「親族に知られたら・・・」調査に懸念“内密出産”2例目の赤ちゃん誕生(2022年5月11日)
熊本市の慈恵病院が、病院だけに身元を明かして出産する独自の“内密出産”で、2例目の赤ちゃんが誕生したことを11日に明らかにしました。
出産したのは、熊本県外に住む成人の女性です。病院に向かう新幹線の中、お腹の痛みや意識が時折飛ぶと、病院に連絡しました。その後、無事に赤ちゃんを出産。母子ともに元気な状態です。
慈恵病院新生児相談室・蓮田真琴室長:「きょう記者会見があることを(彼女に)伝えた。彼女からのお返事は『私は悪く言われても当然の立場なので覚悟していた』『もし慈恵病院がなかったら、赤ちゃんを産まずに一緒に死んでいた』と返事があった。女性は、とにかく命を守りたいという気持ちが強かった。事情があって、いますぐ育てられる環境にはないので、特別養子縁組をしたほうが、赤ちゃんにとってはいいのではないかなというのは、頭の中ではわかっているけど、心がついていかないという状況だと思う。
慈恵病院・蓮田健院長:「赤ちゃんの幸せのこと考えると、最大の目標は赤ちゃんが無事に生まれてくれること。あるいは殺されないこと。それは内密出産で確実に保証できる」
母親が、病院にだけ身元を伝える“内密出産”。去年12月、内密出産の第1例目として生まれた赤ちゃんは、いまも、乳児院に保護されたままです。施設に行くのか、里親の元に行くのか、特別養子縁組をするのか。受け入れ先が決まらないといいます。そこには、ある理由がありました。
内密出産によって生まれた赤ちゃんの受け入れ先を決めるためのステップとして、児童相談所が、母親の身元や親族などを調査するといいます。内密出産を希望する女性は、親やパートナーから虐待を受けているなど、周りに言えない事情を抱えている人がほとんどです。
慈恵病院・蓮田健院長:「私たちが考えている以上に行政の人たちは“社会調査”を重んじる。利害対立じゃないが、児童相談所は調査したい。お母さんの方は調査されたくない。世の中には、当たり前だからできるだろうって、周りが思うことができない人がいる。それが努力不足やだらしないという言葉では片付けられない背景や特性を持っている人たちがいることを、ご理解いただきたい」
内密出産を希望する女性は、身元や家庭環境などを調査されることを避けたいと願っています。ただ、現行の制度では、児童相談所は、児童福祉法に基づく厚生労働省のガイドラインに従って、調査を行わなければなりません。
厚生労働省の担当者:「自治体(児相)が調査を実施しないことはないと思うが、“しなかったから罪になる”ということはない。親族に接触するのがベストなのかを考えながら、子どもにとってより良い方法を考える」
ただ、親族に接することを病院側は懸念しています。
慈恵病院・蓮田健院長:「内密出産のお母さんも、知られたくなくて慈恵病院に来ている。お母さんの家族とかに調査の対象が広がったら怖い。そうこうしているうちに、1人で自宅で出産して、結果、死産や赤ちゃんを殺してしまうことを心配している」
社会の網の目からこぼれ落ちかねない命を救うために、慈恵病院が踏み切ったのが、親が育てられない子どもを匿名で預かる“こうのとりのゆりかご”であり、今回の“内密出産”でした。 一方、熊本市など行政の側も悩んできたのだと思います。厚生労働省は番組の取材に対し、法務省とともに、内密出産に関してのガイドラインの策定に向けた協議を始めたことを明らかにしました。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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