旧ソ連時代から変わらぬ暮らし・・・未承認国家「沿ドニエストル共和国」その内部へ(2022年5月1日)

旧ソ連時代から変わらぬ暮らし・・・未承認国家「沿ドニエストル共和国」その内部へ(2022年5月1日)

旧ソ連時代から変わらぬ暮らし・・・未承認国家「沿ドニエストル共和国」その内部へ(2022年5月1日)

ロシアの次の標的と伝えられるのが、ウクライナの隣国、モルドバです。
その東部、ドニエストル川沿いに広がる未承認国家、沿ドニエストル共和国で今、何者かによる攻撃が相次いでいます。
内部で何が起きているのか。独自取材しました

▽攻撃相次ぐ“謎の未承認国家”追跡
(松本健吾記者) 「私は今レジーナという街に来ています。そしてこの川の向こう側が沿ドニエストル共和国となります。見渡す限り旧ソ連時代に建てられた集合住宅が目につきます。新しい建物はなく、時代が止まっている。そういった印象を受けます」
ロシア軍のミネカエフ副司令官は先月22日、沿ドニエストル共和国では「ロシア語を話す住民が抑圧されている」と述べ、モルドバへの軍事介入を示唆しました。すると、その3日後・・・
「沿ドニエストル共和国」の治安機関の建物に何者かがロケットランチャーを発射。
その翌日(先月26日)にはロシアのラジオを再放送するためのアンテナが爆破され・・・
さらにその翌日(先月27日)、約2万トンもの弾薬が保管されているロシア軍の弾薬庫にウクライナ方面から発砲があったといいます。
相次ぐ不穏な動きに境界の検問所では警備が強化され、長い行列ができていました。
(松本健吾記者)「検問所の脇にはロシア軍の戦車があります」
沿ドニエストル共和国には、平和維持を名目に1500人以上のロシア軍が駐留していると言われています。
西側メディアが入れない親ロシア派の未承認国家。内部で何が起きているのでしょうか?

「謎の未承認国家に入りました」
これは去年9月、日本人旅行者が撮影した映像です。モルドバの通貨が使えないため独自に発行する沿ドニエストル・ルーブルに両替。
「シリアルナンバー入り」
2014年には、世界で唯一のプラスチック貨幣も発行しているといいます。
(「沿ドニエストル共和国」を訪問した西村祐紀さん)
「承認されてないだけで独自の通貨もあるし、行ってみるとやっぱり、これはもう国だろうというような感じがしました」
独自の政府や議会、軍隊や通貨などを持つ未承認国家。
国会議事堂前に立っているのは・・・レーニン像です。
彼らの自称・国旗には、旧ソ連と同じ鎌とハンマーが描かれています。お昼に立ち寄ったレストランの名前は・・・「再びソ連で」
(「沿ドニエストル共和国」を訪問した西村祐紀さん)「モルドバとは全く違うというような感じで、本当にソ連が色濃く残っているなっていうのが随所に見られました」
街中にはこんな光景も・・・
(「沿ドニエストル共和国」を訪問した西村祐紀さん)「広場で偶然見かけた女子学生の集団なんですが、それが本当に昔の写真で見たソ連の制服。エプロンみたいなやつなんですがあれを着てて、ちょっと衝撃を受けましたね」

ドニエストル川沿いのこの地域はソ連時代から重工業が盛んで多くのロシア系住民が移り住みました。
ソ連が崩壊する過程で独立を宣言した「沿ドニエストル共和国」は、ルーマニア系のモルドバ政府軍と軍事衝突。
これを支援したロシア軍が「平和維持」を名目に駐留し、親ロシア派の実効支配が30年続いています。

「沿ドニエストル共和国」(在住歴15年 ティムさん)
「ここは『沿ドニエストル共和国』の典型的な村に住む家族を訪ねます」
現地で15年暮らすアメリカ人のティムさん。訪ねたのは知り合いのニコライさん夫妻。旧ソ連時代から、変わらぬ暮らしを続けています。
(旧ソ連時代から住む ニコライさん)「ここすべてが私の農園のです」
(ティムさん)「たくさんの子豚を飼っていますね。こちらはとても大きいですね」
食卓にはウォッカと・・・ブランデー。
(ニコライさん)「飲むときはこうやって飲むんです」
この日は家族たちなどが集まりロシア正教会の復活祭のお祝いです。
「さぁ仲間に乾杯!」
ロシアについてどう思っているのか尋ねてみると・・・
(ニコライさん)「プーチン大統領はすべきことをよくやった。ウクライナ人を殺しているんじゃない。ナチストを殺しているんだ」

▽ロシアの“次の標的”か・・・緊迫モルドバ
相次ぐ攻撃について沿ドニエストル共和国の大統領は・・・
(「沿ドニエストル共和国」クラスノセリスキー大統領)
「これらの攻撃の痕跡はウクライナの関与を示しています」
一方、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は、相次ぐ攻撃はロシア側の偽旗作戦だと分析。これを口実にして、駐留しているロシア軍がウクライナのオデーサに対し限定的な攻撃をする可能性があると指摘しています。

川を挟んで「沿ドニエストル共和国」と接するモルドバの街の住民は・・・
(モルドバの住民)「場所からいって私たちが最初に攻撃されるのでとても心配です」
こちらの男性は姉が「沿ドニエストル共和国」に住んでいます。
(姉が「沿ドニエストル共和国」在住)「みんな5月9日(戦勝記念日)に何か起こるかも、と思っている」
Q. 姉と電話できない?
「電話はしないようにしています。盗聴されているかもしれない」

緊張が高まる中、モルドバ国内の親ロシア派も活発化。
(松本健吾記者)「キシナウ市内にある後ろの建物。ウクライナの国旗の色に塗られていたのですが、最近になって親ロシア派が黒く塗りつぶしたということです」
親欧米路線をとるモルドバの大統領は・・・
(モルドバ サンドゥ大統領)「この地域には緊張があり、首謀者は情勢をさらに悪化させようとしている」
去年、ウクライナのゼレンスキー大統領と共にEU(欧州連合)加盟を目指していたサンドゥ大統領は、3月正式に加盟申請しました。
相次ぐ攻撃は“モルドバへの牽制”だとの見方も広がっています。
(ウクライナ ゼレンスキー大統領)「これがロシアの次のステップであることは明白だ。特殊部隊がそこで動いている。理由も明白で、その地域の情勢を不安定にするためだ。モルドバがウクライナを支持するなら、同じようなことが起きるという脅しだ」

5月1日『サンデーステーション』より
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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