【戦闘機供与を要請】欧州に直訴“ウクライナ危機感”カギ握る電子戦◆日曜スクープ◆(2023年2月12日)
戦闘機供与の要請を巡り、欧州を舞台に積極外交を展開する。ゼレンスキー大統領は、昨年2月の侵攻開始以来、昨年12月の訪米に続き、8日に英仏を訪問した後、9日にベルギー・ブリュッセル入りした。ゼレンスキー大統領は8日、スナク英首相と会談後、議会演説で、“自由のための翼”が必要と主張し、戦闘機供与を要請した。スナク首相は「全ての軍事支援が検討対象だ」と戦闘機供与に含みを持たせ、供与の可能性についてウォレス国防相に調査を指示した。次の訪問先のパリでは、ゼレンスキー大統領は、マクロン仏大統領とショルツ独首相と会談、戦闘機供与を柱とする軍事支援の強化を求めた。ゼレンスキー大統領は、「より早く戦闘機を得て、より早くロシアによる侵略を終わらせられれば、欧州の平和を取り戻すことができる」と述べ、「時間がない」と訴えた。一刻も早い戦闘機の供与を求めるウクライナの姿勢について、慶応大学の廣瀬陽子教授は、「早急な戦争終結を実現しない限り、死者が増え、インフラ攻撃も終わらない」とウクライナが抱く危機感の背景を分析する。
圧倒的な航空戦力を誇るロシアは、戦闘爆撃機「スホーイ」や戦闘機「ミグ」など1188機を保有しているのに対し、ウクライナは、わずか61機と格差が確認される。ロシアは航空優勢を確保し、攻撃を行えば効率的な戦闘が可能となるが、両軍の地対空ミサイルが機能する中で、戦闘機による攻撃が困難なことから、両軍ともに航空戦力が活用できていない。この状況下で、ウクライナが戦闘機供与を強く求めるのはなぜか。戦闘機供与はロシアの暴挙を加速させるリスクをはらむだけに、慎重論が根強い。バイデン米大統領は1月30日、ウクライナに対して米国製のF16戦闘機を供与しないと明言した。F16戦闘機は対地攻撃と対空戦闘が可能な多用途戦闘機で、現在、25カ国で約3000機が配備されている。F16戦闘機は各国で大量に普及している事情に加え、部品の調達、整備・修理などインフラ面での有用性が高いと評価を得ている。だが、西側諸国がウクライナに戦闘機供与の承認をしたとしても、長期間を要するパイロット育成の訓練が大きな壁となる。
今後の戦闘で重要となるのが「電子戦」の展開と、防衛省防衛研究所の高橋杉雄氏は指摘する。防衛白書によると、電子戦は電磁波を使い、陸・空・海から通信やレーダーを妨害し、敵の部隊の指揮統制を阻む戦闘を指す。日本でも電子戦を行う部隊が配備されている。中でも、SEAD、敵防空網制圧は、制空権を確保するうえで鍵となる。SEADは、味方の航空機が攻撃を回避するために、前もって敵の防空網を機能不全に陥れる米国が誇る戦術の一つで、湾岸戦争で使用された実績がある。
西側諸国は当初、主力戦車をウクライナに供与することを躊躇していたが、最終的に承認に至った。ウクライナ政府は戦闘機供与の要請を強めているが、現在、欧米首脳は慎重な姿勢を打ち出している。主力戦車と戦闘機のウクライナへの供与を巡る構図は類似するが、戦闘機供与の承認という結果を導く可能性はあるのか。高橋氏は「戦車の時のように、戦闘機も供与に向けていく流れとなる。F16戦闘機は米国製であることから、関係国から米国包囲網が強まる」と今後の推移を分析する。
★ゲスト:高橋杉雄(防衛省防衛研究所)、廣瀬陽子(慶応大学教授)
★アンカー:杉田弘毅(共同通信社特別編集委員)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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