子ども食堂で“人情オトン”奮闘 さらに…ひとつ屋根の下で「父親代わり」も なぜ?【Jの追跡】(2023年7月15日)

子ども食堂で“人情オトン”奮闘 さらに…ひとつ屋根の下で「父親代わり」も なぜ?【Jの追跡】(2023年7月15日)

子ども食堂で“人情オトン”奮闘 さらに…ひとつ屋根の下で「父親代わり」も なぜ?【Jの追跡】(2023年7月15日)

「心に傷を負った子どもたちに寄り添いたいだけ」そんな信念で、赤字でも奮闘する「無料子ども食堂」の“人情オトン”和田信一さん(56)。

そんな和田さんは、ワケあって母親と一緒に暮らせない17歳の高校生と、ひとつ屋根の下で同居生活。実の父子のように…絆と成長の1年を追跡しました。

■子どもたちに食事を“無料提供”

神奈川県横須賀市にある、NPO法人「よこすか なかながや」は、主にひとり親世帯の子どもたちに、無料で食事を提供する「子ども食堂」です。

中学2年生:「家だと(父親と)2人とか1人だから、皆と食べられるのが“ながや”の良いところ」

日曜日以外、毎日開催していて、多い日には10人ほどの子どもたちがやってきます。

6年前から、ながやを運営しているのは、元トラックドライバーの和田信一さん。

夕食だけでなく、学校へ行く前の子どもたちに、朝ごはんも無料で提供しています。

和田さん:「母親の帰りが遅くてご飯が食べられなかったり、病気だったり、色々なケースでご飯が食べられない子どもたちも来ています」

■運営費を賄うため弁当屋を開業

毎月の運営費は、およそ30万円。和田さんの蓄えと、不定期で入る寄付で賄っています。

和田さん:「今まで蓄えたもので、なんとかやってきたが、もうかなり厳しい状態なので切羽詰まっている」

和田さんは去年11月、ながやの運営費を賄うためにお弁当屋を始めました。

しかし、光熱費の値上げや材料費の高騰で、赤字が続いているといいます。

和田さん:「大変な子どもたちに食事を朝晩、無償で提供していて、運営費を賄うためにお弁当屋を始めたんですよ」

少しでも時間が空いたら、自ら飛び込み営業もしています。

和田さん:「とにかく目の前に現れた子どもに寄り添いたいというだけなんですよ」

40代の時、離婚した和田さん。仕事が忙しく、自分の子育てに時間をさけなかった後悔が、子どもの居場所作りを始めた理由だといいます。

■「父親みたい」高校生 和田さんと同居

高校3年生のジョーンズ・パワーくん(17)。3年前から、ながやに通っています。

3歳のころ、アメリカ人の父親と日本人の母親が離婚。母親に引き取られましたが経済的に困窮。学校に紹介され、和田さんと出会いました。

訳あって1年前から母親と暮らせず、今は、ながやの近くの和田さんの自宅で暮らしています。

パワーくん:「お父さんみたいな感じ。ここまで自分のために何かしてくれたり、言ってくれたりするのは親以外になかなかいないと思う」

和田さんと同居して間もない去年9月。当時は、顔を隠すことを条件に取材に応じてくれたパワーくん。

パワーくん(当時16):「4日、何も飲まず食べずというのがあった。倒れましたね、家で何回も。立ちくらみですぐ倒れちゃう」

高校の修学旅行も、お金を払えず断念。そんなパワーくんに、和田さんは実の父親のように優しく時に厳しく寄り添ってきました。

和田さん(去年9月):「別に怒っているわけでもないけど、その気持ちが知りたい。『お金が足りなくなりそうです』とか『洗剤使っちゃいました』と普通に言えばいいんだよ、堂々と。お金がないのを知っているんだから。頑張ろうぜ、2人で」

■和田さん“一人で生きる力をつけてほしい”

あれから10カ月…掃除や洗濯、食事作りなど、忙しい和田さんに負担を掛けないよう、自分でこなすようになっていました。

成長した姿を見てもらいたい、との和田さんとパワーくん本人の考えもあり、顔も出し本名での取材に応じてもらえることになりました。

パワーくん:「しっかり自分も動いて(和田さんの)負担を減らしたいと思っています」

和田さん:「すごいね、やるね、やればできるじゃん」
パワーくん:「さっき俺も(自分で)言いました。俺やればできるって」

通信制の高校に行っているため、日中はながやの活動を手伝うこともあります。

和田さんは、これから社会に出ていくパワーくんに、一人で生きる力を付けてほしいといいます。

和田さん:「お金で苦労してほしくないのと、メンタルがものすごく今弱いので、そこを強くしてもらいたい」

■夢は“プロバスケ選手” ところが…

パワーくんは今、「ある夢」に向かって突き進んでいます。

それはプロバスケットボール選手。189センチの長身を生かして、現在、プロチームの下部組織のキャプテンを任されています。

横浜ビー・コルセアーズU18 白澤卓ヘッドコーチ:「しっかり声を出したり、周りを盛り上げたりする素晴らしいキャプテンになっていると思います」

しかし今、チームの練習の輪に加わることができません。

実は1カ月前、全治3カ月の重傷を負ってしまいました。

パワーくん:「(横断歩道を)歩いて進んで真ん中辺りに(トラックが)猛スピードで突っ込んできて、横から。そのまま飛ばされて」「もう真っ先に和田さんに電話して『ひかれました。めっちゃ痛いです』と言ったら、すぐに来てくれて」

和田さんは、弁護士への相談や事故の加害者との交渉、治療費のやりくりなどを親代わりとして引き受けています。

■アメリカ人を呼んだ和田さん なぜ?

練習も見学、プロチームにつながる高校最後の大事な時期に試合にも出られず、パワーくんは、プロになる夢に足踏みを余儀なくされました。

そんな時、和田さんはパワーくんのため、炊き出しのボランティアで知り合ったアメリカ人を呼んできました。

プロになるため、今できることを考え、英会話を習うことを勧めたのです。

英会話の先生:「バスケ上手そうだよね」
パワーくん:「いつもダンクをしてます」
英会話の先生:「ダンクできるの?その身長なら簡単だね」

パワーくん:「将来プロのバスケットボール選手になりたい。そこで海外の人と触れ合う機会も多いと思うので、そのために。ありがたい。勉強頑張るしかないって気持ちです」

和田さん:「かなり忙しいですけど、その忙しさの中にもパワー(のこと)も入っているので。やりたいことの中の一つなので、時間を割いてでも何とかしたい」

離れて暮らす母親のためにも、プロになる夢は諦めたくないといいます。

パワーくん:「とにかく早くプロになってお金を稼いで、(母親を)楽させてあげたいって思っていますね。ただそれだけです」

■17歳の本音「生まれ変わったら…」

パワーくんは、月におよそ7万円の生活保護を受けて暮らしています。

お金の管理は和田さんがしていますが、生活はいつもギリギリです。

お金に余裕がないのは和田さんも一緒ですが、この日は、久々のぜいたくだとか。

パワーくん:「楽しいですよね、こういう時間があると。あまりないから」「高校生は、そこの回転ずし店とか行ってるんだろうな」
和田さん:「金持ってるやつは金持ってるからな」
パワーくん:「次生まれ変わったら、そういう人生も1回歩んでみたい」

今できないことを「生まれ変わったらやってみたい」と語るパワーくん。これに、和田さんは次のように答えました。

和田さん:「パワーが大人になって結婚して子どもができた時には、そうさせてやろうぜ」
パワーくん:「確かに、それが自分にとって幸せかもしれない」

和田さん:「負の連鎖をそこで断ち切れる。今は変えられないから、今のこの状況はしょうがないよ。でも自分の子どもには、そうさせないようにしていこう。今から考えて、そういうふうにしてあげようってずっと思っていれば、そうはならないから」

■幸せ願い…成長を見守る和田さん

この日、パワーくんには“ある計画”がありました。

卒業後の一人暮らしを前に、自炊で磨いた料理の腕で、誕生日が近い和田さんをもてなそうとハンバーガーを作りました。

和田さん:「パワーが作ったと思えねぇな」
パワーくん:「確かに。ウマッ、まじか」

和田さん:「昔は褒めることが少なくて、褒めることを探していた。今はそんなことなくて、褒めることが自然と増えている」

パワーくんの成長を、優しく厳しく見守る和田さん、幸せになってもらいたい…それだけを願って。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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