジン氏が関与したとみられるカフェです。ワグネルの本拠地もサンクトペテルブルクだということです。強硬派の必要以上の政治的影響力を抑える狙いが、クレムリン側にはあるという指摘があります。プリゴジン氏は今回の事件について『ウクライナ政府を非難するつもりはない。政府と無関係なロシア国内の過激派グループがいるのだろう』と、クレムリンや、それに近い勢力の関与を示唆する発言をしています。仮にクレムリンが関与したのであれば、プリゴジン氏など強硬派の発言力を抑え、反プーチン派が行ったとすることで、反プーチン派も抑えられる、一挙両得の狙いがある可能性もあります」
(Q.仮に“クレムリン”が主導したとしたら、プーチン大統領は焦っているということになりますか)
兵頭慎治さん:「プーチン政権が発足した2000年当初、テロ事件が頻発しましたが、その一部は、クレムリンの自作自演という見方が有力です。ロシア国内で危機感をあおりながら、プーチン大統領への支持を高めていきたい。そうしなければ、来年3月の大統領選挙で圧勝することができない。ある意味で、プーチン大統領が政治的に追い詰められているという見方もできます」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
コメントを書く