悪天候で捜索難航・・・不明者15人なぜ見つからない?専門家に聞く(2022年4月26日)

悪天候で捜索難航・・・不明者15人なぜ見つからない?専門家に聞く(2022年4月26日)

悪天候で捜索難航・・・不明者15人なぜ見つからない?専門家に聞く(2022年4月26日)

北海道斜里町のウトロ漁港を出発した観光船『KAZU I』の連絡が途絶えて4日目。26日に、新たに発見された人はいませんでした。今のところ、乗員乗客26人のうち、11人が見つかっていますが、全員亡くなっています。

天候が悪化するなか、どう捜索を進めていくのか。

◆元第3管区海上保安本部長で、現在、日本水難救済会常務理事を務める、遠山純司さんに聞きます。

(Q.乗員乗客26人のうち半数以上がまだ見つかっていません。捜索が難航する理由は何ですか)

遠山純司さん:「大きく分けて、理由は2つ挙げられます。まず、潮流、波、沿岸地形の複雑さです。発生時間から時間が経っていて、強い波、潮の流れ、風があり、漂流位置を予測することが非常に難しくなっています。台風の進路予測をイメージしてもらうといいと思いますが、時間が経つと予測位置はどんどん広がっていくため、離れた所にたくさんの勢力を投じる必要が出てきます。

2つ目は、いまだに船体が発見されていないことです。船が沈んだとすれば、船内にかなりの人が残っていたのではないかと考えています。シケの海で、水温も冷たく、船の傾きも大きい危険な状態で、海に飛び込んだ人が何人いたでしょうか。多くの人が船内にとどまっていた可能性が否定できないと思います。流れている人の広範囲の捜索、それから船体が発見されていないことが、捜索を長引かせている理由になっていると考えています」

観光船は沈没した可能性が高いとみて、現場では、水中音波探知機『ソナー』を使って捜索が行われています。ただ、現場周辺は、水深100メートル以上まで深くなる場所があり、海上保安庁は、高精度のソナーをもつ測量船『天洋』を現場海域に派遣することを決めました。

(Q.船体が発見できない理由は何ですか)

遠山純司さん:「ソナーで反応があっても、それが海底の岩なのか違うものなのか、判断は非常に難しいです。『天洋』の投入によって、高精度のソナーを使用することができます。より深いところ、今使っているソナーの倍くらい、海底約200メートルまで探知できます。また、広い範囲を一度に短時間で探知できます。そのため、『天洋』の投入は非常に効果的だと思います。この捜索にかける海上保安庁の強い意志を感じています。海上保安庁だけではなく、現場で捜索にあたっている地元の漁船の方、水難救済会の会員になって頂いている皆さんの『海で人を助けるのは当たり前。1人でも多く救いたい』という強い意志を感じています」

事故当日、船が出航した午前10時ごろは、波が約30センチ、風速4.2メートル(斜里町)と比較的穏やかでしたが、事故当時の午後2時ごろには波が約3メートル、風速15~20メートルと波風ともに非常に強くなっていました。ただ、出航時にも強風・波浪注意報は、どちらも出ていました。

(Q.海上保安庁はどのように捜査をしていくと考えられますか)

遠山純司さん:「本件の捜査を、現地の第1管区海上保安本部がどう進めているかは把握していません。一般的な船の事故、過失によって行方不明になった事故の捜査では、まず過失点がどこにあったかを捜査します。具体的には、船の運航状況がどうであったか、出航前にどういう情報を入手していたか、関係者の意思疎通がなされたか、船体の安全確認がしっかりとなされていたか、出稿の判断は何を根拠になされたか、出航した後に海がシケて来たのであれば、引き返す判断はできなかったのか、船に異常が生じた場合に船長が的確な緊急対応ができたのかなど、状況に応じてしかるべき判断をする人間がきちんとした判断ができたのかなどが捜査の対象になると思います。

その判断の基準となるのが『運航管理規定』という書類です。これは運航会社が自ら定めて国土交通省に提出します。運航管理規定には、出航のための基準、例えば『波が1メートル、風は8メートルなら出航しない』など具体的な取り決めや、船の安全性、例えば『エンジンがきちんと回るか確認したか』『陸上と無線が通じるか』など、あらゆる安全運航に関する規定が盛り込まれています。これに沿って運航されていたかを調べると、私の経験では大概の場合、過失事故では運航管理規定に抵触するところがあります。これは一般論ですが、こういった形で捜査が進められると考えていいと思います」

(Q.運行管理規定に書かれる基準は、出航時だけのものですか。それとも、その後に予想される状況も書かれますか)

遠山純司さん:「後者だと思います。予報が発達して正確な気象予報がなされている時代です。出航時に平穏であっても、船が運航している時にシケてくると予想が出されていれば、安全運航の基準に抵触するから出航しないというのが、常識的な判断だと思います」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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