勝利宣言も戦争宣言なし・・・ロシア軍の“苦戦”影響か『戦勝記念日』プーチン氏演説(2022年5月9日)

勝利宣言も戦争宣言なし・・・ロシア軍の“苦戦”影響か『戦勝記念日』プーチン氏演説(2022年5月9日)

勝利宣言も戦争宣言なし・・・ロシア軍の“苦戦”影響か『戦勝記念日』プーチン氏演説(2022年5月9日)

5月9日は、旧ソ連がナチス・ドイツに勝利した『戦勝記念日』です。ロシア首都モスクワでは、国威発揚のイベントが行われました。

毎年行われる式典が今回世界から注目されたのは、2月24日にロシアがウクライナに侵攻し、その戦争が今も続いているからに他なりません。

事前には、プーチン大統領が何らかの勝利宣言をするのではないか、あるいは正式に「戦争」を宣言し、大規模な動員に乗り出すのではないかといった観測がありました。

ロシア、プーチン大統領:「ロシアはきょうもドンバスの人々のため、祖国の平和のために戦っている。ナチズムを打ち負かした人々を記憶し、世界大戦の恐怖を繰り返さぬことが我々の義務である」

隣国に侵略した国の為政者が“戦争の恐怖”を語っています。

ロシア、プーチン大統領:「ロシアは西側と対話をし、合理的な解決策を求めていた。NATOは我々に耳を貸さなかった。つまり彼らには全く別の計画があったということ。ドンバス・クリミアを含む、我々の領土への侵略準備が公然と進められていた。危険は日ごとに増していた。ロシアは侵略に対して先手を打つことにした。それはやむを得ず、唯一の正しい判断であった」

結局、勝利宣言も戦争宣言もなく、従来の主張を繰り返すだけでした。背景には、長く続くロシア軍の苦戦も影響しているのかもしれません。

ウクライナ軍が反撃を開始しているとされるのは、北東部の都市ハルキウです。アメリカのシンクタンクの分析では、ロシア軍は攻略に失敗し、一時的な撤退を始めている可能性があるといいます。

元アメリカ陸軍准将、アンダーソン氏:「ウクライナがロシアに対し持ちこたえています。ウクライナの反撃がうまくいき、補給路を脅かしているため、ロシアはこのあたりまで部隊を戻し、再配置して耐えている状況です。橋を破壊したということは、ハルキウに部隊を戻せなくなるということです。つまりハルキウで戦うのはもう諦めたということです」

プーチン大統領の演説の後、モスクワではパレードが始まりました。アメリカ本土を標的にする大陸間弾道ミサイル『ヤルス』や、ウクライナへの攻撃でも使われている短距離弾道ミサイル『イスカンデル』は、いずれも例年登場する兵器です。

ただ、予定外のことも起きました。式典が始まる直前まで、国営放送は航空ショーが行われると伝えていましたが、航空機やヘリが広場上空を飛ぶことはありませんでした。

リハーサルでは、ウクライナに侵攻したロシア軍の象徴となっている『Z』の文字を描いていた戦闘機。そして「終末の日の飛行機」とも呼ばれる『イリューシン80』。核戦争の時に大統領らが乗り込み指揮をとるこの飛行機も登場する予定でしたが、ロシア大統領府は「悪天候のため航空部隊は参加しない」としました。

ウクライナに侵攻した今年、式典に外国の首脳の姿はまったく見られません。かつては、そうではありませんでした。

戦後60年の節目となった2005年、日本・アメリカ・フランス・ドイツなど50カ国以上の首脳が出席。戦勝国も敗戦国も関係なく、犠牲者を追悼する和解の時となりました。しかし、その連帯はいまや見る影もありません。

ウクライナにナチス・ドイツを重ね合わせるプーチン大統領。しかし実際のところ、ロシアの言う“特別軍事作戦”はナチスと同じ他国への侵略そのものです。

ヨーロッパで戦争が終結した日となっている8日に合わせ、ウクライナのゼレンスキー大統領は映像を公開しました。

ウクライナ、ゼレンスキー大統領:「マリウポリをはじめ、いくつかの都市は3度目の占領を受けた。ナチスは2年間の占領で1万人を、ロシアは2カ月の占領で2万人を殺した。第2次世界大戦から数十年後、ウクライナに闇が戻り、再び色のない醜い世界となった。再び異なるスローガンのもと、形を変え、悪が戻ってきた。ロシアは、ある国は価値を認め、ある国は存在を消し去ろうとする。『あなたたちは人工的につくられ、本当は存在しないため、何の権利もない』その非道な声が再び聞こえる」

ロシアはこの日を機に制圧した地域の“ロシア化”をさらに進めようとしています。大部分がロシア側に占拠された東部マリウポリでは9日、ロシアの国歌が鳴り響きました。住民はこうしたイベントに無理やり動員されているとみられています。

ウクライナ軍参謀本部:「ザポリージャ州の一時的に占領された地域では、占領者が民間人から身分証を奪っています。戦勝記念日のパレードに参加したら返すとのことです」

◆ウクライナ首都キーウにいる大平一郎記者の報告です。

私がいるキーウ中心部は、いつもより人が少ない印象です。というのも、9日の戦勝記念日に合わせて、ロシア軍が攻撃を激化させる可能性があると、ウクライナ政府が警戒を呼び掛けているからです。一方で、警察や兵士の数が増えている印象があります。

(Q.ロシアでの式典は、キーウではどう受け止められていますか?)

ウクライナの現地メディアは、プーチン大統領が演説の中で「ウクライナ」の国名を一度も出さなかったことに注目しています。英字紙のキーウポストは「ロシアお得意の歴史修正主義だ」というタイトルで論評を出しています。「ロシアが現在、侵攻している国の名前を一度も出さなかったのは、存在を消そうとしているからだ」と批判しました。

一般市民の方は、プーチン大統領の発言を冷めた目で見ている印象です。そもそも、これまでの経験で、ロシア側の発表には常に懐疑的でした。「プーチン大統領がきょう戦争宣言を出さなかったからといって、翌日に出さないということはない」と答えている方もいました。さらに「今後、ロシア軍が苦戦すれば、化学兵器や核兵器を使う可能性も出てくるのではないか」と心配する方もいました。早期に事態収拾する可能性は低いのではないかという悲観的なムードが漂っています。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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