ハンコ店は“特需”で大忙し『インボイス』来月導入 今後の懸念は?(2023年9月18日)

ハンコ店は“特需”で大忙し『インボイス』来月導入 今後の懸念は?(2023年9月18日)

ハンコ店は“特需”で大忙し『インボイス』来月導入 今後の懸念は?(2023年9月18日)

来月1日から始まる『インボイス制度』。全国各地の小売店などでは、いま、レジの切り替えなど、駆け込みの対応に追われています。
衣料品店スタッフ:「(新たにレジを)買うなると30万くらい。それに対するメリットが、報告されてないので、どうなのかなと」

インボイスとは、消費税を「誰に、何%で、いくら払ったか」を正確に記録するものです。例えば、販売店が70円で材料を仕入れて、消費者に100円の商品として売る場合、消費者が店に支払った消費税の10円は、販売店が代わりに納税しています。その際、店が仕入れで払った消費税額の7円は差し引くことができ、実際の納税額は3円で済みます。ただ、来月からインボイス制度がスタートすると、登録番号などが正しく記載されていなければ、この消費税の控除ができなくなり、店が10円全額を納税する必要がでてきます。

そのため、今後は、会社の経費で物を買う場合などにインボイスの取得を義務付ける会社もあるようです。
会社で経理担当(40代):「インボイスがない領収書や請求書だと、恐らく経費にできない。会社の取り扱いが変わってくると思うので、手間は増える」

こうしたなか、思わぬ“特需”で、大忙しなのが“ハンコ店”です。企業ごとの登録番号を示したハンコ。半年前と比べて注文が5倍に増えているといいます。
はんこ屋『吉報堂』・小嶋茂男代表取締役:「(領収書の)隙間に登録番号を押すことで、既存の領収証を使い回しができるようになる」

レジの切り替えが制度開始に間に合わない場合や、これまで使っていた領収書などをそのまま使いたいという理由からだそうです。
はんこ屋『吉報堂』・小嶋茂男代表取締役:「脱ハンコと言われて、そのせいでハンコ店が減っている。ハンコが必要ないと言われているにもかかわらず、ここ1~2週間は残業して仕事をこなす状態になっています」

客の5割以上がビジネス客だという大阪の個人タクシー。10月以降、インボイスに対応していないと利用してもらえないのではないかという不安があります。しかし、そこにはある問題があります。

実は、これまで売り上げが1000万円以下の小規模事業者は、消費税の納税が免除されていました。ただし、今後、インボイスを発行するためには、消費税を納めることが条件になります。
全大阪個人タクシー協同組合・山口敏副理事長:「法人のタクシー会社は、ほぼすべてがインボイス登録されている。個人タクシーがしないとなると、『個人タクシーは乗るな』となると思います」

納税してインボイスを発行するか、免税のままでいるのかは、自由に選ぶことができます。

この組合では、すべてのドライバーがインボイスに対応したほうが、客もわかりやすいとして、1年半前から講習会などを重ねてきました。今後3年間は特例措置で、納税の負担が2割に抑えられることもあり、ドライバーの99%が登録を完了しました。

一方で、こんな懸念を示す人たちもいます。
父親と2人で住宅リフォームの会社を手掛ける石川信一さん。来月1日から始まるインボイス制度を前にある悩みを抱えています。
リフォーム業『石川建創』・石川信一社長:「新たにインボイス登録させて、 消費税負担させるのはできない。自分でのむしかないかな。正直、悩んでます」

石川さんが、普段、内装などを頼む職人のほとんどが、年間の売り上げ1000万円以下の個人事業主です。これまでは、国の制度で消費税の支払いが免除されてきました。しかし、インボイス制度が始まると、これまで免除されていた消費税は、誰かが負担しないといけなくなります。

発注した側の石川さんか、工事を行った個人事業主が納税しなければなりません。
内装業(個人事業主)・宮下幸則さん:「仕事は嫌いじゃないし、好きだけど、 仕事をすることで、生活がまたそれで苦しくなっていく」
リフォーム業『石川建創』・石川信一社長:「仕事はあっても、物価高の影響で、利益率はどんどん減ってしまってるし、余裕なんかないよ。」

また、発注側の中には、個人事業主に納税を求める動きもあります。もし、業者に追加で消費税を納める余力がなければ、その負担は“値上げ”という形で、客である消費者に回ってくる可能性もあります
リフォーム業『石川建創』・石川信一社長:「消費税で増えるよと、会社の負担が増えると言われても、そこは変えるつもりはない。ただ、潰れてしまったら、みんなに申し訳なく思う。でも今は考えない。ギリギリやれるところまでやってみようかなって」

※インボイス制度の導入まであと2週間。8月末時点で課税事業者は、9割以上が申請しています。一方で、免税事業者は約103万が申請。これは、インボイスを検討する必要がある免税事業者160万のうち、約6割です。

東京商工リサーチの原田三寛部長は、「インボイス登録をためらう理由として、免税事業者が課税事業者になった場合、消費税を負担する分、利益が減少する。一方、免税事業者のままの場合でも、取引先からの仕事量の減少や値下げ交渉される可能性がある。いずれにしても、廃業する事業者が増える可能性もある」と指摘しています。

今後の取引について、東京商工リサーチが企業にアンケート調査を行ってみると、インボイス制度に登録しない免税事業者との取引について、『これまで通り』が55.4%、『検討中』が 32.7%、『取引しない』が8.3%、『取引価格を下げる』が3.4%となっています。取引打ち切りや、取引価格の引き下げを求める企業が、全体の1割強を占めました。

東京商工リサーチの原田部長によりますと、「『これまで通り取引する』と答えた半数の企業も、新規契約や新規プロジェクトが出てきた場合は、ほかの課税事業者に乗り換えることもあり得る。事業者間の消費税額を正確に把握するための制度なので、インボイス登録はこれから進んでいくのでは」としています。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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