【報ステ】被害拡大の要因『キラーパルス』とは?死者4.2万人 トルコ大地震から10日(2023年2月16日)
トルコ南部で起きた大地震で、建物の倒壊などによって亡くなった人が4万2000人を超えるなか、発生から10日立った今も懸命な救出活動が続いています。
そして、甚大な被害をもたらした今回の地震が、どういうものだったのか。少しずつ見えてきました。
震源から北に数十キロ離れた場所では、地面が割れ、道路が陥没していました。
東アナトリア断層は複数の区間に分けられていますが、少なくとも4区間が同時に、200キロの長さにわたって、2~4メートルの断層が動いたと言われています。
衛星画像を分析した専門家たちはこう話します。
衛星画像分析専門の東京大学大学院・渡邉英徳教授:「ここに地割れ、大きいのができている。終わりかなと思うわけですよね。ずっとたどっていくと、止めどなく続いている感じ」
地割れ部分、地表に出た断層は27キロに及ぶといいます。
活断層調査専門のパスコ防災技術部・小俣雅志副部長:「横ずれに典型的な雁行(がんこう)配列。それで連続していく。一本で来るんじゃなくて、横ずれなので、横ずれで典型的な形だと」
被災地では救助が難航している場所も多く、どこまで死者数が伸びしまうのかは分かりません。
ある男性は3日間、下敷きになった娘の遺体の手を握り続けました。
娘(15)を亡くした男性:「母、兄2人、義姉、めいっ子、私の娘を含め、7人ががれきの下で亡くなりました。娘を失うとは本当に悲しいことです。両親や兄弟姉妹を亡くすことも、もちろん悲しいですが、子どもを失ったことが一番悲しい。全く種類の違う悲しみです」
その一方で、発生から10日が経った16日も、女性(17)が助け出されました。248時間、がれきの中で生き続けたことになります。
女性(17)の親族:「救助隊の皆さんに感謝します。特に鉱山労働者の皆さんありがとう。経験と知識をもとに、とても頑張ってくれました」
15日にも数人が救助されました。母親と子ども2人が同時に助けられたケースもあります。
年齢は10代だったり70代だったりバラバラですが、女性が多いのが特徴です。理由は分かりません。
ただ、アメリカの医学者は、気温が氷点下にもなるなか、200時間以上を生き抜いた人たちがいることについて、こう分析しています。
グプタ医学博士:「データは少ないが、寒さは両刃の剣になり得る。極寒に襲われる一方で、体は水分補給を求めなくなる。そのことが人の命を救った可能性はある」
【“キラーパルス”で被害拡大か】
甚大な被害が明らかになるなかで、建物の被害が拡大したのには、今回の地震に特徴的な要因があるという研究結果もあります。
多くの建物被害をもたらした要因の一つに考えられているのが「キラーパルス」と呼ばれるものです。
これは、トルコの地震計のデータを解析した、愛媛大学・森伸一郎特定教授が指摘しています。
地震の揺れには『周期』つまり1回に揺れる時間の間隔があり、1回の揺れが1秒未満、1~2秒間隔、それ以上の長いものに分かれます。
長く揺れる場合は、高層ビルが大きく揺れると言われています。
キラーパルスは、1~2秒間隔で揺れる周期のことで、低層から中層の建物に影響が大きくなります。
耐震性の違いから、日本では特に木造家屋などの低い建物、トルコの場合は10階前後の鉄筋コンクリートの建物に被害が出やすかったとみられます。
(Q.なぜ「1~2秒間隔の揺れ」になると、低い建物が影響受けるのでしょうか?)
森教授によりますと、建物には、1回揺れて元の位置に戻るまでの時間『固有周期』があり、地震の揺れの周期と一致すると、建物の揺れが増幅される『共振現象』が生まれるため、キラーパルスでは低い建物が影響を受けるということです。
(Q.地震が大きいほど、キラーパルスは発生しやすいのでしょうか?)
森教授によりますと、キラーパルスの発生でポイントとなるのは“地震の規模”ではなく、“震源の場所・深さ・距離”です。
キラーパルスは、震源が陸地で浅く(20キロより浅い場合など)、震源に近い場所で発生しやすいということです。
日本でキラーパルスの被害があった地震は、1995年の阪神・淡路大震災、2016年の熊本地震。どちらも震源が浅く、陸地に近い場所でした。
これらよりもマグニチュードが大きかった東日本大震災は、震源が陸地から遠かったため、キラーパルスの影響はなかったということです。 (C) CABLE NEWS NETWORK 2023
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