「平和追求 政治浄化に挺身」土井たか子委員長 三木武夫元総理への追悼演説 1988年(2022年10月22日)

「平和追求 政治浄化に挺身」土井たか子委員長 三木武夫元総理への追悼演説 1988年(2022年10月22日)

「平和追求 政治浄化に挺身」土井たか子委員長 三木武夫元総理への追悼演説 1988年(2022年10月22日)

10月25日、立憲民主党の野田佳彦元総理大臣が安倍晋三元総理の追悼演説に立ちます。
過去の政治家による追悼演説や弔辞を振り返ります。

1988年12月20日に衆議院本会議で行われた三木武夫元総理に対する社会党の土井委員長の追悼演説です。
妻の三木睦子さんらが傍聴する中、「リクルート疑惑」に揺れていた政界の現状を批判しつつ、「クリーン三木」とも呼ばれた三木元総理をしのびました。

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「議会の子」として本院に51年有半の長きにわたって在職された三木武夫先生は、去る11月14日、御闘病むなしく逝去されました。
 私は、皆様のご賛同を得て、議員一同を代表し、全国民の前に謹んで追悼の言葉を申し述べたいと存じます。(拍手)

 ただいま私は、この壇上に立ちまして、一つの議席が空席になり、そこに真っ白いカーネーションの花があるのを、万感胸に迫る思いで見詰めるのであります。
日本の政治にとりまして、何と大きな、余りにも大きな空席でありましょうか。
この席の主は、生涯を通じて、世界の平和への貢献を目指され、政界の浄化に挺身されました。

今も、耳を澄ませば、あのつやと張りのある声で現在の政治を憂い、しかる数々の言葉があの議席から聞こえてくるような思いがいたします。
 その声は、党派を超えて、私たち後輩議員の政治浄化に対する努力が足りないことを悲しんでもおられます。
私は、ここで、今の政治の中に三木先生の魂を生かすべく真剣に取り組むことを皆様とともに厳粛にお誓いしたいと存じます。(拍手)
それこそが、今は亡き三木武夫先生のみたまにささげる本当の花束であると信じるからであります。

 先生は、しみじみとした口調でこうおっしゃったのであります。
「土井さん、男はだめなんだよ。男は戦う歴史をつくってしまったんだからねえ。
そこへいくと女の人は、武器をとって戦った歴史を持たない。
戦うことは間違っているという知恵を初めから持っている。
これからは、そうした女の人の理性が政治を切り開いていく時代なんだと思いますよ」
もちろん、これには三木先生一流の女性に対するお世辞が含まれているとは思うのであります。
しかし、そこに半世紀にわたって平和のために尽くすことを大事にしてこられた先生の誠実さがあふれていたことを、私は確信をもって思い出すことができるのであります。

 三木先生は、ご家庭では決して怒らない方であったそうであります。
睦子夫人によりますと、夫人はよく先生に「あんたはいつも腹が寝ている。たまには腹を立てなくちゃだめじゃない」と激励なさったものだそうであります。
しかし、家庭では物静かな三木先生の腹は、日本の政治が汚れ、世界の平和が核の脅威にさらされ続けていることにいつも立ち上がり、激しい怒りを燃やしておられたに違いありません。
そして今また、私たち日本政治の周囲には、三木先生が怒り、悲しまれる状態を示す事件が、連日のマスコミをにぎわせております。

 まことに三木先生の清潔政治と平和追求の足跡は偉大でありました。病床にありながらも、筆を休めることなく、政治倫理法案と選挙浄化特別措置法案の草稿を練られていたことを聞き、私は、そこに政党政治家三木武夫先生の真髄を見る思いがいたすのであります。(拍手)
 先生が常に胸中に去来し続けていたのは、国家、国民であり、我が国議会の将来であったのではないでしょうか。
今三木先生を失ったことは、ただ自民党にとってのみならず、三木先生が信をおかれた国民すべてにとりまして極めて大きな不幸であります。惜しみても余りあるものと申さねばなりません。
 先生がその生涯をかけられた議会活動50年の表彰は、憲政史上、尾崎咢堂先生に次ぐお二人目でありました。

 人は皆必ず別れのときがあるとは申しましても、三木先生とのお別れは何と悲しいことでありましょう。
去る12月5日、日本武道館において、故・三木武夫先生の「衆議院・内閣合同葬」が、しめやかにも盛大にとり行われました。
議会史上初めての合同葬であります。その合同葬に内外の実に数多くの人々が悲しみのうちに別れを惜しんで参列されている姿に接して、私は心打たれたのであります。

 三木先生の愛読された論語には、「学んで思わざれば則ち罔(くら)し。思うて学ばざれば則ち殆(あやう)し」という言葉がございます。
三木先生から学ばなければならないことは、ただいま申し上げたことの何倍も何十倍もあるでありましょう。
学ぶべきことは多い上、そのことを考えなければ、私たちの前進はあり得ないのであります。
 三木武夫先生今やなし、まさに「巨星墜つ」の実感がひしひしと胸に追ってまいるのであります。

 先生、願わくは、この国の政治の行方に、国民の信頼を回復すべく努力する私どもに息吹を与え、見守ってください。
「議会の子」三木武夫先生のありし日は、私どもの忘れ得ぬ勇気であり、情熱であり、誇りであります。(拍手)
 私は、政治的立場と主義主張を超えて、長く永く、これからの歴史に生きる三木先生御生前の幾多の功績をたたえ、その高く清らかなご人格をしのび、先生に学び、考え、政治の浄化と平和の追求に一層の力を尽くすことを、ここに皆様とともにお誓いし、もって追悼の言葉にかえたいと存じます。
 三木武夫先生、安らかにお眠りください。(拍手)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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