停電の危機を救った“揚水発電”日本の電力はなぜ冬に弱い?経済部記者解説(2022年3月22日)
首都圏で初めて『電力需給ひっ迫警報』が発令され、東京電力は、企業や家庭に節電を要請しました。
22日の電力使用率は午前10時から100%を超えていましたが、午後8時台に89%、午後9時台に90%と落ち着きました。発電量と使用料の推移を見ると、午前9時ごろから『揚水発電』が発電している割合が多くなっていることが分かります。
経済産業省の発表によりますと、22日の大規模停電の恐れはなくなったということですが、23日も予断を許さないということです。
揚水発電とは、余った電気を使ってダムに水をくみ上げておき電気の不足時に下に流して発電をおこなう仕組み。いわば巨大な「バッテリー」です。
◆経済部・延増惇記者に聞きます。
(Q.揚水発電が停電の危機を救ってくれたといえますか)
揚水発電が今回の救世主だったと思います。揚水発電は、夜間の電力消費が少ない時に、水をくみ上げておいて、緊急時に高低差を使って水を下ろし、タービンを回して発電する仕組みです。今回、需要と供給の差を埋める重要な役割を担いました。
最新の数字では、揚水発電は32%残っている状態です。決して多い数字ではありませんが、当初は午後8時以降に枯渇するという予測もありました。
(Q.23日はどうなりますか)
すでに使ってしまった68%を、夜間ですべてくみ上げることは難しいです。ただ、23日は日差しが出るので、22日は活躍できなかった太陽光があります。
(Q.電力会社間の“電力の融通”はもっとできませんか)
電気は蓄電池がないと貯められず、作った電気はすぐに使わなくてはいけません。したがって、自社の管内の受給管理が必要です。例えば今回は、関西電力が東京電力に融通しましたが、関西電力管内と東京電力管内のバランスを考えなくてはいけません。自社と他社のバランス管理を行うことは難しいです。
ある電力会社関係者に取材したところ、海外から苦労して調達した燃料で作った電気を、そう簡単に融通できないという市場の原理もあるようです。
(Q.今月16日の地震で火力発電所が止まったことが原因ということですが、なぜ電力需給ひっ迫警報が出るまでの事態になったのでしょうか)
日本の電気は冬に弱いとう慢性的な課題が見えてきています。東日本大震災以降、原発が停止し、世界的な脱炭素化の流れで再生エネルギーの普及が急速に進んでいますが、大部分を占める太陽光は、冬は日照時間が少ないため、発電効率という課題があります。蓄電池が普及して再生エネルギーの環境が整っていれば話は別ですが、再生エネルギーへの以降の谷間で、冬の安定供給が難しくなっています。
(Q.今後も電力不足は起き得ますか)
十分考えられます。ウクライナ情勢の緊迫化もあり、LNGや原油といった燃料が今までのように調達できない環境になっています。こうしたなかで、今回、課題が浮き彫りになったのだと思います。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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