【報ステ解説】“天安門事件の再来”の恐れは?習主席氏に退陣要求も…ゼロコロナ抗議(2022年11月28日)
◆中国情勢に詳しい、東京大学大学院・阿古智子教授
(Q.今回のデモで、天安門事件を思い起こす人も多いと思いますが、どうみていますか?)
天安門事件は、当時の政府の役人の腐敗や、言論統制に対して不満が高まり、政治改革を求める動きになりました。
今回は、コロナに対する対策ということで、世界各地がコロナとの共存を図るなかで、中国は理不尽な政策を強行していると。
こうしたなかで、命が奪われ、生活も困窮。SNS時代になって、表現することが当たり前になっている人たちが、表現できないことでストレスを溜めています。
幅広い社会階層・地域にわたって、ゼロコロナ政策の緩和を訴え始めたということだと思います。
(Q.国民が声を上げるのが難しい中国で、デモが拡大している理由はなんですか?)
不満が臨界点に達してしまったと思います。
ただ、表現しても表現しても消されてしまうため、非常に規制が強い北京では、白紙を掲げたり、大学生が這いつくばるなど、何とかして自分たちの訴えを届けようとしていました。
上海では、習主席の退陣要求も出てきています。
今まで、香港やウイグルの人たちが抗議運動をしているのを見て、「あんなの西側諸国にあおられているだけだ」「一部の過激派の人たちが騒いでいる」などと言っていた中国の若い人たちもいました。
しかし、実際に自分たちもコロナで色んな制限を受けて「あの時の香港やウイグルの人たちはこういう状況だったんだ」というSNSへの書き込みもみられます。
(Q.習主席の退陣という政治的な訴えに踏み込むのは、中国では異例だと思いますが、いかがですか?)
そういうスローガンを叫んでも、すぐに拘束されなかったのは、驚きました。
上海で政治的な主張をする人たちはあまりいないと言われていましたが、今回は経済が大きな打撃を受けています。
政治的に問題があると、経済にも打撃を受けてしまうということで、上海の人たちは、今の政権に対してかなり不満を持っているのだと思います。
(Q.政治体制の転換を求める声が、首都・北京など他の地域に広がる可能性はありますか?)
あると思います。
ただ、北京は厳戒態勢が敷かれているので、容易に表現はできません。
知識人や活動家、陳情者などがたくさん集まる地域ですが、だからこそ警察の数も多く、武装警察や解放軍も投入されています。
そのため、それほど容易に大きな動きにはならないと思います。
(Q.今回の動きが、民主化に動き出すきっかけになると思いますか?)
すぐにはならないと思います。
中国の人たちが今、関心があるのは、自分たちの財産が守られるかです。
例えば、買ったマンションが、入居もできないし、ローンを抱えたまま、生活が苦しくなっていくので、どうにかしてくれ。子どもの教育をどうしてくれるのかなど、身近な問題に対して要求があると思います。
しかし、それは政治に関わってくると徐々に気付き始めています。
まだリーダーになるような人たちも、出てきていませんが、そうした動きは少しずつ加速していくと思います。
(Q.習主席は世論の動きを敏感に感じているのでしょうか?)
かなり敏感に感じています。
情報統制をしても、壁を越えて、海外の情報を得ている人たちもたくさんいます。
今までは既得権益層だとみられていた、経済発展の恩恵を受けていた人たちも、これはダメだと言い始めているので、かなり緊張状況にあると思います。
(Q.ゼロコロナ政策は続きますか?)
中国の政権は、自らの政策を否定的に捉えることはしないです。
文化大革命の時に、誤ったことをしたと、後の政権が歴史決議を出したことはありますが、今の政権が自分たちの政策を間違っていたとは言いません。
徐々に調整するかもしれませんが、大きな転換はしないと思います。
(Q.徐々に調整というのは、例えば検査を緩めるといったことですか?)
そうですね。
この間も、広州で「強制的な検査をやめてくれ」というデモがあった時に、次の日から強制検査がなくなりました。
隔離の範囲を縮小したり、補助金をもっと出すなど、そういったことはやっていくと思います。
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