“ハワイ史上最悪の山火事”から3カ月 現地取材で見えた危機(2023年11月5日)

“ハワイ史上最悪の山火事”から3カ月 現地取材で見えた危機(2023年11月5日)

“ハワイ史上最悪の山火事”から3カ月 現地取材で見えた危機(2023年11月5日)

マウイ島で発生した“ハワイ史上“最悪の山火事”から、まもなく3カ月。

大人気観光地の街はほぼ焼け野原になり、死者は99人、被害額は約8700億円にのぼるとも言われています。そんな中、独自取材で明らかになったのが「島の新たな危機」。マウイ島で一体、何が起きているのか?現地のいまを取材しました。(11月4日OA「サタデーステーション」)

■「次の災害」島の観光地から“悲鳴”
取材班が降り立ったのは、ハワイ・マウイ島の空港です。

笹原加奈子ディレクター
「子供連れの家族の姿が目立ちます」

ニュージーランドからの観光客
「泳いだり、野生の動物を見に行ったりして楽しみます。被災地に配慮しつつ観光客として貢献したいです」

アメリカ・ネバダ州からの観光客
「子どもたちにサーフィンをやらせて、ゴルフもしたいです。マウイに住む友達が『旅行で使うお金で街が助かる』と言っていたので来ました」

マウイ島はハワイ郡の中部に位置する2番目に大きい島。去年の観光客数はおよそ290万人で、島の収入のおよそ8割が観光業という、観光で成り立っている島です。しかし、未曽有の山火事からまもなく3カ月、島は“危機”に陥っているといいます。

まず向かったのが、空港のすぐそばから飛び立つ人気のヘリツアーです。壮大で美しい景色が眼下に広がりますが、被災エリアの周辺に差し掛かると…

『エアーマウイ』リッチー・オルステン運営責任者
「被災エリアの飛行禁止が続いています。被災エリアを避ける別のルートを作りました」

未だに被災エリア上空は飛行規制が続いているため、複数のツアー内容を変更しているといいます。火災後、客足は10分の1にまで減少。従業員を減らすなど、大きな打撃も受けました。

『エアーマウイ』リッチー・オルステン運営責任者
「観光客は少しずつ戻ってきました。それでもこの時期の通常の客数をはるかに下回っています。私たちは今、次のフェーズ、つまり“次の災害”に突入しているのです。それは観光客の不足であり、私たちの経済に大きな影響が出ています」

“次の災害”に突入している。

実は被害が大きかった地域も島全体でみるとごく一部で、他の地域は通常通りです。しかし、観光客は火災があった8月に急減したまま、今もほとんど戻らず、経済が窮地に立たされている、というのです。

空港近くには、観光客が来なくなったことで大量のレンタカーが余り、野ざらしの状態になっていました。

島中部にあるリゾートビーチには、島民にまじり観光客は少なからずいるようですが、近くの店が並ぶエリアに行ってみると観光客の姿はありません。

土産店のオーナー
「きのうは何も売れていません。信じられますか?忙しい時は系列店含め1日1000人以上が店で買い物をしていました」

別のエリアの人気のサーフショップも、広い店内はガランとしていて、レンタル品はほとんど残っている状態だといいます。

サーフショップのスタッフ
「今は地元の客しかいません。以前の10分の1以下です」

■甚大な被害が出た「ラハイナ」店と家を失った男性の苦悩

笹原加奈子ディレクター
「黒い幕で覆われた向こうの住宅地に、燃え残った家が見えます」

被災エリアは今でもほとんど手つかずの状態です。ラハイナでは約2200棟が破壊されるなど、街のほとんどが炎に包まれました。そこで我々が出会ったのが、火災で経営していた店を2つも失ったデービッドさんです。

火災で2つの店を失ったデービッドさん
「ここはチームで経営するレストランです。ラハイナのレストランと周辺の建物は全てなくなってしまいました。焼けた店はいつもたくさんの人が行き交って、世界中から観光客が来ていました」

ラハイナは旧ハワイ王国の首都で、歴史建造物地区に指定されるなど大人気の観光地でした。その中でも、デービッドさんの店は人気で、人が絶えなかったといいますが、その店は跡形もなくなってしまいました。復旧には大きな壁が立ちはだかっているといいます。

火災で2つの店を失ったデービッドさん
「はっきりとした復旧スケジュールはわかりません。元の場所で再建したいですが、全焼した店は大きくて古い建物だったので、まったく同じもので復活できないと思います」

デービッドさんは火災で家も失いました。

火災で2つの店を失ったデービッドさん
「6週間も建築作業をしています。家族のために家を作っています」

今は家族と数週間ごとに知り合いの家を転々として、店の復旧を考えながら仮設住宅を自分の手で建てなくてはいけない状況です。

火災で2つの店を失ったデービッドさん
「火災後、家を建てるために毎日ここに来ています。私は家と仕事を失い、家族や自分の命も失うところでした。色んなことが起こり、私たちは助けが必要です。みなさんが敬意を払って来てくれれば、私たちが前進する原動力となります」

一方で、“観光客を単純にどんどん受け入れればいい”とはいかない事情もあります。

■観光規制解除に揺れる島新たな課題も

ラハイナの高台にある中学校。建物自体の被害はまぬかれたものの、大量の灰などが飛散し、2カ月近く閉鎖されたままでした。

自宅が被災したラハイナの中学校教師
「ほかの学校に転校した生徒もいるので、ラハイナにいる子供は少なくなるでしょうし、将来どうなるかは誰もわかりません」

土壌検査では汚染されていないことが確認され、生徒たちは戻ってくることが決まりましたが、教師のブレイクさん自身は自宅を失い、仕事にはまだ復帰できていない状況だといいます。

自宅が被災したラハイナの中学校教師
「観光客には戻ってきてほしいと思っています。私の父は事業主なので彼にとってはいいことだし、経済にとってもいいことですから。でも住民の全体的な意見としては観光客がラハイナに来るには少し早すぎるように思えます」

ホテルで避難している人は、6800人にのぼります。自宅は無事でしたが、家族で避難生活を送っているポノさん。

ホテルで避難生活を送るポノさん
「私はこの道路の向かいの家に住んでいます。大気の状態が悪くなった時は向こうに見えるホテルに滞在します」

“大気の状態が悪くなった場合”とは、どういうことなのでしょうか?自宅にお邪魔すると…

ホテルで避難生活を送るポノさん
「壁の向こうにはガレキの粉塵もあるから、それを防いでいるんです」

被災エリアと隣接した場所にあるポノさんの自宅。周辺には粉塵などの飛散を抑えるためだというスプリンクラーが作動しています。問題はガレキから出る“有害物質”です。

ホテルで避難生活を送るポノさん
「あそこに旗がみえますか?旗がこちらに向ってなびいている場合、自宅に有害物質が入り込む可能性があります」

常に有害物質に細心の注意を払い、普段は窓もドアも締め切ります。

有害物質は水道水にも。

ホテルで避難生活を送るポノさん
「水道水は出るけど、今は皿洗いなどにしか使えません。この水で料理することはできないから、(料理するときは)ペットボトルの水を使います」

未だに有害物質が混ざっている可能性があるため、当局から歯磨きや入浴などでの使用を控えるよう、注意喚起が出されています。

ホテルで避難生活を送るポノさん
「有害物質が不安だから、日中は仕事をして、ペットの世話などをおこない、夜はホテルで睡眠をとります。これが現在の我が家なのだから仕方がありません、帰れる家があるだけで幸せです」

マウイ郡は今月1日、島の西側に出されていた観光規制の解除をおこないました。

しかし、市民生活の復興が進まない中での解除に、西側のホテルで避難生活を強いられている市民ら3500人以上が解除の延期を求める嘆願書に署名するなど、島はいま揺れています。

ホテルで避難生活を送るポノさん
「問題は観光客がどの規模やペースで戻って来るかということです。訪れるときは配慮の気持ちを持ってくれというのが唯一の願いです。衝突や問題は起きるかもしれませんが、私たちは前に進まなければなりません」

■「人出不足」「人口流出」などの問題も
マウイ群の災害対策チーム、ダレル・オリベイラ長官は現状についてこう話します。

マウイ群災害対策チームダレル・オリベイラ長官
「観光地マウイの場合は以前から手頃な価格の住宅が不足していたなか、火災でさらに2000戸の住宅が失われたため、いま直面している課題は住宅不足。島国なので車で島と島を移動するという生活はできず、一時的ではない解決策をみつける必要があります」

人口流出の問題もあるといいます。

マウイ群災害対策チームダレル・オリベイラ長官
「また2000戸を超える住宅や商業施設を再建するために、マウイでの建設業界の能力を増やす必要があります。一部の人はそうした現実に直面し、自分で建て直しを行わざるを得ないこともあるでしょうし、家を失った被災者たちはマウイ島を離れ始めていて、人口が減少しています。住宅不足が原因となり、ハワイのほかの島や州外に移住した可能性があります」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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