「使うつもりはない」ウクライナ『人道回廊』設置 ロシア“攻撃間近”か・・・専門家解説(2022年3月8日)

「使うつもりはない」ウクライナ『人道回廊』設置 ロシア“攻撃間近”か・・・専門家解説(2022年3月8日)

「使うつもりはない」ウクライナ『人道回廊』設置 ロシア“攻撃間近”か・・・専門家解説(2022年3月8日)

ロシアとウクライナの3回目の停戦協議が行われましたが、具体的な成果はありませんでした。

ウクライナ代表団・ポドリャク大統領府顧問:「残念ながら、停戦に関しては成果がなかった」

ロシア代表団・メジンスキー大統領補佐官:「期待は実現しなかった。次回、本質的な意味で一歩前進できることを願っている」

停戦の兆しが全く見えないなか、焦点となっているのが、市民が避難するルート『人道回廊』です。

ウクライナ、ゼレンスキー大統領:「人道回廊に関する合意があったが、ロシアの戦車や爆弾が現れた。マリウポリの住民に食料や医薬品を届ける道路が地雷でふさがれた。避難者が乗るバスも砲撃された」

赤十字国際委員会の事務局長は、マリウポリの人道回廊に地雷が埋まっていたと明かしています。

国連安保理でも緊急会合が開かれ、ロシアへの非難が相次ぎました。

ウクライナ、キスリツァ国連大使:「ロシア軍は、人道回廊を通じた民間人の避難を何度も妨害してきた。さらにゾッとするのは、ロシア兵が避難者の乗る車両に発砲したり、人道回廊に砲撃を行ったことだ」

アメリカ、トーマスグリーンフィールド国連大使:「場所と期間を定めて人道支援の安全なルートを確保するというウクライナ側の提案にロシアが同意し、真摯に守ることを求める」

しかし、ロシア側は一方的な主張に終始します。

ロシア、ネベンジャ国連大使:「ウクライナ当局はあらゆる手段を使って、市民や外国人がロシアに避難することを阻止している」

プーチン大統領も同様の主張をしています。

プーチン大統領:「ロシア軍は市民を避難させるため、何度も停戦を宣言した。しかし、ウクライナ側が住民に対する暴力や挑発行為で阻止した」

ロシア側が発表した人道回廊は、キエフや南部マリウポリなど5つの都市からのルート。しかし、ほとんどがロシアやベラルーシに避難するものです。その結果、ウクライナ側が合意したのは、北東部スムイからポルタワまでの国内ルートのみとなりました。

ウクライナ、ベレシュチュク副首相:「市民を避難させる人道回廊のルートは1つしかない。他のルートは認めない。ロシア側は人道回廊の爆撃を計画しており、避難者を別ルートに誘導する工作が準備されている情報がある」

現地では実際に避難が始まりました。本当に安全は守られるのでしょうか。

ウクライナ、ゼレンスキー大統領:「紛争地域から安全地域へ移動しようとしていた市民がすでに殺害されたように、避難中に撃たれる可能性がある。もしロシアが車両や市民を攻撃するのであれば、全世界が目撃することになる」

侵攻開始の時点で15万人以上が国境付近に集結していたロシア軍。アメリカ国防総省の高官によりますと、すでに100%近くが投入されたといいます。先月末の時点でロシア軍の長い車列がキエフ郊外まで迫っていましたが、この数日、大きな前進はないといいます。

アメリカ国防総省、カービー報道官:「ロシア軍は失速し、いら立っている。ここ数日は目立った進展がない。ロシア軍は北部と北東部では、いら立ちのせいか、長距離射撃に頼ることが増えているようだ。長距離射撃に頼れば被害は拡大し、死者や負傷者も増える」

キエフから南に80キロの街では、実際に被害が出ています。

CNN、チャンス記者:「無差別と思われる砲撃やロケット弾攻撃で被害を受けた住宅です。一家の生活は破壊されました」「こちらは子どもの寝室ですね。二段ベッドですが、砲撃で屋根が崩れて下敷きになっています。慌てて避難したのでしょう、おもちゃが残ったままです」

キエフへの攻撃が間近との見立ても出ています。アメリカのシンクタンクによりますと、24時間から96時間以内に攻撃を始める準備が進められているといいます。

キエフ中心部から少し離れたところで暮らす、リディア・セレンコさん(32)は朝から、異変を感じていました。

キエフ在住、リディア・セレンコさん:「今日は比較的平穏で、大規模な空爆もありません。中心部も警報は1~2回だけで、避難所に駆け込む必要もなく、自宅待機で済んだそうです。急に静かになって不気味。激しい攻撃の準備をしているかも」

しかし、ロシア側が提案した人道回廊は「使うつもりがない」と言い切ります。

キエフ在住、リディア・セレンコさん:「誰も使わないでしょう。正気とは思えません。命を狙う殺し屋について行く人はいない。人殺しをした国が安全なわけがない。だからこそ、ウクライナ人は必死に抵抗するのです」

両国が合意したスムイからポルタワまでの人道回廊は、ようやく機能し始めたということです。一方、ウクライナ外務省は8日、5日から設置されていたものの、一度も機能することがなかったマリウポリからザポリージャへの人道回廊に向けて、ロシア軍が砲撃し、一時停戦が破られていると伝えています。

◆ロシア情勢に詳しい、防衛省防衛研究所の兵頭慎治さんに聞きます。

1つではありますが、ウクライナ国内の避難ルートが確保できたことは、一歩前進だと思います。ただ、一時停戦が順守され、住民が安全に避難できるかどうかは気掛かりです。今後、首都キエフにいる人たちが、どういう形で避難していくのかがポイントになると思います。ロシア側も、主要都市を本格的に軍事攻撃するつもりでいるので、被害が拡大しないためにも、早く住民の避難をさせたいと思っていると思います。

ロシア軍は、南部の支配地域を拡大していて、オデッサなどの軍事掌握を目指していると思います。黒海に面した貿易の拠点を抑えることによって物流を阻止し、東部2州も含めてロシアの支配地域を広げる思惑があると思います。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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