【密着】“不屈の龍”北海道で日米共同訓練 異例の事態も…“防衛戦略”政府見直しへ(2022年10月12日)

【密着】“不屈の龍”北海道で日米共同訓練 異例の事態も…“防衛戦略”政府見直しへ(2022年10月12日)

【密着】“不屈の龍”北海道で日米共同訓練 異例の事態も…“防衛戦略”政府見直しへ(2022年10月12日)

 今月1日から北海道で陸上自衛隊とアメリカ軍による日米共同訓練が行われている。そんななか、政府は年末に向けて、防衛戦略の見直しを目指している。

■“不屈の龍”実施…ウクライナで使用兵器も

 北海道・矢臼別演習場。3つの自治体にまたがる日本最大規模の演習場だ。

 1日から始まったのは、ロシアによるウクライナ侵攻後初めてとなる北海道での日米共同訓練。その名は「レゾリュート・ドラゴン」。“不屈の龍”という意味だ。

 沖縄基地所属の在日アメリカ軍海兵隊員や陸上自衛隊員、およそ3500人が参加している。

 ロシアや中国を念頭に、島しょ防衛を想定している訓練には、アメリカ軍の「ハイマース」と呼ばれる、高機動ロケット砲システムも加わっている。

 ハイマースは、射程およそ70キロ。ロシアによる軍事侵攻が続く、ウクライナにも供与され、反転攻勢の要因とも言われている。

 一方の陸上自衛隊は、多連装ロケットシステム「MLRS」の訓練を行った。これと同じ型を、イギリスはウクライナに供与している。

■“異例の事態”射撃訓練は「MLRS」のみに…

 しかし、この日米共同訓練で、異例の事態が起こった。

 アメリカ軍によるハイマースの射撃訓練が、「弾が届かず」中止になってしまったのだ。在日アメリカ軍は、「手続き上の不備」などが理由だとした。

 このため、射撃訓練は、陸上自衛隊が運用するMLRSのみ行われた。

 射程はおよそ30キロ。日本では、ここ矢臼別演習場でしか射撃訓練はできないという。

 自衛官:「(Q.MLRSは何発撃てるか?)12発射撃することができます」

 そして、このロケットシステムの特徴は、移動が可能だという点だ。

 公道でも走行可能となっていて、最高速度は時速56キロだという。そのため、敵から発射位置を特定されづらく、戦場で大きな効果を上げるのだという。

■「MLRS」の中は…「飛行機のような感じ」

 さらに、車内は、発射の際の衝撃に耐えられるような工夫が施されている。

 陸上自衛隊 北部方面隊・清水正一1等陸尉:「隙間から爆風・爆煙、ガスのにおいがすごくしますので。それが、この乗員室に入らないようになっています」

 車内を密閉するために、気圧を下げる装置が付いているのだ。特別に中を見させてもらった。

 清水1等陸尉:「(Q.今、MLRSの中に入りました)こちらの機械を回して、室内の気圧を下げる機械になります。(スイッチを)入れます。今、気圧が下がったのを確認しております」「(Q.中に入っていると、少し耳がツーンとしますね)飛行機に乗っているような感じになりますね」

 暖房は付いているものの、冷房はなく、夏場は汗びっしょりになるという。

■“実戦想定”森にテント キャンプ生活

 訓練する隊員たちは、常に実戦を想定。敵に見つからないよう森にテントを張り、広い演習場でキャンプさながらの生活を送る。

 この日の弁当は、アジフライだった。

 自衛官:「めちゃめちゃにおいしいです」「(Q.おかわりとかは?)他の隊員からもらいます」「(Q.苦手なものは?)いや、もう戦争になったら、そういうことは言っていられないので」

■米軍大佐「懸念のロシアは制御不能に」

 中国の力による現状変更。そして、核・ミサイル開発を進める北朝鮮。日本の安全保障環境が大きく変わるなか、今回の共同訓練が行われた。

 在日アメリカ軍・海兵隊のシムス大佐は、次のように話す。

 シムス大佐:「(Q.ロシアのことをどう思っているか?)もちろん懸念している。ロシアは制御不能になりつつある」

 陸上自衛隊北部方面隊 ・馬場秀広2等陸佐:「いついかなる時、どのような事態が起こっても、練度を向上させるという気持ちは、常に持っております」

■日本の防衛費 「増やすべき」計56.3%

 現在の国際情勢の影響もあり、日本の防衛の在り方が注目されている。

 自民党は、今年7月に行われた参院選の公約で、「NATO諸国の国防予算の対GDP比2%以上も念頭に、来年度から5年以内に防衛力の抜本的強化に必要な予算水準の達成を目指す」としている。

 この日本の防衛費についての世論調査では、「日本の防衛費をどうするべきか」共同通信の電話調査では、「大幅に増やすべき」が11.3%、「ある程度増やすべき」が45.0%で、「増やすべき」という回答が合わせて56.3%だった。

 そして、「ある程度減らすべき」は6.8%で、「大幅に減らすべき」は3.0%と、半数以上が日本の防衛力強化に賛成となっている。

■「国家安全保障戦略」臨時国会で焦点

 そんななか、政府は「安保関連3文書」の改定を目指している。

 この安保関連3文書とは、「国家安全保障戦略」「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」の3つのことで、防衛計画の大綱や中期防衛力整備計画、防衛予算は一番上の国家安全保障戦略をもとに作られている。

 これらすべての防衛戦略の核となっている国家安全保障戦略の年末の改定を目指しているため、臨時国会で焦点になっている。

■ロシア・中国“位置付け”見直しに注目

 現在の国家安全保障戦略は、9年前の2013年12月の安倍政権時に策定されたもの。そのため、ウクライナ侵攻など国際法上の違法行為を繰り返しているロシアが、国家安全保障戦略では「パートナー国」と位置付けられ、また中国については「安全保障上の課題」と位置付けられている。

 ただ、今の日本を取り巻く安全保障環境にはそぐわない点もあるため、自民党が4月にまとめた提言では、ロシアは「安全保障上の現実的な脅威」、中国は「安全保障上の重大な脅威」と表現されていて、政府による見直しが行われるか、注目されている。

(「大下容子ワイド!スクランブル」2022年10月12日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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