【報ステ】中国に変化?処理水への反発“抑える動き”も…懸念は“2012年反日デモ”か(2023年8月30日)
福島第一原発の処理水放出が始まってから、31日で1週間ですが、波紋は収まりません。街を歩く中国人観光客の数は明らかに減りました。ただ、全くいないわけではありません。
中国人観光客:「(Q.お母さんは心配しない)大丈夫だと思います。もちろん心配はあります。このこと(処理水放出)が発生した後に、電話しました」
中国メディアによりますと、東京と大阪行きのチケットを検索する人は、24日以前に比べ、ほぼ半分に減ったことが分かりました。航空券の予約数も約3割減ったということです。
中国人向けに日本旅行の手配をしている会社『東日本国際旅行社』では、30日も1件キャンセルがありました。
『東日本国際旅行社』謝善鵬代表取締役:「(Q.損失額は)100万円くらい。(Q.何人の予約)10人です。これで100万円なくなりました」
コロナ前の売り上げは約16億円。それが2000万円まで減り、“さあ取り返すぞ”と新たに3人を雇い、意気込んでいましたが…。
謝善鵬代表取締役:「実際に影響が大きいのは団体旅行だと思うんですけど。解禁になったじゃないですか。中国側の旅行業者と話し合って、これからどういうツアー、企画をしようかって本当に相談しているところなんですね。急に相談が中断して、団体は今、企画を出しても応募者がいない」
上海市内の大学へ入学を控える女性。新たな生活への期待と不安が交錯します。
留学する日本人:「(Q.来週入学式ですか)9月1日です。学校が始まったら、中国人の学生と接した時に、どう思われているか、どう言われるか、私もまだ分からない。(Q.『日本人』と言うか)大々的には、たぶん言わないと思います」
不動産業を営む日本人女性は…。
不動産業の日本人:「国慶節を前にして、このような騒ぎになっているのは少し残念。近隣の国民の皆さんに安心して頂くような説明、理解を求めたうえで(放出を)始めても遅くなかったのでは」
処理水をめぐる中国国内の反発。一部の欧米メディアからは、中国政府の対応を問題視する論調も出始めています。
フランス AFP(28日):「中国では、科学的裏付けのない荒唐無稽な理論がSNSで拡散している。これらは中国国営放送や同系列のコメンテーターによって広められている」
アメリカ ワシントン・ポスト(29日):「反日感情の激化と国営メディアによる巧みな操作は、巨大な市場を利用して他国の気に入らない行動を懲らしめるという、中国政府の長年の手法と一致している。しかし、ナショナリストの“熱狂の発作”は、制御不能になった場合の潜在的リスクも含む」
アメリカ CNN(29日):「中国国外からは、こうした爆発的な非難について『どちらかと言えば、政治的要因によって引き起こされたもの』との声も出ている」
第三国からも「やりすぎじゃないか」と見られ始めるなかで、中国当局は一応、手を打ち始めました。西安市警察当局の投稿では、処理水放出をめぐり「日本車が破壊された」という投稿を、2021年のもので「デマだ」と否定し、拡散を防ぎました。
さらに、共産党系の有力紙『環球時報』は30日の社説で、日本に対する迷惑電話について触れ、中国の国民に対し、極端な言論を注意するように呼び掛けました。
過激な行動が中国全土に広がり、日本政府との対立が深まるのは、中国政府にとっても避けたいことではあります。実際、2012年には、尖閣諸島の国有化をめぐって、デモが全土に広がり、大きな混乱が起きました。ただ、「弱腰だ」と捉えられたくないのも本音なので、書きぶりはこうなります。
環球時報社説(30日付):「中国社会が憤慨しているのは、日本の海への放出を強行したという、自己中心的な行為そのものであり、日本国民に向けるものではない。これに関して、日本政府は百も承知だ。しかし、政府自身への指摘を一般の日本人に転嫁しようと試み、2つの国の国民の対立を引き起こそうとしている」
■処理水放出への反発…鎮静化は?
現代中国に詳しい東京大学大学院の阿古智子教授に聞きます。
(Q.中国の一連の動きをどうみていますか)
阿古教授:「中国政府は、日本の処理水放出を認める気はないと思います。ただ、これほどエスカレーションしてしまうのは、中国にとっても不利な要素が出てきます。2012年の反日デモの時の苦い経験もあるので、何とか抑えようとしているのではないでしょうか」
2012年9月、日本の尖閣諸島国有化に対して、日本車襲撃事件や、日本大使館前でのデモなど、中国各地でデモが多数発生しました。阿古教授によりますと、これらのデモが中国政府への批判のデモにもつながっていったということです。
(Q.反日デモが、なぜ中国政府批判のデモにつながっていったのですか)
阿古教授:「2012年のデモでは毛沢東の写真を掲げる人たちもいました。中国では過去に、薄熙来という政治家が、毛沢東を持ち上げて『貧富の差を解消していこう』と主張していました。中国は社会主義ですが、権力を持つ者が富を牛耳る形になっていて、役人の腐敗も深刻になっています。そうしたなかで『政府は弱腰で、社会を良い方向に変えていっていない』『国際的にもっと強い国になるべき』と。反日でデモが始まりましたが、中国が抱えている問題に目を向けている人たちが、反日と全く関係ないプラカードを掲げ始めました」
(Q.今と重なる部分もありますか)
阿古教授:「重なる部分は非常にあります。中国では今、不動産の状況も深刻で、非常に多くの会社が倒産に追い込まれているということです。会社を維持しているだけでも損益がどんどん出てしまうため、整理していこうとする人が増え、新たに投資しようとする人たちが減っているということです。公務員なども給料が下がっている地域もあるということです」
(Q.今回も反日デモが中国政府へのデモになる可能性がありますか)
阿古教授:「過激な行動や、集団が街頭に出てきて暴力行為に発展してしまうことは、いくら反日と言っても、社会的矛盾を抱えている状況で、中国政府にとっても非常に恐いと思います」
(Q.中国政府が速やかに沈静化を図ることはありませんか)
阿古教授:「そうですね。一つは、中国にある社会問題から目を背ける部分もあるかもしれません。反日デモを全て押さえてしまうと、そういった人たちのガス抜きをすることができないからです。その辺の経験を、中国はたくさん積んでいて、ネット空間にどんな意見が出ているかを常時チェックしています。そのなかでバランスを取っていく。削除などは容易にできるので、コントロールできます」
(Q.中国国民は反日で固まっていますか)
阿古教授:「固まっていません。中国では、日本の食べ物やグッズなどが日常的にあります。日本料理店などもコロナ後、非常に増えました。そのため、過激な反日感情は中国にも影響を与えてしまいます」
(Q.日中の草の根レベルも含めたつながりが維持されていけば、一縷の望みになりますか)
阿古教授:「コミュニケーションをしっかりして、どういう人たちがどういう意見を出しているのかを、日本でも分析する必要があります。処理水の問題は世界的に注目されているので、しっかりとコミュニケーションしてほしいと思います」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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