【独自取材】新証言と新映像から見えた梨泰院雑踏事故の“全貌”(2022年12月24日)

【独自取材】新証言と新映像から見えた梨泰院雑踏事故の“全貌”(2022年12月24日)

【独自取材】新証言と新映像から見えた梨泰院雑踏事故の“全貌”(2022年12月24日)

158人が犠牲となったソウル・梨泰院の雑踏事故。
事故の当日、あの場所で何が起きていたのでしょうか。これまで取材に応じていなかった人たちが、サタデーステーションのカメラに初めて証言。さらに、新たに入手した映像の数々から“事故の全貌”がみえてきました。

▼生還者語る「1時間押され続けた」理由とは?

事故が起きたのは、梨泰院駅前の大通りと「世界グルメ通り」と呼ばれるメインストリートを結ぶ細い坂道。
ギリギリのところで生還した3人の男性が、当時の状況について証言してくれました。
3人は、映像に映るこの位置で1時間以上、動けない状態だったといいます。3人が身動きが取れなくなったのは、転倒の最前線からおよそ7.5mの位置でした。この事故で158人が亡くなりましたが、最前線から7mの間にほとんどの死者が集中していたといいます。

生還者 コ・ヨンウクさん)「救助された時のことは本当に何も覚えていなくて。気が付いたらアザだらけでした。全治3週間のケガをしました」

なぜ1時間もの間、身動きがとれなかったのでしょうか。

生還者 チョ・ソンホさん)「人が倒れたことで、その前には空間ができました。後ろからは『前が空いているのになぜ進まないんだ』という声も聞こえ、押され続けました」

当時、現場では、前の人に視界を遮られるため、後ろからは事故の状況が見えませんでした。
ところが、坂の上にいた一部の人からは“先に空間があること”だけが認識できたため、長時間押され続けたのではないかと証言します。

東京大学先端科学技術研究センター 西成活裕教授)「どこか少しでも空いている雰囲気があったら、自分の身が助かるのが本当にすべてですから、とにかく助かりたいとみんなが思うと、どうしても押し合ってしまう、それが起きたんじゃないかと思います」

周りの人が次々と意識を失っていく中で、コさんは死を覚悟し、ある行動をとりました。

コ・ヨンウクさん)「耐え切れないと思って母に電話したんです。『梨泰院で事故に巻き込まれ、もう死にそうだ』『ごめんなさい』『愛している』『会いたい』と。母の声は聞きとれず、そのまま電話を切りました」
その後、コさんは意識を失ったといいます。

チョ・ソンホさん)「彼が意識がない様子だったので、僕は頬をたたいて『起きろ!』と声をかけたんです」

3人は生死を分けたポイントをこう感じています。

チョ・ソンホさん)「本当に修羅場でした。周囲の人は嘔吐していて、悪臭が立ち込めていました。僕たちももし飲酒していたら呼吸が乱れていただろうし、何か食べていたら満腹でもっと息苦しかったでしょう」
パク・ジョンヒョンさん)「いま考えると、僕たちがあの日、空腹でお酒も飲んでいなかったことが生還できた理由だと思います」

▼新証言「一瞬にして崩れた」

当時、現場の様子を間近で目撃していた人がいます。今回、初めてメディアの取材に応じました。男性が営む店は坂の頂上付近、事故現場の真横にあります。

現場横の居酒屋「しゅっきん」店主)「店のお客さんが外に出られない状況で、ドアを開けてみると人が地面に横たわっていました。確認できただけでも、4重5重に人が積み重なっていました」

店主の証言などから、新たに2つのことがわかってきました。
1つは「一瞬にして崩れた」という点です。

現場横の居酒屋店主)「うちのお客さんが事故の5分前に店を出たんです。坂を下りていく様子を見ていましたが、移動できる状況でした。その後あっという間に隊列が崩れ事故が起きたのです」

事故現場のすぐ下を映した防犯カメラ映像をみると、事故発生時刻とされる午後10時15分には、上る人と下る人それぞれ、人が流れていることがわかります。
ところがその直後、「のぼれない」という合図でしょうか、手でバツをつくる人の姿が映っています。
そして4分後の午後10時19分。急に人の流れがなくなります。映っていたのは事故現場の方を心配そうに見つめる人の姿。この時すでに大惨事が起きていたとみられます。

▼新証言「人が倒れた方向がバラバラ」

新たにわかった2つ目は「人が倒れた方向がバラバラだった」という点です。

現場横の居酒屋店主)「倒れた方向に一貫性がないんです。坂の下向きに倒れた人、上向きに倒れた人、左右、うつ伏せ、仰向け、それぞれでした」
(取材スタッフ:坂の下に向かって、ドミノ倒しになったのではないと?)
現場横の居酒屋店主)「そうです」

これらはまさに典型的な「群衆雪崩」の特徴だと専門家は指摘します。

西成活裕教授)「人がある程度は流れていたんですが、密度が高くなるとそれが急に動けなくなるということが過去にもたくさん起きてます。人と人とがコンタクトしていて押し合うので、いろんな方向から押されます。それが東西南北いろんな方向から揺らされる感じなんです。そのうちにその力に耐えられなくて、誰かが気を失ったりして、ストンと落ちてしまうと。そうするとそこが真空地帯のようになって周りからわーっと同心円状に雪崩れ込んでくるんです」

現場で救出活動を手伝った店主は、「男性4人でも引っ張り出せなかった」と話します。

西成活裕教授)「なんか今日歩きにくいなと感じたら、まず警戒していただいて、それで周りに常に同じ人とずっとくっついたままいるとなったら、その場からいち早く出ると。これが個人でできることです」

▼遺族「真相究明を」警察の不手際

一方、事故直後から指摘されているのが、警察の不手際です。事故数時間前から危険性を訴える通報が複数あった中、適切な対応をとらなかった警察。警察幹部に至っては、事故発生を懸念する内部報告書の隠ぺいをはかった疑いも浮上しています。
事故で妹を亡くした遺族のパクさんに話を聞きました。

遺族 パク・ドヒョンさん)「妹は日本語を学ぶために、大学に入り直したんです」

妹のシヨンさんは韓国と日本をつなぐ仕事がしたいと、韓国で日本語を教えていたといいます。

パク・ドヒョンさん)「活発で、人と話すことや会うことが大好きで。妹は何かあるたびに真っ先に私を頼って来るんです。でも今回は、連絡をもらえませんでした。警察がまともに対策を講じなかったことで、あの事故が起きたと思います。通報があったにも関わらず黙殺したことも問題です。事故の調査をしっかり行うことが大切だと思います。私たち遺族は、真相究明、そして責任者がきちんと責任を取ることを、求めていきたいです」

サタデーステーション 12月24日OA
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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