“村サッカー”中国で大人気 経済効果は26億円 “小さな村の奇跡”に政府も注目(2023年7月20日)
中国の一部の地域だけで行われている、アマチュアのサッカーリーグ“村サッカー”が今、中国全土で人気となっている。人々が熱狂する理由を探った。
■開幕1カ月で…観客数100万人 経済効果26億円
中国有数の貧しい地域として知られる、南部の貴州省で行われている「村超（ツンチャオ）」と呼ばれる“村サッカー”が今、中国で一大ブームになっている。プレーしているのは、プロ選手ではなく村人だ。
成都から来た女性：「（Q.人気の理由は？）とても単純で、観客との距離が近いことです」「中国代表チームより、こっちのほうが見ていて楽しい」
80年以上の歴史をもつ“村サッカー”だが、SNSで火がついた人気は全国に広がったという。
中国メディアは、開幕から1カ月で、観光客は延べ100万人。26億円の経済効果があったと伝えていて、“小さな村の奇跡”と報じている。
■勝利チームの商品は“豚”“羊”“牛”！？
プロと違って決して上手とは言えないが、一生懸命なプレーに観客が熱狂するという。
体を張ったディフェンスで「破壊王」の異名を持つ李敏杰選手（28）。実は、本職は建設現場の監督だ。
李選手：「仕事とサッカーに共通するのは団結力だと思います」
“村サッカー”に出場する選手は、農家や教師、学生など様々。年齢も15歳から40代とバラバラだ。
ハーフタイム中の民族衣装を着た応援団によるパフォーマンスも人気の一つだ。
そして、試合の勝利チームには毎回、賞品があり、一人あたり2本の豚足がプレゼントされることもある。
今月末に予定されている、決勝トーナメントでは、3位が豚、2位が羊、1位には牛が用意されているという。
■「中国サッカー超大国」目指す習近平主席
盛り上がりを見せる“村サッカー”だが、中国は国を挙げてサッカーに力を入れている。
習近平国家主席は大のサッカー好きで知られていて、2015年には中国のサッカー界を盛り上げるため、「中国サッカー超大国」という政策を打ち出した。
中国で世界レベルのサッカー選手を育てるため、2020年までにサッカー人口を5000万人に増やすことを掲げ、トレーニング施設2万カ所以上の設置も目指すとした。
CNNによりますと、プロサッカーリーグにおいて不動産ブームで莫大な利益をあげた企業が、海外の有名選手を獲得するなどし、サッカーリーグは盛り上がっていたという。
しかし、新型コロナによって盛り上がりに陰りが見え始める。
■人気低迷のなか注目したのが“村サッカー”
政府の厳格な「ゼロコロナ」政策により、サッカーの試合は減少し、練習することも、ままならなくなった。こうした状況に不満を感じた海外の選手が中国を離れるなどしたという。
そのため、多くのサッカークラブが経営難に陥り、クラブの解散などが相次いだ。
さらに、サッカー協会の幹部が汚職の疑いで逮捕される事件も起き、中国国内でサッカー人気は低迷している。
そこで中国政府が注目したのが“村サッカー”だ。
■漢民族と少数民族の融和・団結へ
先月、中国政府はサッカーなどのスポーツで農村振興を図るよう通知を出した。政府が全面的にバックアップするということだ。
現場を取材したANN中国総局の李志善（リ・チソン）記者は、「中国共産党指導部は“村サッカー”の人気を有効活用し、『中国サッカー超大国』の目標を再構築するために、今後テコ入れしていく可能性がある。“村サッカー”を成功モデルとして、中国政府が力を入れる農村振興と観光産業の発展、さらに経済の循環の促進につなげる起爆剤にするのでは」としている。
現地メディアは「経済が低迷し明るい話題がないなか、“村サッカー”が政府の最も重視する漢民族と少数民族の融和・団結を宣伝するのにもってこいの話題だ」と報じている。
（「大下容子ワイド！スクランブル」2023年7月20日放送分より） （C） CABLE NEWS NETWORK 2023
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