ロシアが首都に攻め込まない理由は?“停戦交渉”の狙いは?総力解説(2022年2月28日)

ロシアが首都に攻め込まない理由は?“停戦交渉”の狙いは?総力解説(2022年2月28日)

ロシアが首都に攻め込まない理由は?“停戦交渉”の狙いは?総力解説(2022年2月28日)

ロシアとウクライナの停戦に向けた交渉が、日本時間の28日午後7時過ぎから始まりました。

ロシアメディアによりますと、両国の代表団には大統領府、外務省などの代表者で構成され、ウクライナからは国防大臣も出席しています。

交渉前、ロシア側は「ウクライナの中立化と非軍事化が前提条件」とし、ウクライナ大統領府は「即時停戦とロシア軍の撤退」が目的だと発表しています。ゼレンスキー大統領は「交渉の結果には期待していない」と進展に懐疑的な見方を示しています。

軍事・安全保障政策が専門の小泉悠さんと、ロシアの問題全般に詳しい防衛省防衛研究所の兵頭慎治さんに聞きます。

(Q.両国の主張が折り合う点はありますか)

兵頭慎治さん:「ロシア側は、ウクライナの非軍事化と中立化の2つを要求していますが、これはプーチン大統領が軍事侵攻をやっている目的そのものなので、ロシアからすると、交渉条件を妥協するのは難しいです。そのため、クライナ側がどこまで歩み寄ることができるのかが、今回の交渉の焦点だと思います。

ただ、今の状況をみていると、ロシア側に本気で交渉する様子はありません。ロシアとウクライナが交渉のテーブルについたことは大きな前進だと思いますが、この交渉で一気に事態が打開し、停戦に向かうことは難しいかもしれません」

小泉悠さん:「プーチン大統領は、この戦争を始める時に、ウクライナの非軍事化と中立化に加えて『ウクライナの非ナチ化』と言いました。つまり、今のウクライナ政権はナチス思想を持っていて、ロシア系住民を組織的に虐殺していると発言しました。そうレッテルをはりながら、軍事侵攻をしていったロシアから、中立化と非軍事化を突きつけられて『分かりました。これで停戦にしましょう』と言った場合、その次が怖いです。『NATO(北大西洋条約機構)には入りません。我々の軍隊も持ちません』と言った後のことが怖いので、簡単にはのめないと思います。

他方で、即時停戦、ロシア軍の撤退は全くそうだと思いますが、首都キエフを伺うまでになったロシアが何もなしに帰ることも考えにくいです。多数の住民を巻き込む悲惨な市街戦が拡大されるかの瀬戸際にあるので、今回の交渉がまとまってほしいとは思うものの、楽観できる要素が見当たりません」

兵頭慎治さん:「ロシア側は主張を全く弱めていませんし、戦闘状態も続いているなかで、外交交渉をやろうとしても、ウクライナ側が歩み寄ることは難しいのではないかと思います」

(Q.交渉が決裂した場合、再び戦闘が激化する可能性はありますか)

小泉悠さん:「当然そうなると思います。現状、ロシア軍がウクライナ軍の頑強な抵抗にあって、攻めあぐねている状況ですが、普通に考えると、ロシア軍の前衛部隊がウクライナ軍の主力を拘束したところで、守りの弱い所から予備隊が入ってくることも考えられます。戦争が始まってから5日間の戦いを見て『ロシア軍はたいしたことはない』とは言えません。まだまだ激しい戦闘は続くと思います」

(Q.ウクライナ軍は「ロシア軍のキエフ占領工作は失敗」だと言明しています。ロシア軍は攻め込めないのか、攻め込まないのか、どちらでしょうか)

小泉悠さん:「恐らく攻略に苦労していると思います。ロシア軍は開戦初日からキエフ周辺にヘリ部隊を送り込んで、周辺の空港をとるなどしましたが、撃退されたりもしています。ですので、攻め込む気がないわけではなく、非常に頑強な抵抗にあっているんだと思います。

ただ、現状は苦労していますが、この先は分かりません。戦いが長引けば、兵力や火力で優勢なのはロシア側なので、いずれキエフまで突入してくることは想定されます」

(Q.ロシアの侵攻の速度についてどうみていますか)

小泉悠さん:「ロシア軍は非常に急いでいる感じがします。通常であれば1週間くらい激しい空爆などを行って、それから主力が突入してくると思いますが、今回は初日から地上部隊を越境させています。ものすごく早くやらなければならない、あるいはできると思っていたふしがあります。現実はそうなっていないので、ロシアとしては作戦期間が思うようにいっていません。ただ、時間をかければできてしまいますので、そうなる前に停戦合意ができればいいなと思っています」

兵頭慎治さん:「アメリカなどは、ロシアの侵攻スピードが遅かったのではないかと指摘しています。また、ロシア側はまだ完全に制空権をとれていないのではないかとも言われています。ロシア側の計算が違っていたのかもしれません。

今回の交渉で合意しかかった時に、ロシア側は軍事侵攻を一時的に止めたという話もあったので、すぐにキエフを軍事的に抑える前に、ゼレンスキー政権とテーブルに座って、ウクライナ側がどこまで歩み寄る余地があるのか見極めようとしているんだと思います。交渉が決裂した後に、ロシア側がどういう行動を取ってくるのかが気掛かりです」

小泉悠さん:「ロシア側は計算が狂ったんだと思います。ただ、現状はプランが狂っていても、最終的に目標を達成しようとしてくると思います」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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