新兵器に笑顔のウラで…“最悪の食糧難と見せしめ処刑”ロシアと接近する正恩氏の思惑(2023年9月11日)

新兵器に笑顔のウラで…“最悪の食糧難と見せしめ処刑”ロシアと接近する正恩氏の思惑(2023年9月11日)

新兵器に笑顔のウラで…“最悪の食糧難と見せしめ処刑”ロシアと接近する正恩氏の思惑(2023年9月11日)

近く会談する可能性が伝えられているのが、ロシアのプーチン大統領と北朝鮮の金正恩総書記です。
北朝鮮がロシアに接近するのにはどんな思惑があるのか。
取材を重ねると、現体制で最悪とも言える国内の惨状が見えてきました。

■金総書記×プーチン氏 会談へ 厳戒態勢の街も

「東方経済フォーラムの会場です。金正恩氏が参加するとも伝えられていますが、関係者によりますと、特別な準備が行われている様子はないということです」
一方、駅でも…
「金正恩総書記が明日到着するとみられるウラジオストク中央駅ですが、今のところ変化はありません。警備が厳しくなっているといったようなことも、今のところありません」
各国の代表団を歓迎するためでしょうか、構内には、風船などを持った人々の姿も…
極東ウラジオストクで10日開幕したロシア政府主催の国際会議「東方経済フォーラム」。プーチン大統領は11日から2日間の日程でウラジオストクを訪れる予定で、ニューヨーク・タイムズは、ここで北朝鮮の金正恩総書記と首脳会談を行う可能性があると報じています。
ロシアのペスコフ報道官は…
Q.ニューヨーク・タイムズはプーチン大統領と金正恩総書記が会談する可能性があると報じているが?
(ロシア ペスコフ報道官)「我々はそれについて、何も言うことはない」
一方、北朝鮮との国境近くにあるハサン駅は厳戒態勢が敷かれていて、現地関係者によると、駅構内に赤いじゅうたんが敷かれていたといいます。
韓国の連合ニュースは現地で受け入れの準備の動きがあるとして、金総書記があす11日にウラジオストクに到着する模様だと報じています。実現すれば4年ぶりとなるロシアと北朝鮮の首脳会談。
金総書記にとっては、コロナ流行後、初外遊となります。その狙いは何なのでしょうか?

■娘と建国パレード視察 新潜水艦には満面の笑み

建国75年パレード。娘のジュエ氏とともに登場した金正恩総書記。今年2月と7月に続き3回目。これまでと違っているところも…農耕用トラクターだと思ったら…武装トラクター。ロケット砲で武装したトラックは…荷台にセメントと書かれた袋を積んだ偽装トラック。車体には『ミネラルウォーター』の文字。白衣姿の従業員が運んでいたのは…銃を手にした兵士でした。
こうした偽装兵器は労農赤衛軍と呼ばれる民兵組織のもの。国民総動員で戦争を遂行する能力を内外に示したものとみられます。
その記念日に先立って北朝鮮メディアが報じたのは潜水艦の進水式。戦術核ミサイルを搭載する新たな潜水艦だといいます。

一方で韓国国防省関係者は次のような見方を示しています。
(韓国国防省関係者)「ミサイル搭載のために艦橋など一部の外形と大きさを増したものと見られるが、正常に運用できる姿ではない」

朝鮮半島の安全保障に詳しい防衛研究所の浅見氏は…
(防衛研究所 浅見明咲 研究員)「既存のロミオ級と言われる潜水艦の上にミサイル発射管をつけたような突貫工事のようなそういった潜水艦であるというふうな見方が強くありますので、うまく運用出来るかに関しては疑問が残る」
Q. 北朝鮮側の思惑としては今、首脳会談を行うとすればどのような思惑で臨む?
「先月失敗した衛星の打ち上げに関するそういった軍事偵察衛星に関する技術であったり潜水艦の技術、そういった武器開発・核兵器も含めてそういったところの技術をロシア側に求める可能性というものは多く指摘をされていますし、北朝鮮に関する制裁とかそういったところに国際的な場での北朝鮮をロシアが擁護してくれるような、そういったこととかも求める可能性は考えられます」

■“正恩体制で最悪”深刻な食糧難で餓死3倍に

ニューヨーク・タイムズは、首脳会談で北朝鮮はロシアに対し原子力潜水艦の先端技術に加え、“食糧支援”を求める可能性があると伝えています。
今、北朝鮮の国内で何が起きているのでしょうか?
先月、朝鮮中央テレビは接近する台風6号の状況を各地から記者がリポート。異例の終夜放送で伝えていました。
堤防の決壊現場を視察した金総書記は「怠け者らの無責任さと無規律による人災」だと首相ら幹部を名指しで叱責。“深刻な食糧難”が続く中、住民の不満の矛先をそらす狙いがあったとみられます。
(アジアプレス 石丸次郎氏)「これが北朝鮮国内とやり取りしたメッセージなんですね。緑側がアジアプレス側で、白が北朝鮮内部の私達のパートナーです」
SNSを使って北朝鮮の内情を取材する石丸氏。
(アジアプレス 石丸次郎氏)「北朝鮮の国内事情なんですけど、経済は今、非常に悪い。政権発足11年以上にして一番悪いのが現時点だとみて間違いないと思います」
中国との国境に近い北朝鮮の恵山市。この街に住む取材協力者は先月30日、公開処刑を目の当たりにしています。
(取材協力者)「突然集まれと言われて行ったのですが、9人も自動小銃で撃ち殺しました。足がガクガクして怖くて死にそうでした」
「罪名を告げ、1人につき頭に1発、胸に1発、足に1発撃って殺しました」
銃殺されたのは、農耕などに使う国有財産の牛を殺して売った罪に問われた9人。この公開処刑には2万5000人の住民が動員されたとの情報もあります。
(取材協力者)「国中が帝国主義による共和国圧殺策動で苦労しているのに、農業に必要な牛を殺して肉を売って金儲けをした者たちなので容赦せず死刑にする、と(裁判官は)言っていました」
(アジアプレス 石丸次郎氏)「多くの人が集まる前で、しかも情報が漏れやすい中国の国境近くで行ったというのは、やはりこれは情報が漏れるのを覚悟してでも秩序違反に対して厳罰で臨むということを人民に住民たちに伝えるという見せしめ的な性格が非常に強い処刑だったのでないでしょうか」

韓国の情報機関・国家情報院は5月、この食糧難で餓死者が例年の3倍になると推定しています。
(北朝鮮北部に住む取材協力者)「だいたい3軒に1軒は飢えていると考えればいいです。1日に1食だけ食べる人が3分の1です。栄養失調であす死んでもおかしくないでしょう」
餓死者は、平壌に次ぐ北朝鮮第2の都市・咸興でも…
(取材協力者)「飢え死にする人が多くて、洞(地域)ごとに死体を専門的に処理する作業員を置いている。生活が苦しいので葬式もせず、(遺体は)布に包んで出して埋めるそうです」
さらに咸興市内では、“凶悪犯罪”が増えているといいます。
(取材協力者)「強盗が多くて恐ろしくて外にまともに出られなかったそうです」
Q. どこの話ですか?警察も取り締まりをしているそうだが強盗がいますか?
(取材協力者)「真っ昼間に咸興駅に降りると、スリがばれても逃げようともせずニヤニヤ笑っていたそうです。持ち歩いているものが見えると、知り合いのようなふりをして一緒に歩きながら、刃物を取り出して『分けて食べて生きようじゃないか』と脅迫したそうです」
金正恩政権発足以来、最悪とも言われる食糧難。コロナ以降、市場での商売など個人の経済活動を厳しく制限したことが原因だと石丸氏はみています。

(アジアプレス 石丸次郎氏)「たとえば自分の個人の家で食堂をするとか、パンとか餅を家で作って人を雇って作ってそれを市場に卸すとか、こういうことが全面的に禁止されてしまいました。ですから、北朝鮮の中で飢えているのは、都市の住民です。農村ではなくて。この人たちが現金収入がないために飢えるような状況になってしまった。食糧を国が確保しなければならない。ところが今、足りなくて、それが全く確保できなくて、そのために金正恩政権としては、食糧をロシアが何らかの対価としてくれるのであれば非常にありがたいと考えて間違いないと思います」

9月10日『サンデーステーション』より
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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