埼玉・白岡市中3死亡 “ヤングケアラー”の実態【news23】

埼玉・白岡市中3死亡 “ヤングケアラー”の実態【news23】

埼玉・白岡市中3死亡 “ヤングケアラー”の実態【news23】

現場に何度も足を運ぶうち少年の声なき声が聞こえてきました。埼玉県白岡市で、暴行を受け亡くなったとみられる中学3年の少年。学校にほとんど行かずに幼いきょうだいの世話をするいわゆる「ヤングケアラー」だったことがわかりました。周囲が異様な環境に付きながら、なぜ、少年を救うことができなかったのでしょうか。

今月15日の早朝、埼玉県白岡市の住宅でこの家に住む女性から119番通報が入った。

「部屋をのぞいたら息子の意識がもうろうとしている」

救急隊が駆けつけたところ、この家に住む中学3年の少年が意識不明の状態で倒れていて、その後、死亡した。死因は急性硬膜下血腫。脳に強い衝撃が加えられていた。少年の顔にはあざがあり、上半身には複数の骨折のあとが見つかった。

近所では大家族として知られていた少年の一家。38歳の母親とその交際相手、そして、小学校低学年以下の子どもを含む7人のきょうだいとともに暮らしていた。

少年に何が起きたのか。自宅周辺で取材を重ねたが、少年のことを直接知る人はほとんどいない。

近所の人
「亡くなった子がどの子かわからない」
「(Q.〔事件〕どう思った)こんな大きな子がいたんだって」

少年の名前も年齢も知らないという一方で、住民たちが口を揃えて証言したことがある。それは・・・

近所の人
「学校は行っていないって聞いている」
「人の話だと学校も行っていないみたいな感じ」

「学校に通っていない」ということ。少年は小学校高学年の頃から学校にはほとんど通っていなかったという。

小・中学校の同級生の親
「(登校は)この4、5年で2~3回。最初の頃は心配して声をかけたりしていたみたいだが、ここ何年かは来ないのが当たり前というか。(Q.卒業アルバムには)写っていなかったと思います」

卒業アルバムに載っていたのは名前だけ。写真は載っていなかったという。一体なぜ?取材を進めていくと、少年の異様ともいえる生活環境が浮かびあがってきた。

近所の人
「下の子たち面倒見て遊んでいた。一生懸命やっていたから」
「いつも子ども同士で仲良く遊んでね。上の子が下の子の面倒見るなと思って、感心していたんだけど」
「赤ちゃんの世話をしているから、学校へは行けないよ、上の2人は。あの2人が育てているようなもの。穴のあいたジャンパー、膝も穴があいたズボンはいて、ズボンも短い。(Q.それが中学3年の?)亡くなったという男の子」

住民たちの口から語られるのは、学校に行かず幼いきょうだいの世話をする少年の姿だった。

病気や障害のある家族の介護や幼いきょうだいの世話、家事など、本来大人が担うようなケアを行っている18歳未満の子どもは「ヤングケアラー」といわれている。

近隣住民の1人は、少年の様子をこう振り返った。

近所の人
「町内会には入っていなかったけど、(少年が)バザーに来たことがあった。下のきょうだいたちに『こんなのどう?』って、おもちゃや古着をあててあげてね。ああいうのを『ヤングケアラー』っていうんだろうなって思っていた」

去年初めて行われた国の調査では、「中学生の17人に1人」がヤングケアラーにあたる可能性があることがわかった。これは1クラスに2人程度いることを示している。

こうした子どもたちの支援にあたっているNPOが24日に開いたウェブセミナーでは。

NPOカタリバの職員
「ヤングケアラーと自覚している子どもの存在は約2%であるということからも、そもそも自分自身ケアをしているという自覚はなく、お手伝いの一環であったり」

ヤングケアラーの問題は、本人が自覚を持ちにくい点にあるという。参加した大学4年生の女性は、小学校高学年のときから精神疾患がある母親のケアにあたってきたが。

元ヤングケアラーの大学生
「小中(学校)の時はあまり自分が不幸だとか、ケアをしてるみたいな感じは全然なくて」

高校生になって負担を感じるようになった女性。そのとき、高校の先生が話しかけてくれたことで悩みを打ち明けることが出来たという。

元ヤングケアラーの大学生
「高校の先生が『自分の人生は自分のもの』って、すごく励ましてくれた。家の話を沢山聞いてくれたのが一番大きくて」

小川彩佳キャスター
「今回の事件では少年が学校に行っていなかった。(自身が)もし学校からのサポートを得られていなかったら、どう違っていたと感じますか」

元ヤングケアラーの大学生
「学校に行けていなかったら、相談はできなくて抱え込んでいたのかも」

せめて学校に通えていたら、少年を助けることができたのか。近所の人によると、学校関係者とみられる人物が少年の自宅に訪ねてきたこともあったというが。

近所の住民
「(きょうだいの)面倒見ているから、学校に行けないというのも聞いていたし、学校から家庭に行くとコロナで行かれないって(答えていたみたい)。面倒見ているからとは言えないでしょ。先生なのか教育委員会なのかわからないけど、そう言われたら何も言えなくなる」

周辺住民の中には、行政側に相談していたという人もいた。

近所の住民
「(少年が)足ひきずって歩いてたから、どうにかしてほしいねって市役所に相談に行った」
「虐待とかももしかしたらあるのかと頭によぎったので、児童相談所にも相談していたので、もうちょっと対処できたのでは」

中学校と白岡市は取材に対し

「個人のプライバシーに関することなので答えられません」

周囲の多くの人たちが「異様な環境」に気付く中で命を落とした少年。子どもたちの支援を行うNPOの職員は少年のようなケースに何ができるのか、社会全体で考えていく必要があると話す。

NPOカタリバの職員
「本当に私もニュースをみて難しいケースだと感じていました。(場合によっては)介入するような措置が必要になってくると感じていて、私たちがその場にいたら何ができていたのか、引き続き問い続けていきたいし、どういう機関と連携していくかも考えていかないといけない」(25日23:30)

#ヤングケアラー

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