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【報ステ解説】なぜ差し戻し?「審理尽くされず」講談社元社員“妻殺害”判決破棄(2022年11月21日)
妻を殺害した罪に問われ、一貫して無罪を主張してきた講談社の元社員・朴鐘顕(パク・チョンヒョン)被告(47)について、最高裁は21日、2審の有罪判決を破棄、審理をやりなおすよう命じました。
事件が起きたのは2016年8月。朴被告は、東京・文京区の自宅で、妻・佳菜子さんの首を絞めて殺害したとして、逮捕・起訴されました。
朴被告と佳菜子さんには、男の子2人、女の子2人の合わせて4人の子どもがいます。
講談社の元編集次長で、数々の人気コミックを担当していました。
弁護側によりますと、朴被告は、妻と子どもが待つ自宅に深夜帰宅。すると、佳菜子さんが、育児ストレスなどから突然、錯乱状態になり、包丁を持ち出してもみ合いになりました。
その後、佳菜子さんは「子どもを道連れに死ぬ」などと言って、生後10カ月の赤ちゃんが眠る1階の寝室へ。追いかけた朴被告は、うつぶせの状態で首に手を回し、押さえつけたといいます。
検察側は、この時、朴被告が首を絞めて佳菜子さんを殺害し、階段の上に運んで突き落としたと主張。一方、弁護側の主張では、朴被告は、もみあった後、赤ちゃんを抱え、2階の部屋に逃げました。
その後、部屋を出ると、佳菜子さんは、階段で首をつっていたといいます。
他殺か自殺かが争点となりました。
弁護側はメールを提出し、佳菜子さんは産後うつだったとしています。
佳菜子さんのメール:「夏休みは長く、息切れ状態です」「ゆうごはんが決まらない」「力が入らない。涙が止まらない」
朴被告は、一貫して無罪を主張しましたが、1審・2審とも、懲役11年の有罪判決が言い渡されました。
今回、最高裁は「十分な審理が尽くされなかったことにあるものと言わざるを得ない」としています。
何が、ポイントとなったのでしょうか。
山本衛弁護士:「顔に血が流れた痕跡がないと2審では言っていたんですけど、この判断が一つは争点化されていなかった。そういう文脈で、審理が尽くされていない。お互いに主張・立証が尽くされていないところが一つと、もう一個は、そういうなかで行われた認定だからかもしれません」
最高裁が注目したのは、佳菜子さんの額の左側にあった傷です。
弁護側は、自殺前の生存中にできた傷で、顔に血の流れた痕が残っているとしています。
しかし、東京高裁の認定では、佳菜子さんの手に血を拭いた痕がなく、拭いた可能性がある物も見当たらず、また、顔にも血液の付着や、拭いた痕跡がないとし、傷を負った時点で、意識を失っていて、その状態のまま死亡したと推認できるとし、自殺を否定しています。
この点について最高裁は…。
最高裁判決:「顔前面の血痕の有無や、それと本件自殺の主張との関係について、審理が尽くされたとはいい難く、原判決を破棄しなければ、著しく正義に反するものと認められる」
山本衛弁護士:「『疑わしきは被告の利益に』という大原則に従って、審理をしてほしい」
朴鐘顕くんを支援する会・佐野大輔共同代表:「長女とか受験を控えて、色々アドバイスもらいたい部分もあり、父親に頼りたい部分もあるなかで、一刻も早く戻ってきてほしいのが、子どもたちの願いだと思う」
判決を受け、最高検察庁は「判決内容をよく検討し、差し戻し審における的確な主張・立証に備えたい」としています。
***
◆社会部・西前信英記者
(Q.差し戻しが意味するものは何ですか?)
今回の事件は、1審・2審で他殺だという有罪判決が出されているのですが、
その結論に至るまでの手続きが、ちゃんと踏まれていないことを指摘しています。
有罪判決の根拠となっている、佳菜子さんの顔の血痕の有無について、そもそも争点にすらされていませんでしたし、立証の機会すらありませんでした。
今後の裁判では、その立証などが、いわば“宿題”として残った形になります。
ただ、この事件は、自宅内という密室で起きていて、当時の状況を直接見た目撃証言もないことから、新たな証拠が出てくるとは考えづらいです。
そのため、限られた証拠をもとに、“宿題”を一つ一つ解決していく必要があるため、一筋縄ではいかないということは間違いなさそうです。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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