「せき止め薬」不足 背景に「ジェネリック医薬品」関係 薬価下がり…製造増産に課題(2023年11月17日)
インフルエンザなどの感染拡大を受け、せき止め薬の不足が深刻だという。その背景を取材すると、ジェネリック医薬品が深く関係していることが分かった。一体、どういうことなのだろうか?
■せき止め薬の不足 街の人は?
いとう王子神谷内科外科クリニック 伊藤博道院長:「せき止め(薬)がこんなに不足したっていうのは、26年間、お医者をやっていますけど、もちろん初めてのことです」
新型コロナウイルスやインフルエンザなどで症状を抑えるために処方される、せき止め薬。
例年12月から3月にかけてインフルエンザが流行しているが、今年、東京都では流行注意報基準をすでに8週連続で超えている。
こうしたなか、全国的にせき止め薬の不足が続いているのだという。
全国的にせき止め薬の不足が問題になっていることについて、街の人に聞いてみた。
60代:「(せき止め薬が)ないのはちょっと困りますね。自分がインフルエンザにかからないように気をつけてます」
60代:「薬を処方されても薬局に薬がなくて、処方された方が薬局を転々と渡り歩くみたいなことを聞いている」
■ジェネリックの生産減少→薬不足に
なぜ、ここまで不足しているのか?
実は今、日本の薬のおよそ8割は値段が安い後発薬=ジェネリック医薬品となっている。
しかし、2020年以降、ジェネリック医薬品メーカーによる製造工程や品質管理の不正が相次いで発覚。これまで10社以上が業務停止命令や改善命令を受け、生産量が減少。その結果、薬が足りなくなっているのだ。
政府も7日、国内の主要製薬会社23社に対して、現在不足しているせき止め薬などの増産を直接要請。対応に乗り出しているが、いまだ供給は追い付いていない。
■医療機関や薬局で困惑「入荷予定が全くない」
東京・北区にあるクリニックには、インフルエンザの検査で陽性になった患者がいた。
伊藤院長:「ちょっとせきが出ますけど、空前のせき止め(薬)不足で、かなりないことが多いんですね」
患者の父:「子どもが苦しんでいるので、症状が改善される薬が手に入らないと、ちょっと不安が強いですね」
伊藤院長:「いつもインフルエンザや風邪の症状の患者さんに、1週間くらいはせき止め(薬)を出したいんですけど、今はおおよそ5日ほどにしています」
まだ在庫を残しているという北区にある薬局でも、残りはあとわずかだという。
薬剤師 栗原貴彦さん:「せき止め(薬)が現状ここにあって、合わせて1000錠あるかどうかだと思います。今、入荷の予定が全くない。この状態ですと、今月いっぱいもてばいいかなってところ」
■医療費を抑えるため…政府がジェネリック促進
今、せき止め薬が不足している背景には、ジェネリック医薬品を取り巻く問題があるという。
ジェネリック医薬品は後発医薬品ともいわれ、新薬の特許が切れた後、他のメーカーが製造する同じ効果のある薬のこと。開発費用がかからないため、安い値段で販売されているのが特徴だ。
政府は膨らむ医療費を抑えるため、ジェネリックの利用を促進してきた。
皆さんも調剤薬局で「ジェネリックにしませんか?」と言われた経験があるのではないだろうか。
■ジェネリック内服薬の薬価 10年前の約半額
ジェネリックに関しては2005年に薬事法が改正され、企業の新規参入などがしやすくなったことで、ジェネリックの割合というのは2009年に35.8%だったのが、2021年には79%と、およそ8割になった。
また、医薬品メーカーが販売する薬の値段は政府によって決められますが、ジェネリック内服薬の去年の薬価は2012年と比べて53.5%とほぼ半額で、下がり続けているという。
■原材料費の値上がりで打撃も
医療費負担が減り、良いことのように思うが、この弊害が今回のせき止め薬の不足だという。
医療ジャーナリストの森まどかさんは、「薬価が下がり続け、ジェネリック医薬品のメーカーは設備投資にお金をかけることができず、限られた設備で多くの種類の薬を製造している。そのため、せき止め薬の需要が増えたからといって製造ラインに余裕がないため、簡単に製造量を増やすことが難しい」と指摘している。
さらに、医薬品メーカーの負担となっているのが、近年の物価高騰などによる原材料費などの値上がりだ。
森さんは、「原価が6割から8割を占め、作れば作るほど赤字というジェネリック医薬品も出てきている。ジェネリック医薬品の安定供給のため経済状況の実態を踏まえた薬価の設定を行い、医薬品メーカーが適正な利益を上げられる仕組み作りが必要なのではないか」と話している。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2023年11月16日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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