【報ステ解説】「思惑が外れた」ロシア“非欧米”に積極外交も…相次ぐ“離反”(2023年7月27日)
7月27日は、北朝鮮が“朝鮮戦争に勝った”と位置付ける日。国威発揚というだけでなく、北朝鮮と中ロが結束をアピールする場でもあります。そのためにロシアと中国、双方の代表団が招待されていますが、今回、ロシアへの厚遇ぶりは格別です。
祝賀公演では、入場から異様な光景が広がりました。金総書記のすぐ隣に、並ぶように入ってきたのは、ロシアのショイグ国防相。少し離れて中国の代表団が続きます。公演中には壮大な音楽とともに、プーチン大統領とショイグ国防相がスクリーンに映し出されました。
また、金総書記はショイグ国防省と直接会談。立場が全く違う両者の会談は、過去に例がありません。プーチン大統領からの親書を手渡しただけでなく、2人はプレゼント交換もしたといいます。
両者が連れだって訪れたのが、兵器の展示会です。新型のICBMや“超大型ロケット砲”と名付けた短距離弾道ミサイル。いつの間に開発していたのか、2種類の無人機も公開されています。アメリカ軍の無人機にそっくりです。これらを金総書記自ら、さながらセールスマンのように説明して回ります。ロシアへの極め付きの配慮とも思えたのが「2023」の頭文字が、ロシア軍の「Z」になっていたことです。
また、朝鮮戦争の休戦から70年となる節目に合わせた軍事パレードにも参加しているとみられます。
外交だけでなく、軍事分野でも連携を深めたいという思惑は、双方にあるようです。
朝鮮中央テレビ:「急変する地域および国際安保環境に対処して、国防安全分野で両国間の戦略戦術的協力を、さらに発展させていくうえで重要な契機となります」
北朝鮮の兵器は、ロシアから流入した技術によって開発されたものが多数あります。そのロシアは現在、戦争の長期化に直面して、枯渇する弾薬などの支援を欲しています。核開発で国際社会から孤立する北朝鮮にとっても、数少ない友好国であるロシアとの関係強化は重要です。ショイグ国防省の訪朝で、武器取引が議論されるだろうという見立てが以前からされていましたが、この一日でその動きがより鮮明になった形です。
窮するロシアにとって、仲良くしてくれる国は多ければ多いほどありがたいものです。アフリカ各国の首脳を集めたサミットの開催も、その思いの表れです。
プーチン大統領:「我々はアフリカ連合をグローバル経済において、アフリカの地位確立に努めている主要な地域組織と考えている。ロシアは信頼できるアフリカへの食糧供給国であり続ける」
友好国のつなぎ止めに躍起になるロシア。ですが、そこから離反する国も相次いでいます。
■ロシアの“積極外交”狙いは
防衛省防衛研究所・兵頭慎治さんに聞きました。
兵頭さんは、ショイグ国防相の訪朝について、ロシアが北朝鮮に“すり寄っている”と表現しています。その狙いは2つあるといいます。
(1)兵器の引き続きの支援
兵頭さん:「ロシアの要人が、この軍事パレードに参加するのは異例。これまで北朝鮮がロシアに兵器の支援を求めていたが、ロシアが支援を求める立場に変化した。ロシアの深刻な兵器不足が分かる」
(2)対米けん制の強化
兵頭さん:「ロシア・中国・北朝鮮の3カ国で、アメリカをけん制する狙いがある」
一方で、ロシアはアフリカ各国にも秋波を送っています。ロシアのサンクトペテルブルクで開かれている、ロシアとアフリカ諸国の首脳会議は、2019年に続き2回目。アフリカ54カ国のうち、49カ国が参加しています。そのうち、首脳が参加したのは南アフリカやエジプトなど17カ国です。プーチン大統領は、アフリカの一部の国にロシア産農作物を無償で提供する用意があることを発表しました。
兵頭さん:「黒海の穀物輸出をロシアが妨害しているなか、影響を受けるアフリカ各国の懸念を抑えておきたい狙いがあるのだろう。ロシアにとってアフリカ各国は、国連総会での“票田”であるため、つなぎとめておきたい。ただ、前回(4年前)に比べ、首脳の参加は半分以下。ロシアの思惑が外れた形となった」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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