「巻き添えではなく『ターゲット』に」激化する“市民への攻撃”意図は?専門家に聞く(2022年3月18日)

「巻き添えではなく『ターゲット』に」激化する“市民への攻撃”意図は?専門家に聞く(2022年3月18日)

「巻き添えではなく『ターゲット』に」激化する“市民への攻撃”意図は?専門家に聞く(2022年3月18日)

膠着(こうちゃく)状態が続く首都キエフ周辺で、ロシア軍の動きに注目が集まっています。アメリカ国防総省は、ロシア軍の動きをこのように分析しています。

○キエフ周辺では砲撃部隊が後方から前線に移動。首都攻略に向けて砲撃を強めていくとみられる。
○無誘導爆弾に頼る傾向。精密誘導弾が不足しているのか、節約しているのかは不明。
○ロシア軍は補給問題に苦しんでいる。

◆国際安全保障や現代軍事戦略が専門の、防衛省防衛研究所・高橋杉雄さんに聞きます。

(Q.ロシア軍はいまだに補給問題に苦しんでいるのでしょうか)

高橋杉雄さん:「進撃していくと、その都度、補給が伸びていくので、立て直すのは簡単ではありません」

(Q.戦況をどうみていますか)

高橋杉雄さん:「膠着状態に陥ったという米英の評価は正しいと思います。膠着を作り出したのは、北東部で1週間前、ウクライナ側がミサイルを使ってロシアの戦車を撃破した戦闘です。それを機に北東部の部隊の前進が止まりました。その結果、キエフの包囲を回避できたことが、大きかった戦果です。ただ、ロシア軍を押し戻すような攻勢をかけられていないので、ウクライナ軍も厳しい状況が続いていると思います」

(Q.ロシア軍は、次にどのようなことを狙ってくるでしょうか)

高橋杉雄さん:「戦局のもう一つの焦点になるのが、南部のミコライウです。ロシア軍はクリミア半島からヘルソンを攻略して、ミコライウに前進してきましたが、市街地の交戦で止まっています。一部の部隊が迂回しているようですが、まだ攻略できていません。ミコライウからは、オデッサに向かう幹線道路と、キエフに向かう道路が通じています。道路沿いでなくても戦闘はできますが、燃料や砲弾を運ぶトラック道路沿いにしか移動できません。ですので、道路を抑えるのは非常に重要です。今はミコライウで、クリミア半島から来るロシア軍にふたをしている形になっています。ここを守り切れるかどうかが一つの焦点だと思います」

(Q.市民への攻撃は激しくなってしまいますか)

高橋杉雄さん:「そうだと思います。ロシアは、民間人を積極的にターゲットにすることによって、ウクライナの政府や国民の心を折ることを狙っています。市民への攻撃を避ける理由はありません。無誘導爆弾の方が、精密兵器より安いので、狙いを絞る必要がないとすると、何のためらいもなく、無誘導爆弾で攻撃を加えていくことになると思います」

(Q.ロシアはなぜそこまでの方法を取るのでしょうか)

高橋杉雄さん:「ウクライナ全土を軍事的に支配できないことは不可能なことがあります。歴史的には、敵対的な土地を支配するのに、人口1000人につき200人の兵士・警察官が必要と言われています。ウクライナの人口は4000万人なので、単純に当てはめると80万人の兵力が必要です。ウクライナ政府・国民の心を折り、ロシアの臨むような停戦協定を押し付ける形でしか戦争を終わらせられません。そのために、市民は巻き添えではなく、積極的にターゲットとして殺傷するのが、ロシアの現状の戦い方だと思います」

(Q.停戦協議について、プーチン大統領は『双方の受け入れ可能な合意を目指す真剣な姿勢が見られない』とウクライナ政府を批判しました。停戦が遠のいているのでしょうか)

高橋杉雄さん:「遠のいていると受け止めざるを得ないです。南東部のドネツク州・ルガンスク州・クリミア半島の問題は多分、妥協ができないので、現時点で停戦が成立する可能性は低かったと思います。ロシアが補給をしていることを考えると、最初から時間稼ぎだった可能性が否定できません」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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