就任1カ月で支持率7%…英・トラス首相が辞意表明 なぜ今?退場劇のポイントは?解説(2022年10月20日)

就任1カ月で支持率7%…英・トラス首相が辞意表明 なぜ今?退場劇のポイントは?解説(2022年10月20日)

就任1カ月で支持率7%…英・トラス首相が辞意表明 なぜ今?退場劇のポイントは?解説(2022年10月20日)

イギリスのトラス首相は20日、与党・保守党の党首を辞任する考えを表明しました。

就任からわずか1カ月あまり。減税政策の失敗から与野党ともに辞任を求める声が高まっていました。

トラス首相:「私は経済情勢・国際情勢が大きく揺れる時期に、首相に就任しました。家庭や企業は、毎月の支払いを心配していました。ウクライナでの戦争で、欧州の安全が脅かされました。我が国は、あまりに長く続く低い経済成長に阻まれてきました。これを変えるために保守党党首に選出され、エネルギー関連法案・保険料変更を実現してきました。EU離脱の恩恵を受けた減税による経済成長という理念を打ち出しました。現在の状況では、党首選出の際に任された責任を果たすことができないと感じました。よって、国王陛下には『保守党党首の辞任』を報告しました。20日朝、1922年委員会ブレイディ卿と会談して、来週中に党首選を行うことで合意しました。これによって我々は引き続き、財政政策の実現・経済と安全保障の安定維持に向けて進むことができます。後任が決まるまで、首相としての職を務めます」

◆ロンドン支局・佐藤裕樹記者

あまりに突然の辞任でした。その背景には、トラス首相が打ち出していた減税政策の失敗があります。

ここ1週間ほど、与党内から辞任を求める声がありましたが、20日になって、その圧力の数に屈した形になりました。

辞任の一報は、イギリスメディアでもスピーチの3分ほど前でした。

トラス首相がスピーチをするかもしれないという情報も、イギリスメディアには15分ほど前に入ったということです。

そのため、首相官邸に向かって走ってくるメディアもたくさんいました。

それほど、突然の辞意表明でした。

トラス首相は、来週中にも党首選を行うと明言しました。

トラス首相はイギリス史上、最も短い首相になります。

これまでは、1827年のジョージ・カニング元首相の119日でした。

しかも、カニング元首相は在任中に亡くなっています。

来週、党首選があるということは、9月6日に就任したばかりですので、2カ月持たないことになります。

突然の辞任は、トラス首相の政策によるイギリスの混乱をなんとか収めようとする与党内の圧力に屈した形です。

◆大平一郎前ロンドン支局長

前任のジョンソン前首相の時には、辞任が取り沙汰されてから、実際に辞任を表明するまで数カ月かかり、その間に非常に政治が混乱したことがありました。

そのため、これだけ急な辞任表明になったのだと思います。

辞任のポイントは3つあります。

まず1つ目は『財源なき財政出動』です。

トラス首相は選挙戦の時から、良いことを言い過ぎた、リップサービスに近いようなことを言い続けてきたことがあります。

具体的には大型減税、所得減税や法人税を減税すると言っていました。

対立するライバル候補からは「財源は何なんだ」と追及されていましたが、党内基盤が弱いトラス首相が選挙で何とか勝つために、こういったことを言い続けていました。

一応、国債を売るとは言っていましたが、実際に国債が売られると、金利が上がり、通貨が安くなり、株も安くなるという“トリプル安”の状況に追い込まれました。

ただでさえ厳しい経済状況のため、突き上げがさらに加速したとみられます。

2つ目は『“食べ物”か“暖房”か』です。

イギリスは物価が非常に高騰しています。

私も2カ月前までロンドンに住んでいましたが、その時でも日に日にありとあらゆるものの値段が上がっていくことを実感していました。

イギリスはかなりの食料を輸入に頼っています。

特にブレグジットでEUを離脱した後は関税がかかるようになりました。

そこに加えて物価高騰ですから、市民生活は非常に圧迫されています。

そして、心配されているのが燃料です。

ロンドンの10月の気温はだいだい10度前後と、絶対に暖房がなければ生きていけない状況です。

特に貧困層は直撃していて、暖房費を払うために食費を削る、生きるためにストーブをつける人たちもいると伝えられています。

そういったなかで、経済が混乱するというのは、一刻の猶予も許せないという状況のなかでの辞任になりました。

3つ目は『後任候補?』です。

トラス政権の支持率は7%で、指示しないは77%に上っています。

次期首相については、ジョンソン前首相を求める声が32%とトップになっています。

辞めたばかりのジョンソン前首相が人気ということは、それだけ後継がいないということです。

トラス首相と党首選を争ったスナク元財務相が23%で次いでいますが、このような状況で誰が適任なのかは、党内でも一致が難しくなっています。

スナク元財務相は財政規律派といって、財政出動は渋るのではないかと思います。

来週中にも党首選を行うとしていますが、まず候補が誰になるのかというところから始まるので、どれだけ時間がかかるのか不透明な状況です。

(Q.この混乱がウクライナ情勢に与える影響は大きくなりますか?)

ウクライナも非常に影響を受けると思うので、注目点です。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

ANNnewsCHカテゴリの最新記事