広島の「お好み焼き」が中東・ヨルダンへ…現地では大盛況 日本とつなぐ“架け橋”に(2022年12月16日)

広島の「お好み焼き」が中東・ヨルダンへ…現地では大盛況 日本とつなぐ“架け橋”に(2022年12月16日)

広島の「お好み焼き」が中東・ヨルダンへ…現地では大盛況 日本とつなぐ“架け橋”に(2022年12月16日)

 広島の“ソウルフード”お好み焼きが、中東・ヨルダンで振舞われた。お好み焼きが両国をつなぐ“架け橋”になるかもしれない。

■なぜヨルダンに? 駐日大使に聞く

 広島駅近くにある、お好み焼き店「いっちゃん」。地元で愛される、定番の「肉玉そば」は、ミシュランガイドのお墨付きだ。この店にある日、1本の電話が掛かってきた。

 お好み焼き「いっちゃん」店主・市居馨さん(68):「ヨルダン大使館から、大使がぜひこちらに来られるから、お会いしたいと。時間を作ってくれということをおっしゃって」

 去年8月6日、広島原爆の日の記念式典に出席後、リーナ・アンナーブ駐日ヨルダン大使が、市居さんの店を訪れた。

 なぜ、大使はお好み焼き店を訪ねたのか?アンナーブ駐日大使に話を聞いた。

 アンナーブ駐日大使:「私は、お好み焼きが、広島の大衆文化の非常に重要なポイントであることを理解しました。そこで、市居さんのお店に行って、お好み焼きを食べようと思ったのです。とてもおいしかったです」

■宗教・文化の壁「豚肉が使えない」

 ヨルダンの人にも、この味を知ってもらいたいと思った大使は、市居さんにヨルダン行きを依頼。市居さんはこれを承諾し、9000キロ離れた異国の地に向かうことに。しかし、市居さんには、大きな壁が立ちはだかる。

 市居さん:「ハラルを意識してもらうと、一番よく分かるんだけど。豚肉が使えない、油は全部オリーブオイル。そういう違いは、結構大きいですからね」

 宗教や文化の違いだ。ヨルダンは、ほとんどの人がイスラム教徒。そこで、市居さんは豚肉の代わりに鶏肉を使用することに。

 また、広島のお好み焼きに欠かせない「そば」は、現地で調達しにくいため、パスタで代用した。さらに、こんな工夫も…。

 市居さん:「向こうの人はよく、ニンニクを食べられるので、スライスもちょっと使ってあげる」

 試行錯誤の末、1カ月以上かけて完成したのが、“ヨルダン風お好み焼き”だ。果たして、ヨルダンの人たちに受け入れられたのか?

■“ヨルダン風お好み焼き”評判は?

 中東ヨルダンのイベント会場に、広島でお好み焼き店を営む市居さんの姿があった。

 イスラム教徒でも食べられるようにと考案した“ヨルダン風お好み焼き”。

 その味は、キャベツがとても甘く、むね肉なので、すごくさっぱりしているが、濃い目のソースと合わさって、おいしく感じる。パスタは、すごくモチモチしている。

 通常よりも優しい味付けになっているという“ヨルダン風お好み焼き”。現地では、受け入れられたのか?

 アンナーブ駐日大使:「ヨルダン人は非常に興味をもって、お好み焼きがすごく好きになりました。その反応は実際、私の予想も超えていました」

 市居さん:「皆『パーフェクト、パーフェクト』って言うんです」

 買い求める客が殺到し、行列ができるほどの大盛況ぶりだったという。また、あまりのおいしさに「自分も作りたい」と、弟子入りを志願した人までいたそうだ。

 アンナーブ駐日大使と市居さんから共通して聞こえてきたのは、「お好み焼きが日本とヨルダンの懸け橋になってほしい」との思いだった。

 市居さん:「一般家庭まで広がるようなことがあれば、広島とヨルダンの距離というのは近付くし、これほど良いことはないだろうと。もう、それは夢でしたね」

 アンナーブ駐日大使:「食べ物を分け合うなどして、人々が団結する。これが食べ物から学べる非常に興味深い部分だと思います」

■お好み焼きから“悲劇”を国民に…

 なぜ駐日ヨルダン大使は、広島のお好み焼きをヨルダンで広めようとしたのか見ていく。

 北海道とほぼ同じくらいの国土で、中東に位置するヨルダン。人口はおよそ1010万人で、その内、イスラム教徒は9割以上に上っている。

 また、ヨルダンは、イラクやシリア・パレスチナから紛争などを理由に多くの難民を受け入れている。なかでも国連の機関によると、パレスチナ難民は230万人以上いるという。

 そんなヨルダンに広島のお好み焼きを伝えることになったきっかけは、お好み焼き誕生の背景にあった。

 にっぽんお好み焼き協会によると、広島のお好み焼きは終戦直後、米や麦などが不足した時に限られた小麦粉を薄く敷き、焼け跡に残った鉄板で焼いて、皆で分け合って食べたことがルーツとされている。

 アンナーブ駐日大使は、「原爆投下後、広島の人々が何もない状態からお好み焼きを作り上げ、街を復興させた歴史に強く心を動かされた」といい、お好み焼きを通じて広島で起きた悲劇をヨルダン国民に知ってもらいたいと背景を語っている。

■日本とヨルダンで“食べ物外交”も

 こうした思いに、企業も賛同し動き出している。

 今回同行した、広島市に本社を置くオタフクソースの海外営業部の吉田智哉さんによると、「ヨルダンはイスラム教徒が多いので、豚肉などの動物由来の材料を使用していないソースを使った」という。

 現地の方からは「甘くておいしい」と好評で、ヨルダンでも買えるようにしてほしいとの声もあったそうだ。

 オタフクソースは今後、ヨルダンでの展開も視野に入れているという。

 今後について、アンナーブ駐日大使は、「食事を分かち合うことは、人々にとって究極の平和のシンボルであり、究極の友情のシンボルです。『お好み焼き』が『日本の大使』になることができると思っていて、日本とヨルダンの間で“食べ物外交”といえるものができます」と、両国をより結び付けることにつながると話していた。

(「大下容子ワイド!スクランブル」2022年12月16日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

ANNnewsCHカテゴリの最新記事