出航を1週間早めて“被害拡大”か・・・事故の原因は?傾いた船の状況とは?専門家に聞く(2022年4月25日)

出航を1週間早めて“被害拡大”か・・・事故の原因は?傾いた船の状況とは?専門家に聞く(2022年4月25日)

出航を1週間早めて“被害拡大”か・・・事故の原因は?傾いた船の状況とは?専門家に聞く(2022年4月25日)

乗客乗員26人を乗せた観光船『KAZUI』が、知床の海で消息を絶ってから3日目を迎えました。これまでに11人の死亡が確認され、15人の行方が分かっていません。

『KAZUI』には事故当時、乗客24人、乗員2人が乗っていました。知床半島の滝やヒグマなどを海から眺めることができる3時間のツアーで、23日から観光営業を始めた初日に事故は起きました。

『KAZUI』は23日午前10時ごろにウトロ漁港を出港。午後1時18分にカシュニの滝のそばから「エンジンが使えない」「船首が浸水」と118番通報があったということです。午後2時ごろには、『KAZUI』から運営会社に「船首が30度くらい傾いている」と報告があり、その後、連絡が途絶えました。

当時、波の高さは約3メートル、風速は15~20メートルで、強風・波浪注意報が出ていました。

◆一般社団法人『水難学会』の会長で、長岡技術科学大学の斎藤秀俊教授に聞きます。

(Q.風や波の高さが影響した可能性はありますか)

斎藤秀俊教授:「波と風の影響はあったと思います。ルートを見ると、知床岬で折り返して、戻ってきている時に事故に遭った可能性が高いです。この日、北西の風が急に強くなりました。この地形で北西の風が強くなると、船が陸に寄せられ、座礁した可能性もあります」

(Q.「船首が30度傾いた」ということですが、強風で横に傾いた可能性はありますか)

斎藤秀俊教授:「両方の可能性が捨てきれません。ただ通常、座礁して前に穴が空いた場合、浸水して前のめりになります。そのため、前のめりになったと仮定して話をしていった方が良いかと思います」

(Q.小型船だと一気に浸水しますか)

斎藤秀俊教授:「はじめはゆっくりです。ある角度を超えると、一気に浸水していきます」

(Q.「エンジンが使えない」という通報がありました。これは、船首が沈んでプロペラが浮いてしまって使えないということですか)

斎藤秀俊教授:「プロペラは船の下方についていて、空回りするとなると、相当傾いたことになります。今回は、エンジンそのものがストップして使い物にならないという表現だったと思っています。エンジンが動かなければ、漂流と同じです。風に吹かれて、岸に向かって流れた可能性もあります」

(Q.船が前のめりに30度傾いたとしたら、脱出は難しいですか)

斎藤秀俊教授:「ギリギリという感じです。その角度で上に出口があった場合、出口が天井にあるように見えると思います。実際はさらに、前後左右に揺れています。安定して立つことはほぼ不可能と言っていいでしょう」

(Q.行方不明の方が船の中に残っている可能性もありますか)

斎藤秀俊教授:「十分、考えられます」

(Q.なぜ船は見つからないのでしょうか)

斎藤秀俊教授:「この海域の近くに特徴的な海底地形があります。すり鉢状の穴が多数見受けられ、この中心部分は100メートル級の深さがあります。この周りは30~40メートルなので、一気に100メートルまで落ち込みます。もしこういう所に船体がはまり込むと、捜索はかなり難航すると思います」

運航会社の経験不足も指摘されています。元従業員などによりますと、2~3年前に社長が変わり、従業員を一斉に解雇。『KAZUI』は去年5月、漂流物と接触事故を起こした。その1カ月には、浅瀬に乗り上げる事故を起こし、業務上過失往来危険の容疑で、行方不明になっている船長が書類送検されています。

(Q.安全上の問題があったと思いますか)

斎藤秀俊教授:「こういう仕事は、経験が重要になります。定期的に研修を受け、付近の岩礁の位置などを常に頭の中に入れる、事故が起きた場合の対応を身に着けるといったことが必要です。今回、新しく入った甲板員がいるということですが、出向前に十分な研修が受けられていたのかが気になります」

(Q.エンジンが止まるのは、よくあることですか)

斎藤秀俊教授:「ままあることです。小型船舶を運転している船長だと、経験している人がいると思います。なぜかというと、新潟などでは冬の間、甲板の上に雪が積もります。燃料の給油口はだいたい甲板の上にあるので、雪解け水がしみ込んで、燃料タンクに水が入ってしまいます。それを知らずにエンジンを始動すると、その水がエンジンに回って、動かしているうちに出力が落ち、突然止まってしまいます」

同じような観光を5社が行っていましたが、事故を起こした会社は営業を1週間早めました。その理由について、資金繰りの問題だという話もありました。

(Q.営業開始時期を他社よりも早めたことについてはどう考えますか)

斎藤秀俊教授:「問題だったと思います。今回の一番の大きな問題は、低い海水温です。この時期は、落ちたら短時間で命を失う海水温です。時期をずらして、暖かくなった時期であれば、助かる人も出てきた可能性があります」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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