カギは『老化細胞』筋力が大幅回復、内臓機能の改善も…“老い”を防ぐ最新研究の成果(2023年11月21日)

カギは『老化細胞』筋力が大幅回復、内臓機能の改善も…“老い”を防ぐ最新研究の成果(2023年11月21日)

カギは『老化細胞』筋力が大幅回復、内臓機能の改善も…“老い”を防ぐ最新研究の成果(2023年11月21日)

今や4人に1人以上が65歳以上の超高齢社会の日本。いわゆる“団塊の世代”は、2年後に75歳以上になります。そんな現状とどう向き合い、暮らしていくか。東京・江東区にある日本科学未来館で、常設展示が7年ぶりにリニューアルされ、そのうち一つのテーマに「老い」が選ばれました。

体験はパンフレットから始まっています。

下村彩里アナウンサー:「エリアの案内書です。すごいぼやけてる。全然見えない」

耳の老化を体験できる機械。「さとうさん」と呼ばれた時だけボタンを押すクイズなのですが…。

下村アナウンサー:「ええ?今絶対サトウさんでしたよね?」

病院での名前の呼び出しも、聞き分けるには苦労します。

科学コミュニケーター 小林沙羅さん:「(耳が老化すると)特に高い音、高音域が聞こえにくくなる。同じ音を聞いていても、聞こえ方が違うことに目を向けていただいて、自分と違う聞こえ方の人と、どういうふうにコミュニケーションをとったらいいか考えるきっかけになればいいなと」

廊下による認知の疑似再現ができるプリント機では、「笑顔」「怒り顔」をそれぞれ撮影。そして出てきたのは…。

下村アナウンサー:「できました。ちょっと衝撃です。結構、口元をへの字にしたんですけど、小さくまとまっていますね。怒った表情をしたつもりなんですけど…」

AIが怒り顔を検知し、何とも言えない表情に変換。老化で認知機能が低下すると、ネガティブな表情を認識しづらくなるケースがあるといいます。

日本科学未来館 浅川智恵子館長:「超高齢化社会を迎えているこの日本が、老いに対応していく様々な科学技術を開発して広めていくことによって(技術を)世界中に広げていけるチャンスがあると思う」

ただ、老い方には個人差があります。事実、75歳以上の要介護者率は跳ね上がり、闘病生活の末に亡くなる例も少なくありません。どう老いていくのか。理想の老いを研究し、ついにその原因の1つとなる物質を突き止めた、東京大学医科学研究所の中西真教授(62)に話を聞きました。

中西教授:「老化は体の中にたまってくる、慢性の炎症が原因と考えられています。例えば、老化細胞のような体に炎症を起こすような細胞が蓄積してくる。それが一つの原因であると捉えられています」

実験では、年老いたマウスと、老化細胞を取り除いたマウスの毛並みに変化がありました。

中西教授:「実際に毛の本数を計ったり、毛の太さを測ったりしないと結論は出せないが、見た目で多少の違いがあるのはそうだと思う」

さらに具体的だったのは、マウスの筋力です。鉄棒のぶら下がり耐久時間は、老化細胞を取り除くことで30秒から100秒へと延長、筋力の回復がみられました。

中西教授:「想定外。こんなに良くなっていいのかと逆に思ったくらい、よく効くなと」

そもそも、老化はなぜ起こるのでしょうか。本来、老化細胞は人間にもともとあって、絶えず「免疫」がそれを排除しています。しかし、取り除けないまま蓄積すると、老化細胞から炎症を引き起こす物質が放出されます。これにより慢性炎症が起こり、筋力や内臓機能が低下、老化につながるといいます。中西教授はこの細胞に弱点があることを発見。それは細胞の中にある『GLS 1』と呼ばれる酵素で、この働きを封じることで、細胞を消滅させることに成功しました。

現在、老化細胞から炎症性物質の放出をピンポイントで抑制する技術の研究を進めている中西教授。飲み薬として服用できる未来を描いています。

中西教授:「人間の病気の多くは、老化に伴って起きる病気が多い。老化が予防できれば、病気から解放される可能性がある。健康で最大寿命近くまで生きるというのが、我々の大きな目標」

◆「老い」を防ぐ最新の研究の成果

老化細胞を取り除く薬をマウスに与えたところ、筋力が改善していましたが、運動機能だけではありません。中西教授によると、腎臓や肝臓の機能、肥満に伴う動脈硬化などの改善もみられたということです。

(Q.歩行速度の低下や加齢による様々な目の症状も改善されますか?)

中西教授:「まだ科学的な証明はされていないが、歩行速度の低下は、筋力低下によるものと思われるので改善する可能性がある。加齢による様々な目の症状も、老化細胞除去が効果的という論文報告がある」

(Q.老化細胞を取り除く薬を、我々が使えるようになるのはいつごろになりますか?)

中西教授:「どれくらい効果が出るものを作り出せるかは、まだ回答することはできない。2040年までに社会実装、つまり社会で活用することを目指す」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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