ウクライナ代表団「数日のうちに停戦に至る」“停戦”で避難民は戻れる?専門家に聞く(2022年3月17日)

ウクライナ代表団「数日のうちに停戦に至る」“停戦”で避難民は戻れる?専門家に聞く(2022年3月17日)

ウクライナ代表団「数日のうちに停戦に至る」“停戦”で避難民は戻れる?専門家に聞く(2022年3月17日)

ウクライナの首都キエフで出されていた外出禁止令は、日本時間17日午後2時で解除されました。今のところ、大規模な空爆などは確認されていません。ただ、南東部のマリウポリでは、幼い子どもや妊婦を巻き込んだ無差別な空爆がありました。

ロシア軍の無差別攻撃について、イギリス国防省は「ウクライナ上空の制空権が確保できず、防空圏外から発射するミサイルを多く使用。より精密性に欠ける兵器に依存していて、民間人の犠牲を多く生む結果に」と分析しています。

◆ロシア情勢に詳しい防衛省防衛研究所の兵頭慎治さん、ポーランドで取材する大越健介キャスターに聞きます。

(Q.イギリス国防相の分析についてどうみますか)

兵頭慎治さん:「分析は納得できるものだと思います。ロシアは制空権が取れておらず、空爆ができないので、防空圏外から制度が落ちるミサイルで攻撃をしています。しかし、無差別攻撃はまったく許されるものではありません。

キエフは外出禁止令が出されましたが、大きな動きはありませんでした。膠着状態にあるとみられていますが、長距離砲撃はあるようです。南部で無差別な攻撃が強まっている背景には、南部を早く制圧したいというロシアの焦りが感じられます」

(Q.南部を制圧する狙いはなんですか)

兵頭慎治さん:「ルガンスク・ドネツクの東部2州から南部まで制圧して、補給などの軍事作戦をやりやすくすることと、オデッサなどの交易拠点を抑えてゼレンスキー政権に圧力をかける狙いがあると思います」

NATO(北大西洋条約機構)はロシアの脅威に備えて、東欧での部隊の大幅な増強、ミサイル防衛の強化などを検討しています。

(Q.ロシア軍への警戒はどう変化していますか)

大越健介キャスター:「隣国で戦いが長期化し、複雑化しているので、ポーランドでも警戒感が高まっているように感じます。それは軍事面、市民感情の面、両方です。

私がいるジェシュフは、ウクライナとの国境から約70キロの場所にあります。ジェシュフにはある国際空港は、ウクライナでの戦闘開始以来、NATOの軍事拠点として使われていて、対戦車ミサイルをウクライナへ輸送する中継地点になっています。そして、攻撃を受けた場合に備えて、地対空ミサイルも最近、配備されました。

市民感情でも、軍備を増強すべきだという意見があります。ただ、その一方で、戦火が飛び火するのではないかという不安も高まっています。私が話を聞いた人は『何があるか分からないので、自分の車は予備の分も含めて常にガソリンを満タンにしている』と話していました」

(Q.NATOの東欧での軍備増強の動きは、ロシアに対する抑止ですか。それとも、ロシアとNATOの戦争が起こる可能性を踏まえてのものですか)

兵頭慎治さん:「ポーランドもリアルな危機感を持っているんだと思います。すでにポーランドとの国境に近いウクライナ領内で、ロシア軍による攻撃が発生しています。ポーランドもいつ火の粉が降りかかってくるか心配していると思います。

ただ、NATOの東欧での大幅な舞台増強は、東欧の動揺を鎮めるため、NATOの防衛を強化するためのもので、ウクライナ軍とともにロシア軍に立ち向かうということではありません。直接的にロシア軍の動きの抑止になるかというと、そうはならないと思います」

一方、停戦協議で“一定の進展”が得られる可能性が出てきました。イギリスのフィナンシャル・タイムズによりますと、停戦をめぐり15項目を軸に議論されていることが分かりました。その15項目には『ウクライナNATO加盟断念』『ウクライナ軍の維持』『ウクライナに他国基地を置かない代わりに、アメリカ・イギリス・トルコといった欧米側が安全を保障すること』『ロシア軍の撤退』『ロシア語の公用語指定』が含まれているということです。

(Q.注目するポイントはどこですか)

兵頭慎治さん:「気になるのはロシア語の公用語指定です。これは今の軍事的な動きの後に、ウクライナがどういう政治体制になるのかを視野に入れた話だと思います。ロシア系住民やロシア語を第一言語として話す人たちに配慮したうえで、次の政治体制はロシアよりの政権を目指そうというロシア側の意図が感じられます」

(Q.ロシア側が要求する非武装化に関して、ウクライナ側は『絶対的な安全保障が必要』としています。アメリカ、イギリス、トルコが守ることで、話がまとまると思いますか)

兵頭慎治さん:「ウクライナは、自国が中立化を宣言するだけではなく、他国からも安全を保障してもらいたいという主張です。1994年のブタペスト覚書は、ウクライナが旧ソ連から継承した核兵器を破棄する代わりに、アメリカ・イギリス・ロシアがウクライナの安全を約束するものです。ウクライナはこれを一つのモデルにしたうえで、ロシアではなくトルコを入れた形で、ブタペスト覚書を上回る安全保障を担保してもらいたいということです。

ただ、アメリカ・イギリス・トルコは3カ国ともNATO加盟国です。そのため、ロシアは納得しないのではないでしょうか」

ウクライナの代表団トップ、ポドリャク大統領府顧問は「数日のうちに停戦に至る」と発言。また、ゼレンスキー大統領、プーチン大統領が調印できる文書の作成も進めていて、首脳会談の必要性を強調しています。ロシア外務省のザハロワ報道官は「ウクライナ側が中立化に合意すれば、ロシア軍の攻撃は終了する」と表明しています。

(Q.停戦に向け、明るい兆しが見えてきたと考えていいですか)

兵頭慎治さん:「停戦合意のハードルは依然として高いと思います。双方が合意できないものも混ざっていて、停戦合意が近いと考えるのは不透明です。ただ、両者の論点が15項目に整理されたのは大きな前進です。ロシアはクリミアの主権承認を要求していましたが、15項目からは除外されているようです。ロシア側も歩み寄りの姿勢を示しているとみられるので、論点をさらに絞ったうえで、お互いが歩み寄って交渉していけば、停戦合意の可能性が高くなるとみています」

(Q.戦火で街は痛み、ロシアが実効支配している地域もあります。避難している人たちが元の生活に戻れる可能性はあると思いますか)

兵頭慎治さん:「ウクライナが求めている“即時停戦”でとどまると、戦闘は中止されますが、ロシアが実効支配している地域を返還することにはつながらないと思います。“ロシア軍の撤退”まで合意できた場合、避難した人たちが祖国に戻ることができると思います。今後の協議の行方を見守りたいと思います」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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