【報ステ】1カ月以上→1時間へ トリチウム濃度“スピード測定”で風評被害を抑制へ(2023年8月22日)

【報ステ】1カ月以上→1時間へ トリチウム濃度“スピード測定”で風評被害を抑制へ(2023年8月22日)

【報ステ】1カ月以上→1時間へ トリチウム濃度“スピード測定”で風評被害を抑制へ(2023年8月22日)

福島第一原発でたまり続ける処理水について、政府は22日に関係閣僚会議を開き、早ければ24日にも海洋放出を始めることを決めました。「科学的には安全」とされる処理水の放出ですが、福島の海産物を扱う人々からは「消費者の安心にどうつなげていくかが大事」という声があります。

東京・豊洲市場では22日、先月にオープンした“三陸・常磐もの”の売り場に多くの人の姿が。震災から12年をかけて、福島の魚は信頼を取り戻してきました。

仲卸『吉善』吉橋善伸さん:「身が厚いですよね。逆に安心ですよね。必ず検査してるし」

その福島の海では、夏の風物詩と言える光景が。毎年5~8月にかけて行われる、ウニ漁です。黒潮と親潮がぶつかる“潮目の海”。ウニは今年も成長していました。水揚げの後は港で加工されます。

処理水の放出開始が目前に迫るなか、ここまで取り戻してきた信頼がどうなるのか。海産物専門店『おのざき』を営む、小野崎幸雄さんも気にかけています。

小野崎さん:「こういう形で処理水が流されることで『もしかしたら』という気持ちはある。また“風評”があるかな」

地元の利用客:「あいまいな感じでしか情報が入ってこない。心配な部分も正直あります。(処理水の情報を)ニュースでもそんなに詳しくやらない。サラーっとしかやらないので」

消費者に安心できる情報を届けたい。しかし、小野崎さんたち小売りや仲卸業者には、これまで政府から直接の説明はなかったといいます。そこで、経産省の担当者を招き、処理水の知識を得るための勉強会を自主的に開催したのです。

勉強会を主催した『山常水産』鈴木孝治さん:「マスコミとかの情報だけなので、きちんとした情報を皆で共有しようよと」

放出に賛成ではありませんが、反対するだけでは“風評”を抑えることができない、という危機感がありました。その勉強会で小野崎さんの目に止まったのは、処理水にまつわる、いくつかの数字です。海外の原子力施設からも、トリチウムがむしろ日本以上に排出されていること。福島では、国の基準の40分の1未満など、通常より大幅に薄めてから放出すること。

小野崎さん:「今までは“常磐もの”の美味しさをテレビで色々やりましたけど(処理水の)細かい数値までは、認識不足で分からなかった。ただ単に『安心で処理した水だから』としか聞かなかった。そういう“数値”しか、消費者は信用してくれない。『大丈夫だよ、大丈夫だよ』って言ったって」

だからこそ、処理水の放出後も、明らかになった数字はできる限り消費者に届けたい、と考えています。

小野崎さん:「小売りは、お客さんの目の前に立って売るんですから、直接一人ひとりに、問いかけられたら説明して、地道にやっていくほかない」

消費者が安心するデータは何なのか。専門家として取り組むのが、茨城大学の鳥養祐二教授です。トリチウムを専門とする数少ない研究者の一人で、放出後のモニタリングも担当します。鳥養教授が問題としているのは、検査にかかる“時間”です。トリチウムは、自然の環境では、水の一部として存在し、雨水や水道水の中にも、わずかに含まれています。その濃度を精密に測ろうとすると、水なら1週間以上、魚は1カ月以上かかってしまいます。

鳥養教授:「1カ月半後に『安全でした』という魚では、さすがに消費者も買えない」

そこで鳥養教授は、スピードを重視した測定法を開発しました。魚をさばくと、まず電子レンジで加熱します。

鳥養教授:「水分が付いてきてる、あれが魚の水分です」

トリチウムは、魚の体内でも水の一部として存在しています。そのため、加熱して出てきた水分を測れば、魚本体のトリチウム濃度も分かります。この方法なら、結果は1時間で判明します。

鳥養教授:「出荷まで、あるいは店頭に並ぶまでに『この魚は安全だ』という情報を、消費者に提供できるようになれば、風評被害を少しは防げるのかな」

消費者のための検査、消費者のための説明。それぞれが風評被害を最小限に抑えようとしています。

小野崎さん:「震災後12年かかったんですから。まだまだ(消費者への説明は)やっていかなきゃいけない。それが、福島でやっていく魚屋の“使命”だと思っている」

■“風評”抑制へ 必要な取り組みは

処理水のモニタリングは、事業者である東京電力だけではなく、環境省・原子力規制委員会・福島県・水産庁がそれぞれ調査しています。その数値はホームページなどで確認することができます。環境省は、行っている調査について「あえて言えば事業者に対する公的な監督責任」としています。

(Q.これらのモニタリング調査について、どうみていますか)

鳥養教授:「計画通りに放出されて、結果がオープンになることが重要。ただ、消費者が買う魚が“安心”と思えるかというと、十分ではない」

そこで鳥養教授が示しているのが“迅速測定”と言われる方法です。この方法は『水揚げして販売される魚』を調べるもので、1時間ほどで結果が出るため、鳥養教授は「より消費者が安心を得られる」と考えています。ある流通業者はすでに利用を決めているといいます。鳥養教授は今後も政府に理解と協力を求めていくということです。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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