黒い義手の“英雄”が証言 クリミア爆発は「スマホ位置情報によるドローン攻撃」(2022年8月21日)
ロシアが実効支配する南部クリミアで相次ぐ軍事施設の爆発。
関与が指摘されているのがウクライナの非正規部隊パルチザンです。
番組では元パルチザンで「ウクライナの英雄」と呼ばれた人物に話を聞くことができました。
▽ウクライナ反撃の狼煙
(記者)「私たちはウクライナの砲兵隊と一緒にいます。戦闘任務についている部隊です。」
「撃て!」
ロシア軍がウクライナに侵攻して半年。東部のドンバス地方では、今も激しい戦闘が続いています。
(ウクライナ兵)「我々には戦う用意がある。戦い続ける。ベストを尽くして反撃している。士気は高い。」
東部で一進一退の攻防が続く中、ウクライナ軍が今、注力しているのが、南部での反転攻勢です。
ウクライナ軍はアメリカから提供された高機動ロケット砲システム「ハイマース」を前線に投入。ドニプロ川にかかる橋を攻撃しました。狙いは、ロシア軍の補給路を絶つことです。
「動かないで」
攻防は、日に日に激しさを増し、市街地にも砲撃の音が響き渡ります。
「私の子ども、私の子ども!」
ウクライナ軍は南部のヘルソン州で着々と領土を奪還。しかし、州都ヘルソンは侵攻直後からロシア軍の占領下に置かれたままです。
▽“ロシア化”に抵抗 動き出す「パルチザン」
現在、ヘルソン市街はどうなっているのか。YouTubeに街の様子を投稿する男性に取材すると。
(ヘルソンの住民)「町には『ロシアがここに永遠にとどまる』と書かれたポスターや『ロシアと一緒なら生活がよくなる』というポスターが貼られている。」
街では、以前にも増して、「Z」マークをつけた車を見かけるようになったと言います。
ロシアの通貨ルーブルが導入されるなど、急速な“ロシア化”が進められる一方で、ヘルソンでは、ある異変も起きていました。
(ヘルソンの住民)「ウクライナ側に情報提供したり、施設に発信機をつける人をロシア側が拘束することが増え、彼らの情報が公開されるようになった。」
ロシア軍による占領が長引く中、ゲリラ戦を展開する非正規部隊「パルチザン」の動きが活発になっていると言うのです。
(ヘルソンの住民)「ウクライナに情報を提供していた若い男女4人が逮捕された。彼らはスマホを施設の中に置き、ウクライナ側はその電波を使ってミサイルを発射し、施設を破壊したようだ。」
パルチザンが街中に貼り出したビラには、こうあります。
「占領者は帰れ。さもないと“ハイマース”が帰らせる。」
SNSにもパルチザンだと名乗る人物が登場し―。
(ヘルソンのパルチザンと名乗る人物)「我々、ヘルソン州のパルチザンは(編入に向けた)住民投票に反対している。建物を封鎖したり、街や橋で戦う。我々の土地は絶対に譲らない。」
ロシア軍だけでなく、占領に協力するウクライナ人に対しても警告を発します。
(ヘルソンのパルチザンと名乗る人物)「ヘルソン州のパルチザンはウクライナ軍への情報提供を続けている。占領に関わる全員がリストに入っている。夜が来たら協力者は覚悟しろ。」
▽「家が揺れた」クリミア爆発の衝撃
ヘルソンのさらに南。2014年にロシアが一方的に併合したクリミア半島ではー。
9日、炎と煙に包まれたのは、クリミア半島西部にあるロシアの軍用空港。この爆発にもパルチザンの関与が指摘されています。立ちのぼる巨大な煙は、ロシア人観光客に人気のビーチからも―。
(撮影者)「これが最後の攻撃でありますように…」
爆発の衝撃で、住宅の窓ガラスなどが割れ、避難しようとする車で、渋滞も発生しました。
(住宅が被害にあった男性)「突然の爆発音で家が揺れ、割れた窓ガラスが妻に飛んできた。」
3カ月前に撮影された衛星画像では緑豊かだった軍用空港が、爆発の後は一面、茶色に焼け焦げ軍用機が破壊された様子が見てとれます。さらに16日には―。
クリミア半島北部にあるロシア軍の弾薬庫などでも、大規模な爆発や火災が発生しました。
「あそこに砲弾が落ちてきた。大変だ。このバスも揺れている。」
20日には、クリミア半島南部のセバストポリでも―。
大きな被害はなかったものの、ロシア黒海艦隊の司令部がドローンの攻撃を受けたと言います。
▽クリミア爆発に「ウクライナの英雄」が証言
クリミア半島での一連の爆発について、パルチザンの元指導者から証言を得ることができました。
(元パルチザン指導者 ジェムチュゴフ氏)「これが私の手です。脳の信号で動かしています。ドイツで開発された義手です。」
パルチザンとして、ロシア側の勢力と戦う中、地雷の爆発で両手を失ったジェムチュゴフ氏。
“ウクライナの英雄”の称号を持つ人物が語ったのは―。
(ジェムチュゴフ氏)「現在クリミアでは3つのパルチザン組織が活動しています。すべての基地は、元々ウクライナのものだったので、ウクライナ政府は位置などの情報を把握しています。しかし、最新の(ロシア軍の配備)状況はこの8年間で変わったので、クリミアにいる協力者に最新情報を提供してもらっています。」
現在、クリミアには、およそ100人のパルチザンが潜伏し、活動していると言います。
(ジェムチュゴフ氏)「今クリミアで発生している攻撃のほとんどはドローンを使ったものです。スマホを持つパルチザンはいたるところにいます。その人たちから提供された位置情報をもとに自爆ドローンなどによる攻撃が行われたと思います。ウクライナ当局がパルチザンに武器を提供し、指示を出しています。パルチザンが自分たちだけで攻撃目標を決めることはありません。」
クリミアの爆発がウクライナ政府とパルチザンの連携によるものだとすると、その狙いはどこにあるのか。
▽大統領代表「クリミア奪還は必要不可欠」
ゼレンスキー政権でクリミア問題を担当しているタミラ・タシェワ大統領代表です。
(クリミア問題を担当 タミラ・タシェワ大統領代表)「パルチザンが関与しているかどうかはコメントを控えますが、ウクライナはルールに従って戦争しているので国際法に違反しない。ウクライナは民間施設を攻撃しません。火災が発生した施設が軍事施設だけということに大きな意味があります。」
タシェワ大統領代表は、爆発へのウクライナ政府の関与は明確にしなかったものの、「クリミア半島を奪還しない限り、戦争は終わらない」と強調しました。
(タミラ・タシェワ大統領代表)「クリミア半島の非軍事化やロシア海軍や兵士の撤退、潜在的な核の脅威から解放されなければ、ウクライナにとっても、全世界にとっても危険な状況が続きます。クリミア半島を取り戻すことは勝利に不可欠です。」
8月21日『サンデーステーション』より (C) CABLE NEWS NETWORK 2022
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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